2020モンゴル総選挙一口メモの第9回は、これまで見てきた以外の政党・同盟や、今回特に多い無所属候補から、注目点をいくつかご紹介します。
これまでのエントリでは、モンゴル人民党、民主党、新同盟(正義市民統一同盟党、共和党、モンゴル民族民主党、真正党)、あなたと私の同盟(モンゴル人民革命党、市民の意志・緑の党、モンゴル伝統統一党)、正しい人・有権者同盟(労働国民党、モンゴル社会民主党、倫理党)を取り上げてきました。
そして、残る党・同盟、あるいは無所属候補を簡単にまとめると、下の一覧の通りです。
モンゴル緑の党:15名
人民大衆党:1名
自由行使者党:13名
開発計画党:7名
愛国者統一党:1名
「遵守せよ!憲法19」同盟(モンゴル保守党、モンゴル人間のための党):34名
人民を愛そう党:1名
民衆党:39名
世界モンゴル人党:3名
人民大衆多数派統治党:24名
大調和党:1名
ゲル地区開発党:4名
無所属:121名
このうち、党・同盟については過去に議席を獲得したものはなく*1、今回も選挙活動はほとんど報じられていません。
それどころか、人民大衆党のSh.ガントルガ候補に至っては、選挙活動を行うどころか名前以外の個人情報を一切が不明。人民大衆多数派統治党から立候補した全く名前の同じSh.ガントルガ候補から、自身と混乱させて選挙妨害を図るのが目的として、「偽物ガントルガ」と痛罵されます。
そして、数日後に「偽物」呼ばわりされたガントルガ候補がインタビューで登場、「知らない相手にカネを払うからと言われて立候補した。Sh.ガントルガという名前の候補を探していたようだ。人民大衆多数派統治党のSh.ガントルガ候補の邪魔をするつもりはなかった。申し訳ない」と発言。
だったら「人民大衆党」とはなんなのか、という謎が残る結果となりました。
他方、人民を愛そう党のグンダライ氏は新型コロナウィルス対策による国境封鎖によってタイで足止めを食らい、モンゴルの歴史で初めて外国で選挙戦を戦ったのち、先週末にやっと帰国が実現。
入国後の隔離先で帰国の喜びを爆発させるとともに、今も1万人以上のモンゴル国民の帰国が叶っていないことを涙ながらに非難する動画がつい先程入ってきました。
っていうか、隔離先で酒を飲むのはマズいんでは……
他にも話題がないではないのですが、選挙戦に大きな影響を与えそうなものがないので、ここでは省略します*2。
一方、今回の選挙で注目されるのが、無所属候補の多さです。先述の通り121名、空前の人数です。
この中には、はじめから無所属での立候補を予定していた候補ももちろんいますが、政党の承認を得られなかった候補、自ら離党した候補、所属政党自体が参加を認められなかったりして、結果的に無所属で立候補した候補も少なからずいます。
そして、それらの候補には国会議員ばかりか、国会・政府で要職を務めた経験者、あるいは実業界で名を成した人物も含まれます。モンゴルの総選挙において、無所属候補が当選した例は非常に限られますが、今回ばかりはどうなるか分かりません。
とりわけ注目されるのが、ダルハン=オール県選挙区ガンボルド候補,オルホン県選挙区アルタンホヤグ候補、首都ハン=オール地区ノムトイバヤル候補の3人です。
ガンボルド候補はモンゴル屈指の鉱山会社アルタン・ドルノド・モンゴルを率いた人物で、本来なら自信が率いる政党の候補者になるところ、どういうわけか無所属での立候補となりました。報道にもたびたび登場しています。
アルタンホヤグ候補は民主党の大派閥を率いた人物で、2012年から2014年まで首相を務めたのですが、経済政策失敗のかどで首相辞任。その後2017年に選出されたバトトルガ大統領の顧問を務めていたものの、独自の政治活動を望んで昨年辞任しました。
ノムトイバヤル候補はモンゴル人民党の国会議員だったのですが、2018年の首相解任案をめぐってフレルスフ首相との対立が表面化。そして、解任案が不発に終わったことに加えてさらには汚職疑惑をかけられて国会議員の座を追われると、今回の総選挙では人民党を離れて無所属で立候補します。
ところが、ノムトイバヤル候補は選挙戦開始直前に疑惑もあって拘束。未決囚として選挙戦を戦うことになりました。これに対し、父親ニャムタイシル氏が選挙活動を指導することになったほか、同候補自身も拘留先から相次いで書簡を公表し、支持を訴えています。
無所属候補の中では、まずはこの3名が注目候補として挙がります。ただ、人数が人数です。有権者の投票行動いかんでは、他の候補が祭り上げられる可能性もあります。それだけ、今回の総選挙は結果が読みづらいのです。