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地域系学部というのに加わった大学教員による高知発モンゴル発のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

モンゴル2021年国家大会議補欠選挙、候補者公示(9/17候補者追加につき追記)

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 モンゴルでは2021年10月10日に国家大会議(一院制国会)補欠選挙が行われます。過去の選挙結果や候補者の顔ぶれから、現与党人民党がもともと有していた両議席を守る可能性が高いと考えられますが、結果やいかに。

 

 

 

1. 2021年モンゴル国補欠選挙の概要

 モンゴルでもこの秋国政選挙が行われます。といってもこちらは補欠選挙です。

 今回選挙が行われるのは、第18選挙区と第28選挙区の各1議席、合わせて2議席です。

 このうち第18選挙区は東部ヘンティー県全県。同選挙区選出のフレルスフ前議員・首相(人民党)が今年行われた大統領選挙に立候補、当選して辞職したために1議席が空白となりました。

 一方の第28選挙区は、首都ウランバートルの西部、ソンギノハイルハン地区を二分する選挙区のひとつです(もうひとつは第27選挙区)。こちらは去年秋にスミヤバザル前議員(人民党)が首都知事に指名され、議員を辞職したために、欠員がひとつ出ています。

 なお、モンゴルでは日本とは異なり、地方行政単位の首長は直接選挙ではなく議会による指名で候補が選ばれ、直接上位の行政単位の長、都県の知事の場合は首相の承認によって就任することになるので、国会議員が知事に転出することもあるのです。

 そして立候補の申請、国家監査庁及び全国選挙委員会の審査の結果、第18選挙区は3党及び無所属1名の計4名、第28選挙区は9党・同盟及び無所属1名の計10名の立候補が承認されました。下が全国選挙委員会による立候補者一覧です(モンゴル語)。

 

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 今回の選挙の構図は、端的には定員76議席中60議席を有し、議席保持を目指す巨大与党の人民党に、他の政党・同盟がどう勝機を見出すか、と言えます。そして、それらの政党・同盟候補の中で特に注目するならば、野党第1党の民主党、国会では1議席のみながら今年の大統領選挙では善戦した「正しい人・有権者」同盟の候補となるでしょう。

 というわけで、次に両選挙区の主要候補者について、簡単に見ていきましょう。

 

2. 人民党:若手候補2名で両議席保持を目指す

 人民党は第18選挙区に現職県知事のイデルバト候補、第28選挙区には前回選挙で人民革命党が主導した「あなたと私の同盟」から立候補したバトショガル候補をそれぞれ擁立しました。

 このうち、イデルバト候補はヘンティー県ウェブサイト掲載の経歴によれば1981年生まれ。また、バトショガル候補は自身のウェブサイトによると1987年生まれとこのこと。日本よりはるかに若い世代が多いモンゴルにおいても、若手政治家の部類に間違いなく入ります。

 特に、バトショガル候補は前回総選挙当時人民革命党党首だったエンフバヤル元大統領の子息。その人民革命党が今年の大統領選挙を前に人民党に合流したことで、今回は人民党からの立候補となりました。

 以前のエントリでも書いた通り、国会補欠選挙で同氏がどのように扱われるかに注目していたのですが、現執行部はエンフバヤル元大統領一派の反発を避けた形となりました。

 

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 もっとも、バトショガル候補は前回総選挙で次点になっていることから、エンフバヤル元大統領の意向に関わらず、議席保持を確実にする上で妥当な選択を行った、と見ることも可能です(過去の選挙については後述)。

 

3. 民主党(エルデネ派):党勢回復の可否を「昔の若者」が握る

 2020年総選挙では不振、そこに端を発した党内対立が収まらないまま大統領選挙で惨敗を喫した民主党。現在も互いに正統性を主張する党本部が並立、内部分裂が収まる兆しはありません。

 はたして今回の総選挙でも両派が立候補を届けましたが、正式に認められたのは、今回も大統領選挙の時と同じく前党首エルデネ氏の一派でした。

 そして民主党エルデネ派からは、第18選挙区にはガラムガイバータル候補、第28選挙区にはバト=ウール候補がそれぞれ立候補します。このうちガラムガイバータル候補は2012年総選挙でヘンティー県から選出、一時は党国会議員団長も務めており、バト=ウール候補はモンゴル民主化を主導した若手リーダーの一人で、国会議員に加えて首都知事の経験もある有力者です。

 もっとも、若手リーダーだったのは30年前の話。現在の有権者にとって、今まさに若い候補を揃えた人民党とは対照的に映ったとしても不思議はありません。民主党は候補者発表で自党のベテランリーダーの優越性を主張しましたが、はたしてどこまで理解されるかは分かりません。

 

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4. 「正しい人・有権者」同盟:第28選挙区のみで勝負、第18選挙区での支持候補は不明

 

 初参加となった前回総選挙で唯一の議席を得た「正しい人・有権者」同盟。労働国民党を中心に、社会民主党、倫理党が構成する連合体です。6月の大統領選挙ではエンフバト候補が民主党のエルデネ候補を抑えて次点に入るなど、その勢いが注目されるところです。

 ただ、今回の選挙区では第28選挙区にナイダラー前労働国民党党首を擁立したものの、第18選挙区では候補者擁立は見送り。地方での勢力の限界をあらためて見せる形となってしまいました。

 その第18選挙区について、ドルジハンド労働国民党党首は他党・無所属の候補者を見た上で、どの候補者を支持するかを決定するとインタビューで語っています。

 

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 ただし、現在のところ4候補のうち誰を支持するかは発表されていません。場合によっては支持を明らかにしないことも有り得る話で、今後が注目されます。

 

5. 他党・無所属候補:有権者への浸透を図る

 上記の政党・同盟以外では、人民多数派支配党が両選挙区に、市民の意志・緑の党、権利行使者党、真正党、世界モンゴル人党、正義市民統一同盟党が第28選挙区に候補者を擁立しているほか、両選挙区に無所属候補が1名ずつ立候補しています。

 このうち、市民の意志・緑の党、正義市民統一同盟党は以前国会に議席を有していたほか、世界モンゴル人党のツォグ候補もかつて人民革命党に所属、国会議員を務めた経験を持ちます(同父称同名の別人だったら済みません)。

 とはいえ、いずれの政党も選挙期間外ではほとんど報道される機会がなく、知名度に乏しいか忘れられつつあるのが現状ではないかと思います。まずは有権者への浸透を図るところから課題が始まると言えるでしょう。

 余談ですが、個人的には、第18選挙区にチンギスハーン氏が無所属で立候補しているのがツボだったりします。無所属のテムージン氏がいたら完璧だったのですが*1

 

6. 選挙の行方は?

 モンゴルでは日本や先進諸国のように、選挙情勢についての世論調査が行われることがありません。

 なので、あるべきデータに基づく判断は不可能なのですが、それでもこと今回の選挙に関して言えば、他の資料を基に、かなりの確からしさで結果を占うことが可能です。

 結論から先に言えば、冒頭で示した通り、人民党が両選挙区で議席を保持する可能性が最も高い、ということになります。

 ここで、直近の総選挙の結果を示します。第18選挙区、第28選挙区の順です。

 

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 どちらの選挙区でも定数は3で、人民党がそれぞれ独占しています。今回はさらに旧人民革命党の支持層の票が加わることが期待されるわけで、前回に増して有利とすら言えるでしょう。

 ただ逆に言えば、この選挙で取りこぼしがあると、党内に動揺が広がる懸念はあります。

 一方、野党が希望をかけるとすれば、一党支配への警戒感が拡がることです。特に、かつての社会主義独裁政党が立法と行政を完全に手中に収めたことは、周辺諸国権威主義体制も相まって、国民の不安を煽る材料には十分なり得るでしょう(ここではそのような不安が正当かどうかは問いません)。

 ただし、問題はそのような国民感情が起きたとして、受け皿がどこにあるかです。

 本来なら真っ先に候補となるべき民主党ですが、選挙連敗を招いた旧指導者が残っていれば党内分裂もそのままで、支持を取り戻すのは厳しいと言わざるを得ません。

 昨年の総選挙でも、民主党は第18選挙区で1人が次点になったものの、人民党候補には水を空けられています。バト=ウール候補が第18選挙区で大敗しているのも気になります。さらに、第28選挙区では濫立した候補者の中に沈んだ感すらあります。

 そうなると、こと第28選挙区に関しては、ナイダラー候補に人民党不支持層の票が集まることが予想されます。大統領選挙でもそうでしたが、人民党の牙城を崩すのは困難としても、民主党に代わる選択肢としての印象づけることは可能でしょう。

 と、書いているうちに思ったよりはるかに長くなってしまいましたが(汗)、今回の国会補選、第18選挙区は人民党がどれだけのリードで勝つか、第28選挙区はナイダラー候補がどこまで票を伸ばすかがポイントと言えるでしょう。

 

7. 【9/17追記】第18選挙区候補者追加公示

 昨日全国選管より、第18選挙区の候補者2名の追加公示がありました。選挙法の定めにより、立候補届出書類に不備があった場合、投票日25日前までの修正完了が確認できれば立候補を追加で認めることになっているとのことです。

 というわけで、第18選挙区は立候補者が6名になりました。この辺の経緯に関する全国選管の説明と、最新の(おそらく最終の)候補者リストです。

 

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 もっとも、これで情勢が大きく変わるとはとても思えないのですが……

*1:ヘンティー県はチンギス・ハーン生誕の地とされています。