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地域系学部というのに加わった大学教員による高知発モンゴル発のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

【2021モンゴル大統領選挙一口メモ(4)】立候補者のプロフィール・エルデネ前民主党党首(民主党)

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 今回は2021年モンゴル大統領選挙立候補者のうち、最大野党民主党(エルデネ派)ソドノムゾンドイン・エルデネ前AN党首を取り上げます。なお丸カッコ書きがついているのは理由があります。

 

 

 

1. 大統領選挙立候補者3名について

 前回のエントリでは、まず立候補者3名の経歴・スローガン・公約のリンクを貼っていました。念のため今回もまずご紹介しておきます。

 

www.polit.mn

dnn.mn

montsame.mn

 

 本エントリで取り上げるのは、最大野党民主党からの立候補が認定されたエルデネ前AN党首です。

 

2. エルデネ前民主党党首立候補までの過程

 以前のエントリでも書きましたが、民主党は1989年から1990年にかけて起こったモンゴル民主化運動を主導した勢力が2000年に結集してできた政党です。モンゴル人民党と並ぶ二大政党のひとつとされ、一時は連立政権を主導するほどに成長しましたが、内部対立や経済対策の失敗などで2016年の総選挙で獲得議席が定数76のうち9議席という惨敗、2020年総選挙でも11議席と、選挙制度による影響があるとはいえ*1、不振から抜け出せません。

 エルデネ前AN党首は、その2016年総選挙の結果を受けて党首の座に就いた人物です。そして2020年総選挙で党勢を回復できず、党規に従っていったんは党首を辞任します。総選挙については『アジア動向年報』のほか、当方の過去エントリをご覧ください。

  www.3710920.comwww.3710920.com

 

 エルデネ氏の辞任後には党首代行となったトワーン氏が新たな党首を選出することになっていました。ところが、新型コロナウイルスによる移動や集会の困難もあってか、党首を選出する大会や幹部による会合が開催されません。するとエルデネ氏は党首辞任の事実を否定、自らの代表権を主張します。ただトワーン氏がこれを受け入れず、民主党はエルデネ派、トワーン派に二分されます。

 そして今年に入ると両派がそれぞれ党大会を開催して新党首を選出。さらに、国会による大統領選挙関連法案や憲法裁の決定によって、民主党が擁立した現職のバトトルガ大統領による再立候補が認められないことが確定したことで、両派が立候補者の指名選挙を別々に実施、トワーン派はアルタンホヤグ元首相,エルデネ派はエルデネ氏をそれぞれ選出。どちらも民主党の候補として、選挙中央委員会(全国の選挙管理委員会)に届け出るに至りました。

 これを受けて、選挙中央委員会はエルデネ氏を民主党候補として認定。この決定には民主党国会議員団が反発、抗議のハンガーストライキを1週間行う事態となりましたが、決定は覆らず、エルデネ氏が民主党擁立の候補として選挙戦に入っています。

 

3. 選挙の見通しとその背景

 前項でエルデネ氏立候補までの経緯を解説しましたが、驚きを通り越して呆れた方も多いのではないでしょうか。しかも、そうまでして立候補したものの、当選に向けた見通しは暗いと言わざるを得ません。

 エルデネ氏は近年、モンゴルの政治家の中でも「嫌われ者」ナンバーワンと言われそうな存在です。ウランバートルのみですが、月例の世論調査で「活動に満足いかない政治家」というランキングがあって、エルデネ氏は近年ほとんどトップを独占しています。下のリンク先で、濃い青がエルデネ氏の回答率の推移です。

  つまり、民主党エルデネ派は、自派の大将とは言え、総選挙大敗の責任者にして内部対立当事者の「嫌われ者」を立てたわけです。これでどこまで一般の、それどころか党支持者の理解も得られるのか、大いに疑問です。

  

said.mn

 

 にもかかわらず、エルデネ氏が立候補者指名を受けたこと自体が謎なのですが、ひとつの仮説として、民主党の高齢化があるかも知れません。

 エルデネ氏含め、民主党を主導してきた人々は、先述した民主化運動のリーダーたちです。当時は若者でしたが、30年経てば当然年を取ります。

 それだけに、早めの世代交代は政党にとって至上命題なのですが、民主党は「昔の若者」に代わるリーダーがまるで出てきませんでした。人民党が若手の幹事長を選出、40歳のオヨーン=エルデネ首相を送り出したのとは対照的です。

 一方の民主党(エルデネ派)はと言えば、エルデネ氏は人民党から立候補したフレルスフ前首相よりも年長。

 さらに、今回掲げられた選挙スローガン「独裁なきモンゴル」というのも、エルデネ氏や民主党の現状を表すものと言えそうです。これはモンゴル人民党が立法に加えて行政府も手にすることへの警戒感を煽るもので、社会主義時代や民主化運動を知る人には「刺さる」可能性はあります。

 ただ、これは裏を返せば、民主党にとって他にアピールできることがないことの表れとも言えます。加えて民主化運動からすでに30年、当時を知らない有権者にこのスローガンが受け入れられるかは疑わしく、かえって「オジサン・オバサン向け」政党という印象を受け付ける付ける恐れすらあります。

 とはいえ、民主党にとって希望がゼロというわけではありません。前回エントリで見た通り、フレルスフ前首相への批判票が向かうことは考えられます。

 また注目されるのが、地方での遊説の際に、対立していたはずのオドントヤー国会議員が応援演説を行っていることです。

 

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 追加報道がないので、この背景については調べようがないのですが、あるいは大統領選挙を機に、対立していた党内両派の歩み寄りが、今後見られるかも知れません。そうなれば、1回目投票でフレルスフ前首相の当選を阻む可能性も見えてくることでしょう。

 もっとも、そうして実現した決選投票にエルデネ氏自身が進めるかどうかは、また別の問題ですが。

*1:2016年は単純小選挙区制、2020年は中選挙区完全連記制で総選挙実施。いずれも死票が多くなり、最大得票を得た政党が得票率をはるかに上回る議席を得る可能性が高まります。というか実際モンゴルの総選挙がまさにそれです。