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「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

30年目のモンゴル(4)ウランバートルを歩く(その2)

 

 ウランバートル現地調査はまだ続きます。が、調査に出る前、朝起きてテレビをつけた時点でインパクトのある画像が出てきました。

 

 

 前回のエントリがまだの方はこちらから。

 

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 この日も朝からニュースサイトでの情報収集が終わり、テレビを見ることにしました。現地のテレビはもちろん、NHKワールドプレミアムも映りますし。

 ただモニタをつけてみると、いきなり大仰な画面が映し出されました。「解放戦争」80周年記念行事の案内です。テレビを見るのか何をするのか選択する前にいきなりです。

 「解放戦争」と言われても、何のことか分からない方も多いことでしょう。その一方で、80周年といわれると第2次世界大戦や日本の戦争と何か関係があるのかと思った方も少なくないことでしょう。

 以前にも書いたような気がしますが、1945年のソ連の対日参戦に合わせてモンゴルも日本に対して宣戦布告しており、これにより始まった戦争をモンゴルでは「解放戦争」と呼びます。問題は何を「解放」するかですが、当時日本の支配下にあった中国を解放したというのが現在の一般的な説明です。ただ、実際に進軍したのは旧満洲国や南モンゴル内モンゴル)です。そして、戦闘によって日本の支配から脱した南モンゴル統一国家を樹立しようとする動きもあったものの、ヤルタ協定の存在やソ連の意向から実現はせず、現在に至っています。

 モニタに映されたのはその解放戦争の戦勝を祈念する行事が4日の夜に行われるとの告知です。左側が戦争当時、右側が現在の国旗になります。もっともイベントは私がウランバートルを発ったその日に開催されるので、観に行くことができないのは残念というべきか言わないべきか。

 

 

 ともあれ朝食。前日に撮り忘れたのと、明日は朝食前にホテルを出るので、この日ばかりは撮っておきます。モンゴル料理も多いですし。

 

 

 出発。この日はホテル前の噴水が動いています。

 

 

 人民党の前を通りかかると、赤い横断幕に何やら書かれています。昔からこの種のものは政治的スローガンと決まっています。誰か抗議行動やデモを行うのでしょうが、いったいどういう要求なのか。

 

 

 近くに行ってみると、キオスク(売店)の経営者による横断幕のようです。読んでみると、

「キオスク従事者には人権というものはあるのか!従事する仕事や労働で差別するな!

われわれには生きる権利がある!暴力を止めろ!国は義務を果たせ!人権を尊重しろ!

ニャムバータルは辞職せよ!

 

と書かれています。太字になっているのは横断幕で大文字で書かれた部分です。

 ニャムバータルというのは現在の首都知事です。就任以来ウランバートルで懸案となっている道路や地下鉄建設といったインフラ整備やゲル地区再開発等といった大規模開発プロジェクトを推進していて、その一環として市内各地にあるキオスクの撤去を進めています。ニャムバータル首都知事はキオスクの中に公共の土地を占拠しているものがあると批判、強制撤去に乗り出す一方で、経営者らに都内の市場への移転を提案、出店経費の一部負担といった措置も示し、いわばアメとムチで臨んでいます。

 

(参考1:ニャムバータル首都知事によるキオスク撤去案の説明)

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 ただ、ニャムバータル首都知事の強硬な措置に対してキオスク経営者らが反発、手続き上の不備や人権軽視を訴え、座り込みなどの抗議活動も発生しています。経営者の中にはニャムバータル首都知事や首都政庁に対して話し合いによる解決を求める動きもありますが、首都知事・政庁側の回答は管見の限り確認できていません。

 

(参考2:キオスク経営者らが政府宮殿前で行った座り込み)

ikon.mn

 

(参考3:「暴力ではなく話し合って解決しよう」を掲げたキオスク経営者らの対話集会の試み)

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 この横断幕も、これから人民党前で抗議活動を行うべく用意されたものでしょう。気にはなるところですが、他に予定や調査もあるので、ひとまず先に進みます。

 

 

 ドラマ劇場前に置かれていた機会。何かと思ったらパンチングマシーンです。ゲームセンターにあったアレです。お金を入れるとパンチングボールが下りてきて、ボールを殴るとパンチの強さが表示されるアレ。それがなんでこんなところにあるのか分かりませんが、遊んでいる人もいるようです。モンゴルにも世界クラスのボクサーはいますし、興行が打たれたりしてボクシング人気はあるようですし。

 

 

 スフバータル広場から南に歩くと、新たに整備されたと思しき公園がありました。

 

 

 ウランバートル公園だそうです。何だか知らないのですが賞にも選ばれたようです。

 

 

 公園の入口に幅広いモニュメントがありました。色目からして銅製のようです。モンゴルと言えば世界屈指の銅山があって銅の輸出も盛んなので、何か関係があるのでしょう。

 

 

 公園の案内板がありました。ステージやレストラン、なんとペット広場があります。昔のウランバートルならどこからかやって来た牛や馬が草を食べていたりするのですが、今はそんなこともないようです。

 ってか、この30年間で街中から家畜をすっかり見なくなりましたね。昔は車に混ざって馬が荷車を牽いていたり馬に乗っている人がいたりしたのですが。長閑でしたしいかにもモンゴル・ウランバートルという感じがあって好きだったんですけどね、ああいう光景。

 ただ案内板をよく見ると、

 

 

 土台のところにリオ・ティント社の名前がありました。鉱物メジャーのひとつで、モンゴル国内最大のオヨー・トルゴイ銅鉱の開発を主導する資本です。

 リオ・ティント社、その子会社でオヨー・トルゴイ銅鉱の開発と採掘を行うオヨー・トルゴイ社はモンゴル国内世論の理解を得るため、国内雇用や慈善事業をいろいろ行っています。この公園もそのような対策の一例といったところでしょう。

 

 

 公園内のスケートボード場。平日の午前中なので人はいませんが、昼以降には賑わうことでしょう。

 

 

 さらに歩いていると、こんな広告を見かけました。最初見た時はなんだか分からなかったのですが、「アプリダウンロードで8000トゥグルグ、注文して8000トゥグルグ」と書いていますし、写真からしてもフードデリバリーの広告のようです。

 ただ、どこの会社のサービスなのかが分からないので見てみると、

 

 

 なるほど、ユービーイーツ……って、おい。

 まぁでも、ウランバートルですからね。地名がもともとулаан/ulaan「赤い」баатар/baatar「英雄」の合成語で、実際УБ/UBという省略形も普通に使われますし、というか私も普通に使います。

 そんなウランバートルのフードデリバリーですから、そりゃこういう社名にもなるわけで、間違ったことではありません。ロゴは気にするな

 

 

 広告反対側。モンゴルで寿司の配達ができるのかと思ったのですが、考えてみたら寿司店自体はありますし、出前ではなくてデリバリーですから、まぁ何とかなるのでしょう。

 

 

 次回エントリはウランバートルの日本文化と資本。なのですが……

 

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