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地域系学部というのに加わった大学教員による高知発モンゴル発のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

ハープカードを知っていますか

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 「ハープカード」と言われて分かる方はいらっしゃるでしょうか。もし思い出せる方がいらっしゃったら、あの頃の阪神沿線をご存知のことでしょう。30年ほど前から四半世紀前、あるいは「あの日」も含めて。

 

 

 きっぷは現金を出して買うのが当たり前だった時代。そんな時代を変えたのが、薄い磁気式のプリペイドカードでした。当時は券売機で使えるだけで、自動改札機に投入することもできなかったのですが、それだけでも画期的な進歩だったのです。

 SuicaPASMOやですかはおろか、スルッと関西やパスネットなんてシステムができるなどとは夢にも思わなかった頃のことです。当時の国鉄オレンジカードに続いて、さまざまな鉄道会社が、独自のブランドを持ったカードを相次いで導入しました。会社ごとに使えるカードが限られているというと、今にして思えば不便な話ですが、逆にいくらでも登場するカードを集める楽しみがあったものです。

 ハープカードもその1つ。阪神電車が導入したカードでした。私にとってはどこよりも馴染みがある鉄道会社、しかも現在・過去の車両や阪神タイガースの選手のシリーズがいろいろと出たものですから、小遣いをやりくりしてあれやこれやと集めたものです。

 そんな中の1枚、ふと思って引っ張り出してみました。

 

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 「全線開通記念」と書かれたカードケース。しかし、現在の阪神なんば線の一部を除けば、阪神電車の路線のほとんどが開通したのは何十年も前のこと。この「開通」とは新たな路線が揃ったことではなくて、25年前、阪神・淡路大震災で大打撃を受けて不通となった最後の区間で、運転が再開したのを記念してのことです。

 

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 ケースの内側は、かつての神戸の街並みが一面に広がっています。

 今と違って神戸空港はなく、ポートアイランドの南部の埋め立ては進んでいません。その小さな埋め立て地も、震災後何年かは仮設住宅が立ち並んでいました。大阪湾をはさんで、はるか遠くに見える山並みだけは変わりません。

 

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 阪神電車の被災状況と、復旧の過程が記されています。

 私は甲子園に住んでいたのと、震災からすぐに再開された大学の授業に出ないといけなかったので、震災の翌日から阪神電車を利用する日々が戻りました。それでも震災直後は時に徐行しながらの運転で、沿線はブルーシートだらけの屋根に崩壊した家屋。後から復旧した区間では、そばを走る高速道路の橋桁が途切れていて、見えるはずのない空が見えています。そんな中、電車の僅かな揺れに怯えながら、通学していたのを思い出します。

 そして記録を見ると、3月の西灘~岩屋間までは比較的運転再開のピッチが早いながら、その後は全線開通まで3ヶ月も間が空いているのが分かるかと思います。この区間はもともとの高架が崩れてしまい、復旧にかかる費用も膨大になったため、長らく復旧の目途すら立たない時期が続きました。新聞にも復旧予定「未定」の文字が繰り返し浮かんでいましたし、むしろ、6月末までに復旧できるとは、とても予想が付かなかったぐらいです。

 

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 こちらがカードです。この火の鳥のイラストも、あの頃の神戸・阪神間を知る方には馴染み深いものでしょう。しかし記念のカードなら使わずとっとけよ、という話なのですが、お金がなかったのです……

 

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 裏面は注意書と、当時の阪神電車の路線図が載っています。直通特急が姫路まで走るようになるのはまだ先の話、神戸高速線も券売機が違うのでカードは使えません。難波への延伸やら近鉄との直通運転は、もはや破れた夢のように思われていたころの話です。

 

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 ケースの裏側、全線開通に何とか漕ぎ着けた阪神電車からの挨拶文です。とはいえ石屋川の車庫は崩壊したままで、車両も多く失われて足りない状況です。冒頭の写真の車両も、震災で廃車になったものの補充で作られたものです。さらに乗客の移動や膨大な復旧費用など、震災の影響はこの後も長く続きます。ある面では、影響は今も残っているとも言えるのでしょう。

 それでも、あれから25年、今も電車は走ります。すっかり変わってしまいましたが、大きな傷を負ってから息を吹き返して今に至る神戸・阪神間を走っています。

 

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