徳島市から四万十市まで、四国の山の中を横断する国道439号線。日本三大酷道の1つと言われる難所続きの道の中でも、徳島と高知の県境、標高1000メートルを超す京柱峠はハイライトの1つでしょう。前々から一度は行ってみたくもあり、行くのが怖くもあったところ、思い立ってチャレンジしてみました。
高知道大豊インターを降りてトンネルを抜け、国道32号線との供用区間がしばらく続いた後、豊永で東に折れて国道439号線の独自区間へ。落合集落までの幅広い2車線区間はこれまでの実習で走ったことのある道ですが、去年開通した落合トンネルからは始めて走る道です。集落が終わるとほどなく道は森の中に入り、幅は狭くなり、片方は法面、もう片方はところどころガードレールのない崖になり、酷道ヨサク(439)がその本当の姿を現します。
そうして走る間に、西峰地区の手前まで来ました。東豊永地区での実習を担当していた時代に話は何度となく聞いたところですが、実際に来るのは初めてです。
西峰地区の久生野集落に来ました。年季の入った案内地図が掛かっています。
西峰地区は大豊町東部、山中に点在する7つの集落からなる地区です。国道439号線は地区を東北から西南に横断していて、東北側の一番端が京柱峠になります。
知る人ぞ知る西峰の名所がこちら、西峰動物園です。
金網が貼られた小屋の中にいたのは、クジャクか何かの鳥が数羽。ただネットで見てみると、以前は他にも動物がいたという話があったり、ガチョウしかいなかったという話があったりで、動物は結構入れ替わりがあるようです。
久生野、大畑井といった集落を抜けると、いよいよ峠道に。つづら折りの登り坂が延々と続きます。念のため書いておくと、この道は国道です。
#国道です
という道をひたすら上っていくと、次第に空が開けてきます。
ついに頂上近くまで来ました。京柱峠にあるお茶屋さんの看板が出ています。にしても、「この上」って。
ひょっとして、あの鉄塔がある辺り?
この辺?って、まだ登るんかえ……
ただ、峠まであと1キロは切っていますし、自分の足で登るわけでもありません(まぁアクセルとブレーキは使うので、自分の足でと言えなくもないですが)。って、冷静に考えて1キロもない道でこの高低差って何?という疑問も。ともあれ、何とか最後の登りに挑み、ついに峠の上に!
着いた!阿波と土佐のちょうど境目、京柱峠です!
見よ、この標高。よくここまで来たものだと、我ながら悦に入ってしまいます。
京柱峠の由来を示した看板。鉄道も自動車もなかった昔、この峠が阿波から京に向かう経路の1つになっていました。そんな峠の名の由来等が述べられています。
数歩歩けば徳島県。平成の大合併のせいとはいえ、こんなところが「市」というのに驚きを感じました済みません。
徳島側の道路情報案内板。規制や通行制限があるときは、ここに案内が出るようです。ということはここまで案内を出しに来る人がいるはずで、本当にご苦労様ですと言うしかありません。
一方こちらは高知県側。徳島県側では京柱峠が異常気象時通行規制区間の起点になっていましたが、高知県側も同じく起点の標識があります。国道とは言え県が違うと管轄も分けてしまうということでしょうか。
そしてその横では「熊出没注意」とサラリと一言。北海道かよと思われるかも知れませんが、四国はツキノワグマの生息地なのです。ただ生息数はかなり限られているようなので、熊が出没するのを見たら、安全確保とともに林野庁四国森林管理局に報告した方が良さそうです。
熊出没注意の横には大豊町の観光案内図が立っています。一瞬誰が見るんだろうと思いましたが、考えてみればここは大豊町の玄関口の1つ。それに、何せ日本三大酷道、全国から酷道マニアが来かねないですし、まぁ意味はあるのでしょう。
案内図にあった里程図。豊永からここまで、国道439号線単独区間が15キロちょっとあったことになります(この地図ができてから道路の改良も一応進んでいるので、多少距離は縮んだでしょうが)。ただ南国インターから大豊インターよりも距離が短かったというのがかえって驚きでした。だいぶ走ったつもりだったのに……
さておき、京柱峠は国道439号線と林道の交差点にもなっています。気にはなりますが、適当に走って道に迷っても困るので、今回はパスします。
そしてこの眺望!徳島県側の山林が眼下に広がります。
そして高知県側を一望。手前の山林が一部開けているのが西峰動物園のある辺りでしょうか。今見下ろす山林のはるか向こうから、ついに峠の頂までやってきたのです。この達成感。
ただ、これで終わりではありません。京柱峠に来たら行ってみたかったのが、先程看板の出ていたお茶屋さん。峠が雪で閉ざされる冬以外は営業していて、名物は野生の猪を使ったしし肉うどんです。店に入ると常連のお客さんが来ているのか、座敷は全て埋まっていました。
しし肉うどん800円。脂が乗った肉がとりわけ美味でした。
うどんを頂いて、来し方を振り返る。まぁ長い登り坂でした。ってことは帰りはこの道を下ることになります。登りよりもかえって怖いものですが、ほとんどセカンド、たまにローギア、まれにドライブで、無事下界に戻ってきました。
ちなみに、豊永から京柱峠まで、登りですれ違ったのが自動車3台、下りは自動車5台とバイク2台。そして上りの途中ではシカ1頭と遭遇しました。