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第20回世界社会学会議参加記(7)Farewell

 

 第20回世界社会学会議、ついに最終日が来てしまいました。クラウンとコンベンションセンターに通うのも今日までです。

 

 

 

 ホテルの外に出てみると、大掛かりな道路工事中でした。そういえば工事で騒音が出る旨の説明書きをもらったのですが、このことだったんですね。

 

 

 路面電車は運転休止。自動車は一応通れますが、迂回の表示が出ています。

 

 

 最終日も朝からセッションに出席します。

 世界社会学会議では多数のセッションが並行して行われるので、それらの中からどれに出席するのかを考えておかないといけません。私の場合、今回は東アジア、比較社会学、社会調査に関するセッションをメインに出席しました。またモンゴルからの参加者もいたので、彼女らの報告も聞きに行くことにしました。

 こちらは東アジアの教育に関するセッションです。教育は実践者としてはまだしも、研究者としては素人なのですが、分野に限らず地域の広い知識は持っておきたいですし、研究方法論も参考になることがありますからね。

 

 

 とはいえ、研究関心のあるセッションが開催されない時間帯もあります。そういう時は大学の業務や原稿執筆に充てることもありますが、何となく気になったセッションに行くこともあります。

 

 

 本日の昼食。最後なのでコンベンションセンターのスタンドでクロワッサンとコーヒーを頼みました。昨日と違い体積は大きいですが、クロワッサンなので決して重たくはありません。

 

 

 今回最後に出席したセッション。ウクライナ戦争について、社会学的な観点から議論しようというものです。

 

 

 セッションは会場での報告に加え、ウクライナからの登壇者によるオンラインの報告もありました。

 内容については触れませんが、このようなセッション、というか今の国際大会で避けて通れないのが「ロシアからの参加者をどうするか」という問題です。

 このセッションにはロシアからの登壇者はありませんでした。気になって調べたら、大会参加者の中で、ロシアからの参加者であると確認できたのは2人だけでした。

 これは著作権や秘密保持の義務に触れないと思うので書きますが、セッションの冒頭に、ロシアからの登壇者がいないことに主催者からの謝罪がありました。参加を求めたが応じられなかったことに加えて、ロシアを出国した研究者も家族を後に残している、という説明がありました。

 その一方で、ウクライナの参加者からは「現状からすれば、われわれにはロシアの参加者から距離を置く権利がある」という意見もありました。ロシアの社会学会は戦争を支持しているとの非難も出てきました。

 スポーツの大会でもロシアやベラルーシのアスリートの扱いが議論の的になっていますが、学問の世界も無縁ではないことを痛感させられました。いや、政策や世論の形成に関わる社会科学ともなれば、ましてセンシティブになるのが当然だったのです。

 ただ、だとしたらどうしたらいいのか?セッションでは世界社会学会議を主催する国際社会学会はロシアからの個人の参加者を歓迎するとの話がありました。社会学に国別代表なんてものはないので一瞬不思議に思いましたが、政府の支援を受けての参加だったり、同じ大学・研究機関の研究者がまとまって参加することはあり得るので、そういうのは認めないということでしょうか。

 これはこれで合理的な選択肢のひとつとは言えるでしょう。しかし、そのような参加者との冷静で開かれた対話がどこまで可能なのか、という疑問は残ります。ウクライナの参加者の心情は察するに余りありますし、それ以上に権威主義を超えて抑圧的な国家からの参加者に、どこまでその国家のドグマから自由な議論が可能なのか?むしろそのドグマを披露する機会を与えることになりはしないか?そして、自由な議論ができたとして、その後に起こるであろう災禍に、われわれは責任を持てるのか?湧き出す疑問に有効な答えを出す自信は、私にはありません。

 そして事実として、セッションにロシアからの出席者はいませんでした。さらに気になって参加者リストを調べたところ、ロシアからの参加者として確認できたのは2人だけでした。

 そんな現実を最後の最後に示して、1週間続いた第20回世界社会学会議は終わりました。次回、せめて4年後の韓国・光州での会議では、今起きている戦禍が止み、今沈黙を余儀なくされている研究者とも、自由かつ開かれた対話・議論ができることを願って止みません。これは私だけの願いではないはずです。

 

 

 1週間お世話になった会場を後にします。メルボルンコンベンションセンター、ありがとうございました。

 

 

 2日連続2回の報告会場となったクラウンも、ありがとうございました。次はプライベートで来たいですね。カジノでは遊ばないと思いますが(笑)

 

 

 ヤラ川を渡ってホテルへ。明日の午後には帰りの飛行機に乗り込みます。

 

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