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地域系学部というのに加わった大学教員による高知発モンゴル発のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

日本・モンゴル関係、2022年9月初頭の報道で見た気になる動き(9/10一部修正)

 

 3年ぶりのモンゴル滞在中に、日本・モンゴル関係に関わる報道が3つ出てきました。ロシアのウクライナ侵略に関わる部分も小さからずあり、ちょっと厄介です。

 

 

 

0. はじめに

 3年ぶりのモンゴル調査、国際シンポジウムに出席している間に、日本とモンゴルとの関係に関わる現地報道が3件相次いで出てきました。今のところ、いずれも大きな動きとは言えませんが、どうしても気にはなるものです。

 

1. ロシアのウクライナ侵略反対の"NoWar"デモでまさかの日本推し

 報道での扱いが小さいために気づいていなかったのですが、ロシアのウクライナ侵略に反対する人々による"NoWar"デモは現在も続いていました。

 9月3日には第30回目のデモがウランバートルロシア大使館前で行われています。特に今回は、モンゴルがロシア主催の合同軍事演習「ヴォストーク-2022」に今年も参加したことに対する抗議も含まれています。

 ところが、今回のデモはどういうわけか日本を推したものでした。「押した」というよりは「推した」だと思います。横断幕は明らかに日の丸をあしらったものですし、参加者が日本の国旗を持っています。

 さらに、記事に掲載された動画では、横断幕と同じデザインのポスターをロシア大使館前のボードに貼り付けようとして、警察官と小競り合いになっているところが写されています。

 

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 ロシアによるウクライナ侵略への抗議に日本を持ち出したことについて、記事によれば参加者の一人はこう語っています。

 日本はわれわれの第三の隣国であり、最も大きな投資国の一つです。しかし我が国の与党はこのような恥ずべきことを行い、戦争を仕掛けた国との演習に参加していることを遺憾に思います。

 われわれの代表者として選ばれた人々がわれわれをいちども代表したことないことは、ウクライナでの戦争が始まって以後の6ヶ月の間ではっきりと示されました。」

 

 警察によるデモへの介入に対しては、主催者の一人であるモンゴル民主同盟総合コーディネーター*1のモンゴルフー氏がインタビューで非難を繰り広げています。

 

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 もっとも、知らないうちに自国の国旗やそれをアレンジしたものが外国の政治的主張に大々的に使われた末、警察の介入で損壊するのを見ることには、個人的には複雑な思いがします。主張自体の是非や国旗決定の過程について思うところもありますが、それはそれ、これはこれです。

 

2. バトツェツェグ外相、日本からの援助停止とのネット上のデマ否定

 5日に開かれた臨時閣議*2後の記者会見で、バトツェツェグ外相が「日本がモンゴルで行っているプロジェクトと援助・融資が停止した」というデマを否定しました。

 

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 記事によれば、バトツェツェグ外相の発言は以下の通りです。

これ(訳註:デマ)は実態とまったく合わない間違った情報です。外国政府の名をもって嘘の情報を拡散することは、二国間関係や国民間に誤解を生じ、不信を生み出すという有害な活動であると見ていることを特に強調したいと思います。

 モンゴルは日本と全面的パートナーシップを発展させています。今年は両国の国交樹立50周年にあたります。」

 

 いやぁ、怒ってますね……

 日本からモンゴルに対して以前のような援助がやりにくくなったことは事実です。まさに今年のウランバートル国際シンポジウムで伺った話なのですが、モンゴルが経済発展を遂げたことで、無償援助の対象から外れましたし、円借款を行うにも債務負担の問題があります。

 とはいえ、いきなり全面停止というのはあり得ない話です。私の知人にもモンゴルとの協力事業に関わっている人がいるわけで、このデマを知ったらどう思うか(あるいは、もう知っている可能性もありますが)。

 それだけに、こうしてハッキリ怒ってもらえるのは有難いことです。もっとも、私自身はデマそのものを直接目にしたわけではないので、どういう形で発生して拡散したかは、全く分からないのですが……

 

3. サイハンバヤル国防相、日本の北方領土での軍事演習参加とのデマを否定

 またデマの話です。デマばっかりか、と思われるかも知れませんが、実際モンゴルの報道を見ていると、デマを否定したという記事は日常的に見かけます。

 

ikon.mn

 

 こちらもサイハンバヤル国防相の発言を引用しておきましょう。

モンゴルに海軍がないのは皆さん(訳註:記者に対して)ご存知ですね。しかしクリル諸島といった係争のある島々でモンゴルの兵士が演習に参加しているといった歪曲された情報が伝わっています。そんなことはありません。」

 

 クリル諸島といってもいろいろありますが、「係争のある島々」ということから、南クリル諸島、日本の北方領土を指すことは明らかです。

 これは先程以上に謎なデマです。確かに、ロシアは自国で定めた対日戦勝の日に合わせて、択捉島国後島で軍事演習を行ったと発表しました。

 

www.jiji.com

 

 なので、モンゴルの将兵が参加する可能性はもちろんあります。

 ですが、モンゴル側には積極的に参加する理由がありません。国防相の言うように、少なくとも現在は海軍のないモンゴルが参加するか、何のために参加するのか、という話です。お付き合い、ぐらいはあり得るとは思いますが、現場で何をするのかという疑問は生じます。

 そう考えると、このデマはあり得ない話です。ってか、この話も私自身は実際に目にしていません。モンゴル人が集まるFacebookグループにでもいくつか入れば、この手のデマは普通に目にするのかも知れませんが。

 ただ、この数年の世界を考えると、デマや虚報は、あり得ない話であればあるほど信じられやすい、という気がしないでもありません。なんともはや……

 

 以上3件、動きとしては大きなものとは言えません。デマについても、他のデマの例から考えれば、これで鎮静化するのではと予測します。

 また、特にデマについては、現時点で意図されたものであるとか、背後に何らかの勢力があると決めつけることはできません。先程も述べた通り、デマ否定の報道はモンゴルで当たり前に見るものです。昔から口コミ社会なので、その感覚がwebに波及して、真偽合い混ざった情報が自然発生しているとの仮説が十分成り立つからです。

 抗議デモに関しても、あまり深い考えはなかったという可能性があります。良いこと思いついた!ぐらいのノリということです。こちらもあくまで仮説ですし、それはそれでどうかとは思いますが。

 とはいえ、いずれもなかなかにキナ臭い話です。デマ2つは明らかに日本にとってマイナスですし、抗議デモについても、先に示した個人的な違和感だけではなく、ロシア大使館側の反応も気になるところです。続報があれば、また取り上げるかも知れません。

 

【9/10修正】

 ロシアが北方領土で軍事演習を行ったと発表したため、該当する部分を削除、修正しました。失礼いたしました。

 

*1:ただしモンゴル民主同盟は民主党内紛の影響を受けて二分されており、この肩書を認めるのはそのうちの一派です。

*2:現在のモンゴルでは水曜日に定例閣議が行われますが、オヨーン=エルデネ首相がウラジオストクで行われる東方経済フォーラムに出席することから、日をずらして行われました。