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「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

阿佐海岸鉄道DMVで室戸岬を回ってきました

 

 鉄道路線と一般道路の双方を走れる阿佐海岸鉄道DMVデュアル・モード・ビークル)。土曜・休日には室戸岬を回るルートで1往復運転されています。このほど起点から終点まで乗り通してきました。

 

 

 阿佐海岸鉄道DMVの運転を始めてから1周年が近づいています。鉄道路線と一般道路の両方を走ることができる車両は、普段は徳島県海陽町の阿波海南文化村から阿波海南で鉄道の阿佐東線に入り、高知県東洋町の甲浦で再び一般道路に出て再び海陽町に戻り、道の駅宍喰温泉までを走っています。

 ただし、土曜日と休祝日には甲浦から途中の海の駅東洋町で別ルートに入り、室戸岬まで一気に南下、海の駅とろむまで走る路線が1往復設定されています。

 前回訪れた時はスケジュールの都合上、こちらの路線に乗ることができなかったので、このほど乗りに行ってきました。

 

 

 今回は海の駅とろむ発のルートを利用します。海の駅は一時期レストランも売店も撤退して実質休業状態でしたが、今年8月25日に新たなレストラン「室玄」がオープン。店内で物販も再開されました。

 

 

 レストランは地元の海の幸を活かした料理や定食が揃っているのですが、今回食べてみたのは、地元の方に教えてもらった炭カルボナーラと炭ホットサンドのセット(1,300円)。

 インパクト満点の見た目ですが、しっかりソースに絡んだもちもちのパスタと具が隅まで入ったホットサンド、味はばっちりです。

 

 

 腹ごしらえも済んだところで停留所に行くと、DMVが停まっていました。

 

 

 赤・青・緑の3両あるDMVのうち、今回は青に乗車します。

 

 

 乗車しました。阿波海南文化村まで、約1時間半の行程です。

 

 

 DMVは定員の3割ぐらいの乗客を乗せて発車しました。ここから海の駅東洋町まで、国道55号線で海沿いをずーっと走ります。

 モニターでは次の停留所、室戸岬のPR動画が放映されています。室戸から甲浦までは高知東部交通の路線バスがあるのですが、DMVは観光拠点のみに停車します。

 

 

 室戸岬からも何人か乗客がいて、車内は定員に近くなりました。ことこの便に関しては、利用率は上々というところでしょう。撮影に来ている人も何人か見かけます。

 次の停留所は室戸世界ジオパークセンター。世界ジオパークに指定された室戸の自然を紹介する施設で、カフェと物販スペースもあります。

 

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 室戸世界ジオパークセンターからは、10分もしないうちにむろと廃校水族館に到着。DMVと開館時間中の路線バスは、水族館の駐車場まで乗り入れるようになりました。

 そして水族館を出ると、次の海の駅東洋町まではだいぶ距離があります。この間、モニターでは室戸市や東洋町、海陽町といった地元の観光PR動画が放映されます。

 

 

 DMVが海の駅東洋町に近づいてきました。以前は高知からここまで路線バスで来てDMVに乗り換えたのでした。

 こちらは帰りに寄るとして、引き続きDMVに乗り続けます。ってか、この後から鉄道にモードチェンジするわけで、お楽しみはこれからです。

 

 

 海の駅東洋町を出るとDMVは海岸線に別れを告げて、甲浦の停留所に向かいます。停留所から高架の鉄道路線に入るスロープが見えてきました。

 

 

 甲浦駅停留所に到着しました。

 駅とは言うものの、停留所は鉄道モードに入るスロープの手前、かつての駅舎の傍らに置かれています。なので、これが鉄道駅とは言い難いところです。

 一方、以前の旅行記でも登場しましたが、鉄道時代の甲浦駅では、旅客の取り扱いはなくなっています。

 

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 また、資料によると旧駅は信号所の扱いになっています。ということは、高知県内の阿佐東線には終点があるのに駅がひとつもない、という不思議な話になります。

 

 

 DMVは停留所を出ると、スロープを上がってモードインターチェンジ(信号所)に着きました。ここでバスモードから鉄道モードに切り替えです。

 こちらはモードチェンジに入る前のモニタ映像。甲浦信号所に入線するDMVが映されています。モードチェンジが始まると工程の紹介となり、作業に合わせて鉄道車輪の前輪と後輪が出てくるところが映し出されます。

 こちらについては、後で撮影した動画もご紹介しますので、しばらくはこちらをお読み続けください。

 

 

 DMV阿佐東線を滑るように走ります。実のところ、一般道路では通常のバスよりも揺れと衝撃を感じたのですが、鉄道路線に入ってからは快適なものです。

 トンネルを抜けて宍喰駅に近づくと、車両基地にかつてのASA-300形が止まっていました。信号システムの都合上、この車両が本線に入ることはもはやなく、実質は保存車両になっています。

 

 

 次の海部駅では、ASA-100形が停まっていました。こちらも線路は本線から切り離されています。

 

 

 海部駅名物の町内トンネル。かつて貫いていた山が全て切り崩され、トンネルだけが残ったというものです。

 トンネルの上は立入禁止なのですが、最近ではこのトンネルに登ってDMVを撮影する人が出てきているとのこと。DMV鉄道車両であって、撮り鉄の狙うところになるわけで、そうなると……

 まぁ、問題を起こす輩が現れない方が奇跡です。

 

 

 次の阿波海南信号所で、鉄道モードから再びバスモードへ。アナウンス最後の「フィニッシュ」にはいまだに慣れないのか、車内からは笑いが漏れてきました。

 

 

 バスモードになったDMV阿波海南駅停留所でJR牟岐線乗換の乗客を降ろすと、終点の阿波海南文化村へ。

 

 

 そして終点、阿波海南文化村に着きました。

この施設については以前のエントリでもご紹介しました。DMVの効果が続いていると良いのですが。

 

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 さて、以前は阿波海南文化村でそのまま折り返したのですが、今回はまちあるきを兼ねて阿波海南駅まで歩くことにしました。

 だいたい15分ぐらい歩いて駅に到着。駅舎は「海陽町海南駅前交流館」として、地元の情報スペース兼待合室となっています。

 

 阿波海南駅はJR牟岐線の終点で、DMVとの乗換駅です。こちらはDMVの乗り場です。

 DMV導入以前は、海部までがJR牟岐線、海部-甲浦間が阿佐海岸鉄道阿佐東線でしたが、DMVのモードチェンジの場所を確保するために、海部-阿波海南を阿佐海岸鉄道に移管(さらに阿佐海岸鉄道阿波海南駅は信号所に変更)、阿波海南をJR・DMV乗換地点として整備することになったのです。

 

 

 甲浦から海の駅東洋町を経て、道の駅宍喰温泉行に向かうDMVがやって来ました。ゲートを開いて、停留所に入ってきます。

 乗り込んでみると、車内はほぼ満席。DMVは海の駅とろむへの路線以外、予約なしの当日乗車も可能なのですが、定員いっぱいになると乗車できません。

 なので迷ったのですが、スケジュールも考えて安全策をとって予約しておくことにしました。正解でした。

 さて、阿波海南停留所を出たDMVは、すぐに信号所で停車。ここから鉄道モードに切り替わります。こちらは動画に撮ってみましたので、是非ご覧ください。

 

youtu.be

 

 動画には入っていませんが、やはり「フィニッシュ」というのがジワるのか、子どもが「フィニッシュ……」とつぶやいていました。

 

 

 阿波海南からDMVはのんびりと線路上を滑走し、甲浦信号所へ。ここから再びバスモードにチェンジです。こちらも動画をどうぞ。

 

www.youtube.com

 

 バスモードになったDMVは地上にゆっくり戻って、甲浦駅停留所へ。そして一般道へと進んでいきます。

 

 

 そして海の駅東洋町に着いたところで、今回のDMV体験は無事終了です。 

 

 

 海の駅で買い物を済ませると、室戸営業所行の東部交通のバスがやって来ました。これで今夜の投宿先に向かいます。

 

 

 ちなみに、海の駅東洋町ではDMVくじを実施中。空くじなしでDMVぬいぐるみが当たります。

 


 前回と今回で3両揃いました。全て末等ですが(苦笑)、大事なトリオです。

 

 DMVが走り始めて来月で1年。コロナ禍の影響もある中ですが、少なくとも今回私が見た限りでは座席もかなり埋まっていてホッとしました。土日だからじゃないか、と思われるのは当然ですが、土日ですら空席だらけだったら目も当てられないじゃないかと。

 とはいえ、心配事は残ります。世界初のDMV、というのは良いのですが、それが今後も世界唯一のままだとマズいんじゃないかと。

 システムが特殊なままの輸送手段は、得てして維持が難しくなり、廃止されたり、より一般的なシステムに変更されたりします。

 最近だと、広島市安芸区のスカイレールが来年末に運行を終えるというニュースがありました。モノレールのような線路上にロープが張られていて、ゴンドラがそのロープに引っ張られて走るという他にないシステムです。

 

nordot.app

news.mynavi.jp

 

 また、愛知県で走っている「ゆとりーとライン」も、ガイドウェイバス方式を廃止して自動運転バスに転換すると報じられています。

 

www.nikkei.com


 そして何より、高知での暮らしが長い方なら、五台山のロープモノレールを思い出されるのではないでしょうか。世界的にも珍しい自走式ロープウェイ、私も一度でいいから乗ってみたかったものですが、運行期間は10年に満たないものでした。

 

haisentn.blog41.fc2.com

 

 それだけに、DMVについても、他の鉄道路線に波及しないままだと、いずれ維持できなくなるのではと懸念されます。

 例えば、今の車両が老朽化して更新したいのだけれど、技術的にも採算面でもどうにも見合わず、結局BRTに転換、というところです。阿佐東線を維持する理由の一つが災害時の輸送路確保なので、高架路線を放棄することまでは避けたいはずですが、あえて鉄道で残さずに済むなら、それでも構わない、となることは十分想像されます。

 とはいえ、では現状どの鉄道路線DMVに適しているのか、といわれるとこれが難しい。信号システムの都合上、他の路線から切り離せることが前提になりますし、輸送量が多いのもかえって考えもので、続行運転で凌げるレベルが望ましい。どちらの条件も、鉄道の本来のメリットからするとどうなの、という意見はあり得ますが……

 報道によれば、阿佐海岸鉄道は今月からDMVの視察の受け入れを始めたそうです。

 

www.topics.or.jp

 

 ここから2番目、3番目の路線が現れるかどうか。DMV阿佐東線の将来にも関わってきそうな気がします。