創立90周年の記念の年を迎えた高知交響楽団。COVID-19パンデミック下で危ぶまれた演奏会が、何とか年内開催に漕ぎつけたので、私も出かけてきました。
COVID-19パンデミックは高知の音楽界にも打撃を与えました。1931年創立の歴史を誇る高知交響楽団も、昨年以来第164、165、166回演奏会が中止。太平洋戦争以来となる活動の中断を余儀なくされました*1。
ただ、感染状況が収まっている中、創立90周年ぎりぎりのタイミングで演奏会が実現したのです。
当日は90周年記念ということで、黎明期の楽器が展示されていました。こちらは創立して間もない頃に作られたティンパニ。戦火を生き延び、今も保存されています。
バスーン(ファゴット)の展示も。こちらはまだ使えるかも知れません。
このほか、90年の歴史を示すパネルや、過去の演奏会のチラシも展示されています。最近だと、当然私が聞きに行ったものもあります。
そして今回の演奏会。曲目はシベリウス・交響詩「フィンランディア」、シューベルト・交響曲第7(8)番「未完成」、ムソルグスキー=ラヴェル・組曲「展覧会の絵」です。
「フィンランディア」は私が初めてオーケストラで演奏した作品で、今も思い入れが深いものです。対照的に「未完成」は演奏会で聴いた記憶がなく*2、LP全盛期と比べると録音も減って聴く機会が少ないもので、かえって新鮮だったりしました。
とは言いつつ、やはり圧巻は「展覧会の絵」です。特殊楽器をふんだんに使い、しかも通常の編成含め、どの楽器にも見せ場がある多彩なオーケストレーションは、楽譜のオーセンシティに関する限界を一蹴します。ロシア的であることに価値を置く向きからの不満は理解できるとして、それでもラヴェルがこの作品に正当な評価を与えるのに貢献したことは認めなければならないでしょう。何より、オーケストラの演奏を楽しむという点において、ラヴェル版はこの曲のアレンジのみならず、古今のクラシック作品の中でも屈指の作品と言えるでしょう。
それだけに、パンデミックによって各地のオーケストラが危機に直面している中で演奏されたのがこの作品であったことに深い意義を覚えます。何より、オーケストラというものの素晴らしさを存分に湛えた作品を、この時期の演奏会で聴けたことに、心から感謝したいと思うのです。
なお、アンコールは2曲。チャイコフスキー・組曲「くるみ割り人形」より、「こんぺい糖の踊り」と「花のワルツ」。チェレスタさんとハープさんにおいでていただいているわけで、プログラム的にもこれ以上ない選曲です。良い演奏を聴くことができました。