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モンゴル2021年国会補選、両選挙区で人民党圧倒的も投票率不達で追加投票実施

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 モンゴル国家大会議(国会)の第18選挙区と第28選挙区の補欠選挙の投票が11日に行われました。開票結果は両選挙区とも人民党候補がきわめて優勢でしたが、投票率が成立要件の50%に満たずに選挙は未成立、追加投票の実施が決まりました。

 

 

 モンゴルの一院制国会である国家大会議のうち、各1議席が欠員となっていた第18選挙区(ヘンティー県)と第28選挙区(首都ソンギノハイルハン地区の一部)の補欠選挙の本投票が、2021年10月11日に行われました。

 今回の補欠選挙が行われることになった経緯や、候補者等の詳細につきましては、過去のエントリで解説しております。要点の要点としては、どちらも元は与党人民党の議席で、今回の選挙でも人民党が両議席を守る可能性が高い、というものです。

 

www.3710920.com

 

 ただ、エントリを書いた後から、モンゴル国内でいくつか新たな動きがありました。特に注目されるのが、ロシアからの輸入困難により燃料不足が深刻化したこと、2派が対立していたはずの最大野党民主党がいつの間にかひとつにまとまったこと、その上で統合した民主党が今月に入って政府への抗議デモを始めたこと、他にも感染対策の厳格さが一般市民と政治家・高官らで異なると主張するノー・ダブル・スタンダード運動も抗議デモを始めたことが挙げられます。

 これらはいずれも人民党にとっては不利な材料です。それだけに、人民党の敗北は考えにくいとしても、野党候補が票を伸ばす可能性は出てきたように思われました。

 そして11日、投票が行われたのですが、結果は人民党両候補が圧倒的多数の票を獲得も、投票率が低迷して選挙が成立しないという予想外のものでした。

 英語での現地報道を下記に示します。ただし得票数については一部の候補者のみです。

 

montsame.mn

 

 全候補者の得票については、選挙管理委員会が投票区*1ごとの集計結果を示しています。ただしモンゴル語版です。

 

gec.gov.mn

 

 選挙管理委員会投票率のリアルタイム情報も提供しています。投票区や年代・男女別の統計も示しています。ほとんどの投票区で投票率が50%を下回っているのが分かります。日本ならまだしもモンゴルだと思うと衝撃的です。

 

turnout.gec.gov.mn

 

 さて、どちらの選挙区でも投票率は成立要件の50%に達していないため、モンゴルの選挙法に基づき、7日間以内に追加投票を行うことが決まりました。

 追加投票は未投票者に対して投票機会を提供し、投票率を向上させる措置です。そのため、11日に投票済の有権者は投票できません。

 また、本投票と異なり、追加投票には投票率の成立要件はありません。つまり、追加投票を行っても投票率が50%未満に止まったとしても、選挙が成立したことになります。

 

www.zms.mn

 

 なので、各候補の最終的な得票数は確定していないのですが、先程のリンク先を見る限り、どちらの選挙区でも人民党の候補者が野党を圧倒する勢いで票を伸ばしています。

 先程の選管速報によれば、第18選挙区では人民党候補イデルバトが13700票を獲得、次点の民主党ガラムガイバータル候補に1万票近い差をつけています。

 また、第28選挙区では人民党バトショガル候補の得票が24382票、他は票が割れていて、2位が「正しい人・有権者」同盟(労働国民党が事実上主導する政党連合)から立候補した労働国民党ナイダラー候補が5269票、3位民主党バト=ウール候補が5000票が続いています。もっとも、2位以下の得票を全て足しても、バトショガル候補の得票には遠く及びません。

 もちろんこれは低い投票率の中での暫定結果で、16日の追加投票で多数の投票があれば、理論上は逆転の可能性が存在します。とは言え、現実にそのようなことが起きるとは考えにくいところです。むしろ、開票結果を見て、未投票の有権者がさらに白けることも想像に難くありません。

 この状況に対し、人民党の反応は本稿執筆時点では分かりません。一方で、民主党からは早々に敗北を認める声が出ています。もっとも、発言の主は対立していた両派のうち、候補者選定に関わらなかった方のトップなので、これが党を代表する見解とは言えないばかりか、この発言に反対する声明が今後出てくる可能性もありますが。

 

dnn.mn

 

 一方、第28選挙区で暫定的に次点となったナイダラー候補を擁する労働国民党は、低迷する投票率こそが与党人民党への不満の表れだとの主張を展開しています。

 

ikon.mn

 

 与党一強に対し野党は分立してまとまらず、それが国民の政治的無関心を誘って与党がますます力を得る。どっか別の国の話のようですが、モンゴルで今起きていることも、このように簡単にまとめることができそうです。

 それだけに、16日の追加投票でサプライズがあるとは到底思えません。せいぜい、現時点での人民党候補のリードが拡がるか縮まるかぐらいの違いしか出てこないでしょう。

 もっとも、その違い次第で人民党執行部の求心力や、現状収まったかに見える民主党の内部対立問題に対する影響も変わってくると予想されます。勝負はほぼ決まった補選ですが、だからこそ人民党がどういう勝ち方をするかが注目されます。

*1:選挙区を細分化したブロック。