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モンゴル2021年国会補選追加投票実施、人民党2候補圧勝。最終投票率は50%未満

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 2議席をめぐって行われた2021年のモンゴルの国会補欠選挙は、本投票で投票率が50%を下回ったことから10月16日に追加投票が行われ、与党人民党候補が圧勝しました。ただし投票率は相変わらず低く、政治への倦怠感が懸念されます。

 

 

 モンゴルの一院制国会である国家大会議の全76議席のうち、第18選挙区(ヘンティー県)及び第28選挙区(首都ソンギノハイルハン地区第2)で欠員が1議席ずつ出たことから行われた2021年補欠選挙

 10月10日が本投票日だったのですが、どちらの選挙区でも投票率が50%に満たなかったことから、16日に追加投票が行われました。

 この間の経緯は、下に示した以前のエントリでご確認ください。

 

www.3710920.com

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 そして16日に追加投票が実施され、終了後直ちに開票作業が行われた結果、第18選挙区では人民党イデルバト候補が有効票の7割以上を獲得、第28選挙区では人民党バトショガル候補が有効票の過半数、次点候補の4倍以上の得票で、どちらも大差で勝利しました。

 モンゴル語になりますが、選挙管理委員会による最終結果を下に示します。説明がないのですが、本投票及び期日前投票、追加投票の合計と見て間違いありません。

 

gec.gov.mn

 

 以前のエントリで記しましたが、第18選挙区も第28選挙区も、元は与党人民党の議席です。つまり、今回の結果は人民党が議席を取り戻したことを意味します。

 なので選挙後の国内政治への影響は小さい、と言うところなのですが、大敗した野党のうち最大の民主党は、補選でようやく解消したかに見えた党内対立が再燃しはじめたようです。

 具体的には、選挙の最終結果が公開された18日に国会議員団の内紛が露呈。議員団長が党方針に違反した所属議員の党籍停止を発表すると、停止された議員が団長の解任を発表という事態となっています。

 

dnn.mn

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 今回の補欠選挙、6月の大統領選挙と同様に、最大野党が内部対立でさらに弱体化、他の政党はとって代わるだけの実力がなく、与党がますます力を得るという構造を再確認するものであった言ってよいでしょう。

 ただ、気になるのが投票率の低迷です。選挙管理委員会によれば、最終的な投票率は第18選挙区で46.65%、第28選挙区で48.89%でした。

 

turnout.gec.gov.mn

 

 追加投票では本投票とは異なり、選挙の成否に関する基準は設けられていません。なので選挙自体は成立したものの、本投票での投票率が50%未満だから追加投票が実施されたことを考えれば、いわば目標を達成できずに終わったことになります。

 過去の補選の投票率が分からないので、今回の投票率が特に低いかどうかは判断できません。とはいえ、国民の実質的な選択肢が狭まる中で、政治に対する無力感や諦めが広まっているのではないか。日本の政治状況と照らし合わせてみると、そのような疑問が湧いてきます。

 権威主義体制が確立した周辺諸国の中で、モンゴルは民主主義のオアシス、あるいは民主主義の小島と言われてきました。即断は禁物とは言え、その民主主義の基盤が弱っているとすれば、モンゴルの国家像をも揺るがす話です。それだけに、今回の低投票率には、どうにも憂慮せざるを得ません。