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地域系学部というのに加わった大学教員による高知発モンゴル発のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

2020モンゴル国会総選挙一口メモ(6)モンゴルの政党:3. 正義市民統一同盟党(新同盟)

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 今回の一口メモは昨年2019年に誕生した正義市民統一同盟についてです。なお、同党は2020年総選挙に「新同盟」として参加しているので、この同盟についても解説します。

 

 

 正義市民統一同盟党は冒頭で示した通り、2019年に結成された新しい政党です。モンゴル人民党民主党の二大政党以外のいわゆる「第三勢力」では現在の国会(国家大会議)で唯一議席を有する政党でもあります。

 ただ、同党所属の国会議員であるバトザンダン党首も、ボルド元外相も、元は民主党からの立候補で当選した議員です。詳しくは前回書きました民主党についてのエントリに譲りますが、フレルスフ首相の不信任案に端を発した対立から、民主党を離党して新党を立ち上げた経緯があります。

 

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  その新党、日本語にするとかなり硬い名前に見えるのですが(私の訳の問題もあるかも知れませんが……)、実は言葉合わせの部分もないではありません。

 というのも、この党のモンゴル語での名称のうち、「正義市民統一同盟」の頭文字をとると、ShINEとなります。Shのhってなんなんだ、と思われる方もいるでしょうが、キリル文字標記のモンゴル語ではShは1文字になっていて、Sだけとは区別されるのです。

 そして、このShINEだけだと、モンゴル語で「新しい」という意味になります。つまり、頭文字だけをなぞれば、新しい党、新党、というイメージになるんですね。

 モンゴル語では(おそらくロシア語の影響でしょうが)略語でも読む際には略さないことの方が一般的です。自国を略してMUと書きますが、読むときはMongol Ulsと読みますし、国会もUIKhと書いてUlsyn Ikh Khralと読みます(Khもキリル文字では1文字)。他にもIBUINVUとかNBBSShUBKhとかChDGBKhZKhGとか、ノーヒントで読み方を当てないといけないので大変です。

 ただ、この党については、頭文字を単語風に読むので良いという、モンゴル語では貴重な例になっています。これが党のイメージ戦略にもなっているのではと思います。

 さて、今回の総選挙に対して、正義市民統一同盟党は共和党、真正党(日本にかつてあった「新生党」ではない)、モンゴル民族民主党の3党と「新同盟」を結成して臨んでいます。全議席に対して候補者を立てるには至っていませんが、候補者数は72名と、二大政党以外ではかなり多い部類に入ります。

 選挙戦では人民党・民主党双方への対決姿勢を表すとともに(現地報道)、腐敗の一掃、大規模鉱山からの利益の「人民大衆」*1に対する分配や資源開発を行う外資との投資契約の見直し等を掲げています(選挙公約を伝える現地報道)。

 ただし、ここで掲げられた公約実現のためにどのような政策を実施するかは定かではありません。また、そもそも「人民大衆」に利益を分配するというのが、誰に何を分配するのかも、具体的な内容が私には測りかねるところです。また、投資契約見直しという、明らかに自らに不利な「後出し」を開発企業側がやすやすと認めるとは思えませんし、これがまたぞろ外資の逃避につながる恐れもあります。

 また、バトザンダン党首とボルド元外相以外に有力な候補が乏しいのも懸念材料です。同盟内では閣僚や大統領選立候補の経験のある共和党のジャルガルサイハン党首が有名なぐらいで、民族民主党はかつて党首を務めたエンフサイハン元首相が職権乱用の容疑で拘束中の身、真正党に至っては国会で議席を獲得したこともなく、候補者どころか党自体も、有権者の間での知名度は不明です。

 これらに加えて、中選挙区完全連記制という選挙制度の不確実性もつきまとうわけです。有権者の多くが投票先を分散させた場合には議席増ももちろんあり得ますが、そうでない限り、二大政党以外の候補者の当選はそもそも困難です。それでも当選の目があるのは、ウランバートルで一定の評価を得ている(現地報道)バトザンダン党首ぐらいかも知れません。

 このように考えれば、今回の総選挙で新同盟並びに正義市民統一同盟党が躍進する可能性が大きいとは考えにくいところです。とはいえ、この読みが外れることももちろんあるわけで、その際にモンゴルの最大産業である鉱業部門がどうなるかについては、注意を要します。

*1:この言葉に面食らった方もいるでしょうが、国民・市民に当たる用語ではなく、社会主義時代から使われている言葉をわざわざ持ち出しているので、あえてこのように訳しています