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地域系学部というのに加わった大学教員による高知発モンゴル発のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

2020モンゴル国会総選挙一口メモ(5)モンゴルの政党:2. 民主党

 

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 2020国会総選挙一口メモ、今回は最大野党の民主党についてです。

 

 

 ……と書いておいてなんですが、党結成の経緯については前回総選挙の時と変わるわけでもないので、そちらのエントリをご紹介します。

 

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 さて、前回総選挙では単独小選挙区制と一票の格差の影響もあったとはいえ、獲得わずか9議席という惨敗を喫した民主党。その後は2017年の大統領選挙で勝利したものの、党の勢いが取り戻せたかというと微妙です。

 とりわけ象徴的なのが、かつて外相を務めたボルド国会議員、さらにバトザンダン国会議員、アルタンホヤグ元首相が2019年に相次いで党を離脱したことです。

 このうち、バトザンダン・ボルド両議員は2018年に提出されたフレルスフ首相の不信任案を巡り、党の方針に反して反対票を投じると、民主党国会議員団からの離脱と離党を表明します。

 これに対し、党本部は認めない方針を示したものの、2019年に入ると反抗的な姿勢を強める両議員に根負けしたか、議員団離脱と離党を容認します。その後、両議員は新党「正義市民統一同盟党」(ShINE Nam)を結成、総選挙では他党と「新同盟」を組み、民主党・人民党との対決姿勢を鮮明にしています。こちらについては別エントリであらためてご紹介します。一方、民主党は所属議員数が国会議員団形成に必要な9名を割ったことで、議員団解消を余儀なくされます。

 他方、アルタンホヤグ元首相は党内の有力派閥を率いる大物政治家で、前回総選挙落選後は大統領顧問を務めましたが、独自の政治活動を行いたいとして顧問を辞職、離党を表明します。党本部は反党行為として元首相に除名処分を科したものの、アルタンホヤグ元首相による影響力を一掃できたかどうかは、定かではありません。

 これらの政治家が離脱する中で、民主党は党幹部の刷新を図ります。4月には幹事長として39歳のバータルフー首都議会民主党議員団長を抜擢すると、5月には解任されたデルゲルマー副党首の公認にジャルガラン氏を選任。ジャルガラン氏の詳細な経歴は分かりませんが、2005年に大学卒というので、おそらく民主党の幹部の中ではかなり若い方になるのではと推測します。

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 とはいえ、それで総選挙に勝てるほど甘くはありません。むしろ、今回の総選挙に関しては、民主党は前回に負けず劣らず悪材料だらけです。

 まず、肝心の党トップが不人気です。ウランバートル限定ですが、世論調査のデータを見ると、エルデネ党首は2019年5月以来「活動が気に入らない政治家」ランキングのトップを独走しています。

 

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 加えて、総選挙の候補者決定に際し、立候補希望者からそれぞれ1億トゥグルグを集めたとの報道も繰り返されています。1億トゥグルグと言えば日本円でも380万円、物価が違うモンゴルでは、実質的にもっと大金です。

 エルデネ党首は資金集めを認めた上で、立候補者のみ徴収したこと、寄付は宣伝資金になると説明しています(現地報道)。とはいえ、立候補の権利をカネで売ったと少なからぬ有権者が受け取る恐れはあるでしょう。

 

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 さらに、候補者らも問題含みです。バータルフー幹事長らは候補者の71.4%が新人と強調、新しさをアピールしますが(現地報道)、その顔触れには既に様々な批判が寄せられています。

 まず、立候補者の中には、歌手・俳優のジャブフラン国会議員や、オヤンガ大統領顧問らが含まれています。両者ともいったんは無所属での立候補を届け出ていたのですが、後に民主党からの立候補に切り替えます。

 しかし、ジャブフラン議員はもともと無所属で前回総選挙に当選、その後長らく無所属で活動していた経緯があり、今回の「変節」には批判もあります(現地報道)。また、オヤンガ候補と合わせ、先述の1億トゥグルグを支払わずに立候補したのではないかとの疑惑や(現地報道)、急な立候補を長年の民主党への功労者に対する裏切りと非難する向きもあります(現地報道)。

 もっとも、無所属から民主党公認への切り替えは彼らだけではありません。バト=ウール元首都知事、エンフボルド元大統領顧問、バヤルツォグト元内閣官房長官といったかつての大物も、無所属立候補を届け出ながら、結局は民主党の候補となりました。

 ただ、バト=ウール氏は民主化運動の立役者ながら公判中の身、エンフボルド元大統領顧問は前回総選挙時の党首にして惨敗の責任者、バヤルツォグト元内閣官房長官はモンゴル最大の銅鉱オヨー・トルゴイ銅鉱の外資との契約を巡り非難や疑惑の矢面に立つ人物です。これでは、それなりの著名政治家を寄せ集めた感はあっても、清新さをアピールするのは無理な話です。

 他方、バヤン=ウルギー県選挙区のモラト国会議員に至っては、在任中にセクハラ疑惑があって議員辞職寸前まで追い込まれた経歴の持ち主です。最近も自らの裸や下着姿を送り付けたとの疑惑が報じられており、候補選出に疑問が寄せられています(流石にこれは貼れない……)。

 以上を考えれば、今回の総選挙は民主党には厳しいものとなるでしょう。少なくとも、与党モンゴル人民党の失策がない限り、政権奪還は極めて考えにくいというのが私の見立てです。