モンゴル国(以下「モンゴル」)大統領選挙の不定期連載シリーズ、今回は大統領選挙制度について、モンゴル国憲法を基に解説します。
1. 大統領就任は45歳になってから
モンゴル国憲法第30条第2項には、モンゴル国大統領選出の総則を示しています。これによれば、モンゴル大統領に選出可能なのは、
- 45歳以上
- モンゴルに5年以上の期間居住している
- モンゴル国民
という3つの条件があります。
なお、今回の選挙では2番目の条件が焦点となりました。モンゴル人民革命党から立候補を予定していたエンフバヤル前大統領(人民革命党党首)が選挙中央委員会から立候補が認められなかった理由の1つが、彼に5年以上のモンゴルでの居住実態がないとのことだったためです。この件については、また後日述べたいと思います。
2. 大統領選挙は4年に1回実施、再選可能なのは1度だけ
モンゴルでは大統領選挙を4年ごとに実施することになっており、現行憲法下では大統領選挙は国家大会議(国会)総選挙の翌年に行われています。現職の大統領は1回のみ再選可能と定められているため、任期は最大8年で、三選は認められていません。
3. 大統領候補は国会に議席のある政党のみ擁立可能
憲法の定めにより、大統領候補を擁立することができるのは、国家大会議に議席のある政党のみとなっています。ただし、議席のある政党が共同で統一候補を擁立することは可能です。
ここで気になるのが、無所属の国会議員の扱いです。憲法を読む限り、無所属議員が選挙直前に政党に入党するか新政党を結成し、大統領選挙を擁立することは妨げられていません。昨年選出された国会議員の中には無所属議員が1名おり、比較的注目度もあったため、この議員の動向が注目されたのですが、結局候補擁立には動かなかったようです。
4. 選挙は2段階で実施、ただし第1段階で終了することも
大統領選挙は2段階に分けて実施することになっています。ただし、アメリカのような間接選挙ではなく、国民が直接投票する選挙を、必要に応じて2回実施するということです。
第1段階では各党からの候補者に対する選挙を行い、ここで投票総数の過半数を得た候補がいれば、大統領に選出されます。しかしいずれの候補も投票総数の過半数を得ていない場合、獲得票数の最上位2名の候補者が第2段階に進みます。
第2段階では上述の2名に対して選挙を行います。よくあるパターンだと、このような決選投票では獲得票数の多い方が大統領に選出されることになりますが、モンゴルの憲法では、ここでも投票総数の過半数を得た候補が選出されると記されています。
そして、第2段階でも投票総数の過半数を得た候補がいなかった場合、再選挙を行うとあります。つまり、理論上では過半数を制した候補が現れない限り、選挙が繰り返されることになります。
ただし、1993年から現在に至るまでの現行憲法下の大統領選挙では、第1段階で投票総数の過半数を得た候補が当選しており、第2段階まで進んだ例はありません。もっとも、今回の選挙も同様になるという保証はないわけで、第2段階の選挙を実施することになった場合が注目されます。
【モンゴル大統領選挙2017】シリーズ、折を見て次回以降も書いていきます。