私は阪神間で生まれ育ちましたが、ルーツは香川県小豆島の旧内海町(現小豆島町)にあります。瀬戸内に浮かぶ島の中では淡路島に次いで大きな島ですが、多分に漏れず少子高齢化で人口は減る一方、島内の学校の統廃合も相次いでいます。島の2つの高校、小豆島高校と土庄高校も、来春での統合が決まっています。
そんな中、その小豆島高校が春の選抜高校野球に21世紀枠で選ばれました。
小豆島高校は秋の四国大会こそベスト8止まりなものの、香川県大会では神宮大会の優勝校高松商業を破って優勝した実力の持ち主、身贔屓を差し引いても選ばれる資格のあるチームです。
なくなってしまう高校の歴史を、甲子園で刻み、残すことができる……このニュースが、島の人々にどれだけの喜びと活気をもたらしたかは、私の想像を超えています。一方の私にとっては、故郷甲子園で、さらなる故郷小豆島を応援できるのです。一世一代の晴れ舞台、逃すなどあり得ない。妻ともども高知を発ち、身内とともに甲子園球場へと向かったのでした。
21日朝8時前、到着したのは小豆島高校ベンチの3塁側。ここでアルプススタンドの券を買い、応援団に加わる予定です。ところが……
アルプススタンド前はご覧の大混雑。この日は小豆島からフェリーをチャーターしての大応援団が来るとは聞いていましたが、そうはいっても甲子園の大スタンド、近畿圏以外の高校の応援団で一杯になるなどあり得ないことです。慌ててチケットの列に向かうと、係員の持つプラカードには「売切れます」の文字。30年以上甲子園で暮らした私ですが、ここまでの盛り上がりは想像のしようがありませんでした。
アルプスへの入場を待つ列は、ついにレフト側スタンド前にまで伸びていきました。このままでは、チケットを持っていても入るまでが至難の業ではないか。下手をするとアルプス近くのレフトスタンドも埋まるかも知れない。大慌てでレフト側スタンドに入り、何とか席を確保したのでした。
ところで、応援団が着ている揃いの赤いウインドブレーカーにお気づきでしょうか? これにはすべて18の背番号が入っています。赤は小豆島高校の校旗の臙脂色、18番は、17人しかいない野球部の18番目のメンバーを表しています。カープ時代の前田健太のファンではありません。
このウインドブレーカーを小豆島で頒布したところ飛ぶように売れて行ったそうで、三塁側は今まさに、赤、赤、赤、18、18、18の一団が埋め尽くしています。
ようやく入ったスタンドで、センバツの大会旗と小豆島高校の校旗を仰ぎ見ます。これだけでも、グッとくるものがあります。
小豆島高校の選手たちが入場してきました。スタンドから歓声が上がります。
アップを始める選手たち。
グランドでランニング開始。高校球児誰もが憧れる晴れ舞台、その感触を思う存分味わってほしいですね。
ベンチで準備をしていたのか、後からグランドに出てきた選手たち。
野球部員以外もサポートに来ているようで、20人近くがグランドで動き回っています。
キャッチボール開始。近くでの投げ合いから、徐々に距離を取っていきます。17人だと1人余ってしまうので、確かに誰かが加わってあげないといけません。
今日の対戦相手、釜石高校の選手と応援団が出てきました。被災地岩手からの選出校、決して戦いやすい相手ではありません。しかも、応援団はご覧の通りの大人数。甲子園を遠く離れた学校にとっては、この半分の人数を揃えるだけでも大変なはずです。それだけ地元の期待が伺えるのですが、
一方の小豆島、文字通り満員札止め……スタンドの下段はもとより、最上段まで赤に染まっています。
この日小豆島高校の応援に来たのは6,000人!その半分でも、私からすれば「多いな」と思うぐらいです。京阪神や兵庫県南部の高校でも、応援団だけでアルプスが埋まることは考えられません。よしや満員になるにしても、特に高校の関係者でもないけどふらっと入った人が結構いますし。凄いものを見た、ただただ圧倒されるのみです。
さらに聞いてみると、小豆島から来た人だけではなくて、島を離れて関西、はては関東に移った人が、応援のために駆け付けたという話もあちらこちらから聞こえてきます。
3塁側のスタンド、レフト側のスタンドを埋めているのは、島のつながり、島への思いです。
試合前のノック開始。内野陣は最初の打球に合わせ、打球方向関係なく一斉にグランドへとダイブ。一種の儀式なんでしょうね。
ノックを受ける内外野の選手。あと1分のアナウンスに促されて、1人ずつベンチへと戻っていきます。小豆島高校の歴史を創る試合が、近づいてきています。
長いエントリになりますが、後篇もぜひお読みください。