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「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

四国フィルハーモニー高知定期公演に行ってきました

 昨日かるぽーと大ホールで行われた四国フィルハーモニー高知定期公演「病気と闘う子供たちを支援するチャリティーコンサート」に行ってきました。

 

 今回の定期公演は3曲でのプログラム、メインはムソルグスキーラヴェルの「展覧会の絵」と書けば、オーケストラの演奏会ではありがちなパターンですが、オープニングとサブメインを含めると、なかなかないプログラムでした。以下、それぞれ感想を。

 

■ オープニング(1曲目):ショスタコーヴィチ「祝典序曲」

 ソ連の体制賛美曲として作曲され、20世紀のある時期、ある向きには非常に好まれた曲です。ただ作曲されたのが1954年、独裁者スターリンが死んだ翌年ということで、あっ……(察し)と思ったら、同じようなことを考えている人は結構いるようです。

 ともあれ、臆面もない曲であることは確かで、とにもかくにも外面的に快活で華やかな演奏に徹しなければいけない、深みのある表現などもってのほかな曲です(個人の感想です)。そういう点で言えば、今回の演奏はかなり頑張っていましたし、個人的には打楽器群に好感を持ったのですが、それだけに人数が不足していた感じが否めず残念でした。これはあきらかに無い物ねだりなので、オケの責任にするつもりは全くありませんが、バンダ(別働隊)の金管がいないのは良いとして、高弦が管楽器に押されていたので、もう少し人員がいれば……というのはどうしても思ってしまいました。

 

■ サブメイン(2曲目):ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4番ト長調

 ピアノ蓼沼恵美子さんと指揮者澤和樹さん、デュオとしての活動が長いそうで、独奏とオケの息は実に良く合っていたと思います。少なくとも演奏面で違和感を感じるところは全くありませんでした。

 そして、それだけに曲自体のエグさが伝わってきた、というのも率直な感想です。ベートーヴェンの作品の多くは、当時としては前衛的なはずで、この曲もまさにそう。いきなりピアノ独奏で始まったり、第3楽章のロンド主題(楽章では一番のメインとなる主題です)の調性がタイトルと合ってなかったり、初演を聞いた人は、それこそ我々が現代音楽の新作を聞かされた時のように困惑したんだろうなぁと思ってしまいました。あるいは、この曲でコケたせいで第5番「皇帝」はあんなに分かりやすく華やかで親しみやすい曲にしたのかも知れないな、とすら思ってしまいました(ま、あれもあれでアレですが……)

 ただ、エグい曲のエグさを伝えられるのも良い演奏なればこそ、というのは強調しておきたいと思います。

 

■メイン(3曲目):ムソルグスキー作曲ラヴェル編曲「展覧会の絵

 こんにちわれわれが「展覧会の絵」として最も接する機会の多いヴァージョンです。ムソルグスキーの楽譜に忠実ではない(これは事情がある)、ロシア的でないなどの批判はありますし、他にももっと取り上げられるべき魅力的な版があるのですが、それでもあの感動的なフィナーレ「キエフの大門」がある以上、この版を非難することは私にはできません。

 で、今回の演奏です。特に音の小さい部分でテンポが引きずっている感があったり、グノームがそれほどおどろおどろしくなかったり、ビドロのソロはユーフォニウムに任せられれば良かった*1とか、結果論でケチを付けようと思えば付けられます。とはいえ、バーバ・ヤガーからキエフの大門、そして終結までなだれ込む様子は圧巻の一言でした。これがためにラヴェル版を聴いているわけで(ってだけでもないですが)、一番の聴かせどころでしっかり聴かせてくれたのですから文句はありません。個人的にはバーバ・ヤガーのティンパニが敢闘賞モノでした。

 そして、アンコールは大バッハ「主よ、人の望みの喜びよ」のオーケストラ版。当然ながらバッハ死語に登場した楽器が使われているので後世の編曲ですが、誰の手によるものかは分かりません。ストコフスキー辺りな気はしますが。

 

 そういうわけで、最後は満足して終われた今回の演奏会。好演でした!

*1:楽譜では「テューバ」が担当すると指定されていますが、ラヴェルが念頭に置いていた「テューバ」はおそらく現在の楽器とは異なるのと、現在の楽器では音域が高過ぎるので、私ならユーフォニウムに担当させます。人員が見つかればですが……