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高知市から室戸岬まで(少し走って)歩いて行きました(1)高知市内を走れ!?

 

 高知大学朝倉キャンパスから室戸岬まで約90kmを歩き通すという「室戸貫歩」。4年ぶりに開催されたこの大会に、このたび思い切って参加しました。はたして制限時間内に室戸岬までたどり着けるのか?

 

 

 高知大学空手道部が主催する「室戸貫歩」。朝倉キャンパスから室戸岬まで約90kmを歩き通すという泣く子も黙る大会です。

 ただ制限時間が30時間と余裕があるのと、参加費の安さで、以前は全国各地から参加者を集めていました。

 ですが、多分に漏れず新型コロナウイルス感染症パンデミックで2020年から3年間は開催中止。そして4年間の雌伏の時期を経た今年、参加者・サポートメンバーを学内に限定する形で、ついに再開されることになったのです。

 室戸貫歩というものがある、と私が知ったのは高知で奉職が決まった年のこと。以来関心はあったものの、90kmも歩き続けられるものなのか、リタイアすることになったら恥ずかしい(そんな風に思わなくてもい構わないんでしょうが……)と、と二の足を踏んでいる間に、3年間の中止期間に入ってしまったのでした。

 しかし今年、ついに室戸貫歩再開されるという発表が出たのです。ならば一度でも挑戦しておかないと、何かと理由をつけて逃げ続けた後悔だけが残ってしまうと考え、思い切って参加することにしました。

 先程書いた通り、制限時間は30時間です。必要な表定速度は時速3km*1、一般的な歩行スピードよりちょっとぐらいなら遅くてもゴールできます。なので、余程のことがなければゴールはできるだろういう気はします。

 もっとも、90kmの歩行練習なんてできるわけがありません。多少のランニングやウォーキングはしたものの、付け焼刃にもなるのやら。ほとんどぶっつけ本番に近い状態で当日を迎えることになってしまいました。 

 

 

 受付を済ませると、連絡先や注意点の案内とともに、参加賞のタオルとSOYJOYをもらいました。荷物を減らしたいために食料は持ってこなかったので、ちょうど良かったです。これぐらいならかさばらないですし。

 

 

 開会式は予定通り8時半から。主催者と学長の挨拶と注意事項の確認があり、いったん解散になります。スタートは9時で、その5分前に集合なので、それまでに準備体操等を行っておきます。

 

 

 スタート地点、朝倉キャンパス正門前にやってきました。抜けるような青空、気温は低いと言えば低いですが、コンディションとしてはかなり良い方です。

 正門前には信号があり、ちゃんと信号を守ってスタートしないといけません。あくまで学内行事なので、交通規制などはありません。

 ただ、この信号が押ボタン式。なので、ボタンを押してから信号が青に変わるまでの時間は計れば分かります。

 というわけで、9時ちょうどに信号が青になるよう、8時59分何秒かに空手道部員がボタンを押しますアナログながらなかなか技巧的なスタート方式です。

 そして9時ちょうど、いよいよスタートです!トップグループが走りはじめたところに、私も何とか加わって走ります。

 ……って、室戸貫「歩」じゃないのか!と思った方。確かにその通りなのですが、実は室戸貫歩では「走ってはいけない」というルールはないんです。

 なので、走る人は走ります。中にはほとんど走り通す猛者もいます。私も今回の作戦上、最初は走ることにしました。

 が、振り返ってみると、一緒に走り出したのは数人程度。しかも教職員ばっかりで、 学生はそれぞれグループで連れ立って歩いています。拍子抜けしてしまったのですが、これなら意外と良い順位でゴールできるかも知れない。学生たちはどんどん遠ざかっていきます。

 ですが、ここで走っているのは「ガチ勢」です。大会参加歴の長い職員もいれば、マラソンやトレイルランの経験者もいます。そんな人たちに私がついていけるはずもなく、次第に引き離されていきます。

 

 

 はりまや交差点(安全を確認した上で撮影)。この時点で先を走る人たちの姿は見えず、歩き組もはるか後ろ、完全な独走状態になってしまいました。

 ところで、なぜ私がここで走っているのでしょうか? それは今回参加するにあたっての目標を達成するためです。その目標とは、「最初の送迎バスに乗って帰る」というものです。制限時間をフルに使うこともできますが、それでは日曜日がまるまる潰れてしまいますからね。

 この大会ではゴールした人向けに送迎バスが用意されています。高知市内まで乗り換えなしで帰れますし、何より無料なので、バスの出発時間を目標時間設定に使おうと思ったのです。

 当初は9時に第2便が運行予定で、スタートから24時間でキリが良いので、このバスに乗るのを目標にしました。ところが、後になって参加人数の都合で便数が減り、第2便の出発時間が11時に変更になったのです。

 これでだいぶ迷ったのですが、「早く帰ったらサッカーの地域チャンピオンズリーグ最終日の配信が1試合目から見られる」という不純な動機から、思い切って目標タイムの短縮を決断。第1便が出発する7時(こちらは変更なし)までのゴールインを目指すことにしたのです。

 では、どうやって22時間以内にゴールするか?私が考えたのが、高知市内はできる限り走り通す」という作戦でした。

 90キロを22時間でゴールするには、1キロを14分40秒で進む必要があります。ですが、これだけの距離を同じペースで歩き切れるわけもありません。後になればなるほど疲れは出るでしょうし、そもそも7時ちょうどに着いたとして、そのままバスに乗れるはずはないでしょう。

 というわけで、私が考えたのが、走れる間は走ることにして、「貯金」というか時間の余裕を作るということでした。朝倉キャンパスから高知市と南国市の境界まではだいたい13から14km。この程度なら走った経験がないではないし、何とかできる可能性がある、という皮算用です。

 

 

 はりまや橋を過ぎたところで、室戸までの距離を示した案内標識が目に入ります。高知に来てから3ケタ台の距離を見るのが当たり前になり、室戸まで76kmというのも普段なら大したことはないと思うところですが、自分の足でたどり着かないといけないとなると、途端に数字が重くのしかかってきます。

 

 

 さらに走って宝永町の交差点に来ましたが、距離が減ったのは1kmだけ。気が遠くなりながら、それでも走りますが、たびたび信号に引っかかります。

 続いて知寄町で信号待ちをしていると、ご婦人に話しかけられました。室戸貫歩の方かと聞かれて、よくご存知で、と答えると、前を走る人たちからお話を聞いて知ったようです。

 ちなみにこの時点で、確実に私の前にいるのは5人。歩き組に追いつかれるはずはないので、順位は推定で6位ということになります。思いもよらない上位ですが、ゴールしないと話になりません。

 

 

 知寄町3丁目。電車通りはもうすぐ終わり、いよいよ高知市内の中心部を後にします。すると今度は自転車に乗ったご婦人から応援の声を頂きました。こちらは身内の行事で勝手に走っているだけなのに、本当にありがたいことです。

 ここで応援を力に変えてさらに快走!といければカッコいいのですが、残念ながら脚は確実に重くなっていきます。市境はまだ遠いのですが、走り切る自信はどんどんなくなっていきます。そこを何とか頑張って、とは思ったものの、まだ先は長いのに無理をして、ゴールできなくなったら元も子もありません。

 

 

 右手に高須のコスモス畑が見えてきました。実習先の土佐町で見頃が終わったのを見ただけに、まだ咲いているのにはちょっと驚きました。

 信号待ちも何もないのですが、これは本当にきれいだなぁ、写真に撮っておきたいなぁと勝手に理由をつけて、脚を止めることにしました。

 そして再び走り出したのですが、思っているほど脚が出てきません。これでは市内を走り切るなど覚束なさそうなので、作戦変更です。ここで考えた「プランB」は、

  • 走れるところは走る。ただしんどくなったら無理はしない。
  • 南国市内から先も走れそうだったら走る。ただやっぱり無理はしない。
  • 信号に引っかからないよう、青信号の時間の長さを見ながら、必要だと判断したら交差点手前は走る。ただ無理な横断は絶対にしない。

 街中で時間のロスになるのが信号待ちです。クルマを運転していても、信号待ちを回避できるかどうかで、所要時間がだいぶ変わります。

 なので、交差点の多いところではなるだけ信号待ちを避け、止まらないといけない時間をできるだけ作らないことを特に意識することにしました。もちろん交通ルールを守った上でのことですが、こうすれば歩く距離も時間もそんなに長くならないでしょうし、タイムロスは結構防げるのではという見立てです。

 

 

 そうして走ったり歩いたりを繰り返しているうち、国道32号線との分岐点に来ました。ここからあと少し進めば高知市が終わり、南国市に入ります。

 案内標識を見ると、室戸までは69km。やっと70kmを切った、先は長いがひと先ずホッとします。

 もっとも、このだいぶ後になって、これがあくまで室戸まで、つまり室戸市中心部までの距離であって、室戸岬まではさらに数kmあるのを忘れていたのに気づいたわけですが。

 

 なお、南国市から先はこちらからお進みください。

 

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*1:本来鉄道用語で、出発点から到着点の間の距離を途中の停車時間も含む所要時間で割ったもの。一方で、「平均速度」というと停車時間を除外して計算することになります。