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「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

高知市から室戸岬まで(少し走って)歩いて行きました(3)安芸市で日が暮れて

 

 海岸の松並木を横目に芸西村を西から東へと渡り、安芸市にやって来ました。いよいよ室戸貫歩も佳境に入って来たようです。

 

 

 高知大学朝倉キャンパスを出発して、はや7時間以上。この間の行程は過去エントリをご覧ください。

 

www.3710920.com

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 松並木の広がる海岸線のすぐそばを通り、芸西村を西から東へ。室戸貫歩のルートの中間に位置する安芸市に入ります。するとここからはコースで最も急なアップダウン、八流坂が控えています。クルマで走る時も結構アクセルを踏まないといけない坂なのに、それを自分の足だけを頼りに登らないといけないだけに、出発前から不安を感じる場所でした。

 

 

 ただそれでも何とか登り切り、台地の上をしばらく歩きます。再び海が見えてきた辺りで、室戸まであと45kmの案内標識がありました。

 そして、これまでは安芸までの距離案内だったのが、さらに遠くの奈半利に変わっています。先は長いとはいえ、ある程度は進めたという実感が湧いてきます。

 

 

 去年まで営業していたドライブインの跡を越えると、本格的な下り坂になります。ここからは眼下に海岸線や安芸の街並み、そしてその先の岬が見える光景に魅了されるところです。

 普段ならガラス越しに見る景色を直接眺めるのですから、いつもよりさらに美しく見えるに違いない、と思われるかも知れませんが、そんな余裕ありません。

 

 

 なにせ、今目の前にいくつも突き出した岬の、いちばん奥にしていちばん長いところの先端まで、これから自分の足で行かないといけないのです。

 

 

 ここですよ、ここ。この先端までいかないとゴールがないんですよ。気が遠くなりそうです……

 萎えそうになるところをそれでも足を運んで、穴内まで降りてきました。さらに市街地に入って歩いていたところ、いきなり「高知大の学生さん、もう来られたんですか?」と話しかけられました。びっくりして、いや教員なんですけど、どうしたんですかと尋ねたら、

 「室戸岬まで行くんでしょ?新聞で見ましたよ。頑張ってくださいね」

 そうでした!室戸貫歩の記事が前の日の高知新聞に乗っていたのです。

 

www.kochinews.co.jp

 

 高知県で圧倒的なシェアを誇る高知新聞。あらためてその力を思い知りました。そしてこうしてわざわざ応援に来てくださった方がいるとは、有難いじゃあぁりませんか。こうして声を掛けてもらった以上、情けないマネはできないぞと、気持ちを入れ直します。

 

 

 球場前駅の近くまで来ました。当ブログでもたびたび登場した阪神タイガースの秋季キャンプ地、タイガース球場のすぐそばです。

 

 

 球場前の交差点を南に少し進んだところにあるカリヨン広場。土佐電鉄安芸線安芸駅跡のこの場所が、事前にもらった案内によればほぼ中間地点だそうです。

 

 

 ここで先程のスポーツドリンクのペットボトルを捨てて、しばしの休憩の上で再出発します。

 ただ、休憩してから再び歩き出そうとすると、足が固まって違和感もあり、なかなか出て行きません。それをおしてしばらく歩けば、元のペースまで上がるのですが、それまでに時間がかかります。かと言って休憩なしで歩き切るのは不可能ですし、休憩でなくても信号待ちもあれば、どこかで晩ご飯も買わないといけません。どこで休んでどこまで歩くか、ゴールまで悩むことになりそうです。

 そして日は既に傾き、気温もだいぶ下がってきました。ここからは夜の歩きに備えないといけません。かといっていきなり着込むと、さらに冷え込んだ時に打つ手がなくなるので、まずはウインドブレーカーを羽織り、体感温度や時間帯に応じて徐々に装備を増やしていくことにします。

 

 

 国道55号線に戻ると、室戸まであと40kmの案内標識に差しかかりました。室戸岬まではさらに5, 6kmはあるはずで、この辺がだいたい中間地点であることをあらためて認識します。これでまだ半分なのか……

 ここからしばらくが安芸市の中心部です。スーパーを見つけたので、補給に向かうことにしました。惣菜コーナーで焼きそばが並んでいて一瞬靡きかけたのですが、今の状態で身体が油を受け付けるか不安ですし、移動中にいちいち箸を使っていたのでは手間です。何となれば歩きながらでも食べられそうな菓子パンと安売りのスポーツドリンクを仕入れることにしました。

 

 

 安芸市の中心部を抜けて、安芸川橋にさしかかりました。スタートから8時間を過ぎ、いよいよ陽が沈んでいきます。

 

 

 10分程過ぎて、伊尾木川橋を渡ります。最後の陽光も次第に消えていき、夜になっていきます。

 目指す先の上空には、満月に近い月と宵の明星。いよいよ室戸貫歩、約90kmの徒歩行ならではの夜が始まります。

 伊尾木を出ると、道路沿いは一気に暗くなりました。ここからは懐中電灯と月明かりが頼みです。街灯は立っているところには立っていますが、ないところは本当にありません。そしてないところも少なくなく、言うなれば「稀によくある」状態です。

 ただ幸いなことに、この日は夜も晴れていて、月がまだ輝いていました。これが曇っていたり、新月だったりしたら、もっと歩きづらく、精神的にも応えたことでしょう。

 

 

 スタートから9時間ほど経ち、大山岬手前の交差点にやって来ました。ここから国道55号線は新道のトンネルで岬を一気に貫きますが、自動車専用道なので歩くことはできません。なので、ここからはかつての国道で、海の近くを歩くことになります。

 

 

 歩き出してすぐ、岬の手前にある道の駅大山につきました。大学設置のゴミ箱も置いてあります。

 ここで栄養補給もかねて長めの休憩をとろうと思ったのですが、道の駅は来年まで改装中で中には入れません。しかも付近にベンチもなく、腰かける場所を探すのに難儀しました。

 

 

 ともあれ、何とか座って補給も済ませたので、再出発です。

 すぐ近くには大山岬公園があり、こちらにはベンチが置かれていました。ここまで来ておけばよかった気もしますが、いまさら休憩を重ねるわけにも行きません。吹きさらしのベンチよりは風除けのある所の方が良かったよな、と思うことにします。

 

 

 峠を越えて、再び国道55号線に戻りました。スタートからはもうすぐ10時間になろうとしています。

 

 

 大山岬を出て1時間弱で安芸市が終わり、安田町に入ります。

 ここからしばらくは海沿いを歩くことになります。唐浜の松林は昼間なら美しいのですが、今は月に照らされて暗く映るのみ。

 さらに国道は海に近づき、堤防沿いへ。波の音も聞こえてきます。

 ただ、この状況で思うのは、いま津波が来るのだけは勘弁してくださいということです。10時間以上歩き続けた脚で、遠くの高台まで走って逃げるなんて無理です。

 

 

 安田川を渡ったところで、室戸までの距離は30kmを切りました。ただ目指すのはその先の室戸岬、残る行程は確実に30km以上あります。

 

 

 安田町にはいってからほぼ1時間、次の田野町に入ります。

 安田町も田野町も面積はかなり小さな自治体で、クルマならすぐに走り抜けます。ただそれが分かっているだけに、自分の足ではまるでゆっくりとしか先に進めない事実が心にのしかかります。

 

 

 田野町に入ってから10分で、道の駅田野駅屋に到着。もともと休憩を予定していたところです。

 ただ石造りのベンチはこの時間になるとすっかり冷えていて、腰を下ろしては耐えられずに立ち上がる連続です。何とか木のベンチを見つけたものの、いよいよ体感温度が下がっていくのを痛感します。

 ここで装備をさらに増やし、寒さ対策をして、奈半利町から室戸市室戸岬に再び歩き出しました。ただ、歩き出しの足は強張っていて、真っすぐ歩けていないのが自分でもはっきり分かるほど。ある程度歩けば身体が慣れるのは先程と同じなものの、それもいつまでのことか。一気に不安が増していきます。

 果たして、本当に室戸岬までたどり着けるのか?次回エントリがその答えです。

 

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