第23回JFLも残り6節となりました。我らが高知ユナイテッドSCは「門番」ソニー仙台をアウェーで破り、残留に向け前進しているところです。では、その残留争いの今後はいかに?今回は「可能勝ち点グラフ」から検討してみたいと思います。
残留争いの行方を考えるには、そもそもの降格条件を知らないといけません。その上で、高知をはじめ各チームが残留ラインから見てどの辺りにいるのか、どうすれば残留を確定できるのかを調べる必要があります。
というわけで、以下順に見ていきましょう。
1. まずは降格条件をおさらい
JFLを見るようになって間もない方もいらっしゃると思うので確認すると、JFLはアマチュア及びJリーグ入りを目指すクラブによる全国リーグです。
そして、その下部には全国9つのエリアに分かれた地域リーグがあり、その優勝者と一定の条件を満たした12チームによる地域チャンピオンズリーグ(以下「地域CL」)の優勝チームと2位チームにJFL昇格権が与えられます。
ただし、昇格の意思がないチームが2位以内に入った場合、無理に昇格は行われません。さらに3位以下の繰り上げはなく、昇格チームが減ることになります。
一方、例年ならJFLのうちリーグ戦下位2チームが降格の対象になるのですが、今季のJFLは昨年より1チーム多い17チームが参戦しており、来季は16チームに戻す必要があります。
また地域リーグもCOVID-19の煽りで、リーグによって変則開催や途中打ち切りもあったりしたためか、昇格条件も例年とは異なっています。
なので、今季は降格条件も例年とは異なります。これらについて、JFL公式では大会方式の解説ページがあり、その「JFL・地域サッカーリーグチームの入れ替え」のところで示されています。
J3入りを希望するクラブ、あるいは地域リーグからJFL入りを希望するクラブの状況によって、条件が変わってくるのが複雑です。
そこで、順位別に整理してみると、
- 1~14位:残留(J3ライセンスを有するチームで4位以内に入ったうちの上位2チームはJ3昇格)
- 15位・16位:入れ替え戦または残留
- 17位:自動降格または入れ替え戦(地域CLの2位以内にJFL昇格意思のないチームが入った場合、入れ替え戦なしで残留の可能性あり)
以上のようになります。
ということは、どれだけ状況が変わろうが14位以内のチームは降格対象にはならないわけです。なので、14位以内に入ることが残留の十分条件となりますし、残留を目指すチームの目標になります。
では、気になる残留争いの状況はどうなっているのか?次から見ていきましょう。
2. 第28節終了時点の順位
まずは10月31日、第28節が終わった時点での順位表を確認します。
優勝争いはHONDAといわきの2チームにほぼ絞られました。いわきの方が残り試合が1つ多い分、現状は有利と言えるでしょう。
ただ、目下の問題となるのはあくまで残留争い、何より高知ユナイテッドSCの残留の可能性です。その高知は勝ち点32で13位、順位からすれば安穏とはしていられません。
さらに降格圏を見ていくと、17位のFC刈谷が勝ち点17。16位は東京武蔵野ユナイテッドFCで勝ち点20、15位はホンダロックSCで勝ち点22。それぞれ、高知との勝ち点差は15、12、10ですから、差があると言えばあります。
とはいえ、残り試合の展開次第では、当然ながら順位が変わります。では、どこまで勝ち点を積めば残留を確実にできるのか?その理論値について、当方で作成した「最多可能勝ち点グラフ」を基に見てみましょう。
3. 最多可能勝ち点グラフ(10月31日終了時点から更新開始)
残留圏内を確実にするためにはどうすれば良いか?今回のJFLで言えば、14位以内に確実に入るためには、どうすれば良いか?
理屈で言えば、今後の残り試合で各チームが積み上げられる最大限の勝ち点を計算して、低い順に4番目か、それより上になれば良いのです。
ただ、今季はチーム数が奇数なので、各節終了時の試合消化数にズレが出てきます。そのズレによって、各時点の順位と、以後の試合で積み上げ可能な勝ち点の並びは必ずしも一致しません*1。
したがって、各チームが積み上げ可能な最も多い勝ち点の順位は、各時点の順位とは別途算出しないといけないのです。
そこで、今回はその順位をグラフ化してみました。つまり、全17チームが積み上げ可能な勝ち点を計算した結果から、「最多可能勝ち点グラフ」を作成してみました。
「最多可能勝ち点」とは長いですが、他の言い方が思いつかなかったのです(汗)。野球なら「クリンチナンバー」となるでしょうが、サッカーの場合の用語を知らないもので……
グラフはGoogleスプレッドシートで作成しました。リンクを下記に示します。
なお、グラフは10月31日終了時点から徐々に更新しています。この間、自動降格や入れ替え戦の条件が変わって来ることがあるため、目安となるラインにも変化を反映するようにしております(10月31日時点での見通しは後述)。
第28節終了時点で各チームの最多可能勝ち点を計算すると、最も低いのが17位FC刈谷です。現状の勝ち点は17、さらに今後6試合を残しており、理論上勝ち点6×3=18を積み上げられるので、最多可能勝ち点は35になります。
また、勝ち点を最大限積み上げても入れ替え戦対象となる15位、つまりは下から3つ目のチームは、ホンダロックSCになります。最多可能勝ち点は40です。
つまり、残留を確実にするには41以上の勝ち点、自動降格を完全に回避するには勝ち点を36まで積めば良いことになります。
その上で高知ユナイテッドSCを見ると、現状の勝ち点は32です。ということは、高知は第28節終了時点から勝ち点9を積み上れば残留確定となります。
付け加えると、勝ち点4が積み上がれば最下位、そして当初条件での自動降格回避です。ただしこの値はFC刈谷の成績にも影響されます。具体的には、次節で高知が勝てば刈谷の引き分け以下、高知が引き分けなら刈谷負けで自動降格回避が確定します。
ただし、左記に見た通り、残留争いの行方は順位以外の要因でも変わってきます。そのような変動要因の現状について、次に見てみましょう。
4. 残留圏の変動要因(J3入り、JFL昇格意向)
残留圏の枠が変わるのは、(1)J3入りのチームが出てきた場合(JFL最終成績で4位以内、かつJリーグ百年構想クラブの間で2位以内)、(2)地域CLで上位2チームにJFL昇格の意思がないチームが入った場合の2パターンがあります。なので、これらが現実に起きるかどうかも重要です。
まず(1)は最大2チーム。現時点では1チームが見込まれます。第28節終了時点で首位のいわきFCで、早くも次節で4位以内を確定する可能性があります。
他のチームは最多可能勝ち点で4位(第28節終了時点での順位3位)のFCティアモ枚方から4以上の差があります*2。しかも、「Jリーグ百年構想クラブの間で2位以内」という条件を満たすためには、今季はJ3ライセンス申請を見送ったものの、Jリーグ百年構想クラブのヴェルスパ大分を上回らなければなりません。となると、今季でのJ3入りはまだ見通せない状況です。
また(2)についてですが、三菱水島FCが第24回JFLへの昇格申請を〆切までに提出しなかったことが分かりました。
そのため、水島が地域CLで2位以内に入った場合、JFLへの昇格はありません。したがって、その場合は昇格チームが1つ減るため、降格圏は狭まります。
ただし、地域CLは先述の通り12チームが参加、1次リーグと決勝リーグのある狭き門です。現時点でどのチームが2位以内に入るかは全くの未知数です。
以上を踏まえれば、現時点で言えば、1チームがJ3入りチームを果たし、15位までが残留、16位と17位が入れ替え戦対象となるシナリオが最有力と言えるでしょう。
そうなると、残留争いはだいぶ楽になります。最悪でも自動降格はなくなり、入れ替え戦に望みを託すことができます。
とはいえ、勝負事は何が起きるか分かりません。あくまで目指すべきは14位以内の残留確定、さらには順位を1つでも上げること。門番相手の連戦で勝ち点を4つ稼げた高知ユナイテッドSC、不可能ではないはずです。残る5試合、目が離せません!