山と木々と草、そして海に囲まれた佐賀公園駅に降り立つと、待っていたのは真夏の容赦ない日差しと熱気でした。
窪川行の普通列車が駅を去っていきます。車体には宿毛の冬の風物詩、ダルマ夕日が描かれ、車内は冷房が利いて風鈴の鳴る車両を1人降りて、夏の高知の現実と向き合います。
細いホームの中央にある、海を背にしたベンチ。背の高い木の壁と屋根が、強烈な日差しから守ってくれます。
海のすぐそばにある駅の標高は海抜32メートル。とはいえ、この標高でも事南海トラフ地震発生となったら安心できる気がしません。
駅のそばまで迫る海。防波堤の上にあるのは、小さな灯台でしょうか。
海岸線伝いに線路と国道が併走するこの辺り。道の向こうには、太平洋を望む休憩所が置かれています。とはいえこの暑さ、屋根の下ですら休む人はいません。
駅の向こうには佐賀公園、正式には土佐西南大規模公園の佐賀地区。太平洋の眺望は駅から見るより素晴らしいのでしょうが、時間もなければ、この暑さの中を歩き回る気にもなれないので、今回はパスします。
とはいえ、駅の階段ぐらいは降りてみます。
この辺りのローカル駅には珍しく、車いす用のスロープが設けられています。階段とスロープを降りてすぐ横にはバス停がありますが、来るのは1日3本だけです。
太平洋のイラストが描かれたベンチの外壁が、通りかかる人の目を惹きます。
そばにある駅名板は、珍しくホームとは反対側にも駅名が書かれています。駅舎もない小さな駅で、その存在と名を世に知らせるものは、このぐらいしかありません。
駅のそばを走る中村街道、国道56号線。この辺りから海沿いのルートが続きます。曲がりくねった一般道ですが、高速道路建設が事業化すらままならない中、今日も多くの車が駆け抜けていきます。
信号の先が太平洋。ただ潮騒の音が聞こえてくるのは、次々と車が走り去る音がたまに途絶えたときです。
駅に戻ってきました。相変わらず強い日差しの中ですが、海からの心地よい風が暑さをだいぶ和らげてくれます。
駅の中村・宿毛側はすぐさまトンネル。国道よりも陸の側を通る中村線は、山を貫けるところは貫いていきます。
窪川方面も、カーブの先で線路はトンネルの中へと消えていきます。さらにいくつかトンネルを抜けた先に、佐賀の街が広がります。
トンネルを抜け出て、中村行がやって来ました。カーブで身体を傾けながら、ディーゼル音を快調に響かせています。
駅に到着した列車。停車したかと思うと、外の暑い空気が入るのはかなわんとばかりにそそくさとドアを閉め、再び駆け出していきます。