太平洋沿いに東北から西南に伸びる黒潮町を縦断する土佐くろしお鉄道中村線。その町内の西南側最後の駅、西大方駅に降り立ちました。
全て木で作られた、中村線独特の自立型駅名版。ただ、多くの駅がキャッチコピーを持つのに対し、西大方駅にはありません。
旧中村市と旧大方町の間にある谷あいの駅。すぐ隣の国道を車は次から次へと行き交いますが、付近の集落自体は大きくありません。
駅の反対側は田畑もなく、すぐそばまでが林です。増してこの季節、草が生い茂っては迫っています。
土佐入野から窪川方面。一駅先は海沿いのはずですが、そのようにはなかなか見えません。
反対側も山々にさえぎられ、線路は上りながら緑の中に消えていきます。そしてその先を抜けて下りていけば、中村の街が見えてきます。
棒線駅のホームに向かうのは、簡素な階段1つだけ。
割合新しげな自転車置き場はほとんどが空き。暑い日の暑い時間、自転車と列車を使う人はそういないようです。
国道56号線の案内標識。中村から高知への道は始まったばかり、あと100キロ以上のロングドライブが待っています。
峠の手前の区間ながら、線路には津波浸水予想区域の標識。付近の川を遡って津波が押し寄せるのかも知れませんが、来たるべき南海トラフ地震とは、どれほど恐るべきものなのか……
いかにも戦後の国鉄ローカル線の延伸区間に置かれた駅と言えそうな、ほとんどコンクリと鉄骨だけの、装飾も何もないホーム。それでも明るい空色に塗られた柵が、濃色の多い風景に彩りを添えています。
駅に戻ると、アンパンマン列車がやってきました。
通過のアナウンスも何もなく、中村行の特急南風が高速で駅を飛ばしていきました。
終着駅についた特急と入れ替わりに、今度は高知行の特急あしずりが走ってきます。
たった2両だけのディーゼル特急。都会では信じられないほどの存在かも知れませんが、ともあれ軽快にホームを駆け抜けていきます。
僅かの間に走り去っていった特急あしずり号高知行。轟音が消えると、再び付近はたびたび通る車の音が聴こえるぐらいになります。
しばらくして、またも聞こえてきたディーゼル音は、窪川行の普通列車。この列車に乗ってしばらくすると、また太平洋が待っています。