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「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

シリーズ土佐の駅(140)土佐佐賀駅(土佐くろしお鉄道中村線)

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 高知県黒潮町。名前を見れば紛うことなき海の町ですが、窪川からこの町に入った土佐くろしお鉄道中村線は、しばらく山の中から谷あいの集落を走っていきます。ようやく海の雰囲気が感じられるのは、この土佐佐賀駅の辺りからです。

 

 

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 土佐清水市のラッピング列車が、中村に向けて発車しました。ここから少し走ってトンネルを抜ければ、ようやく左手に太平洋が見えます。

 

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 駅員がいなくなった改札。10年以上前の案内が今も残っています。

 

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 次の列車まで間が空くと、地方の駅はすぐに人の姿が無くなります。ただ、この駅は珍しく奥の方で灯りがともっています。

 

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 外に出てみると、コーヒーショップの看板がありました。駅の中に入って、営業中のようです。扱いとしては無人駅、切符の販売などの委託も行われていない土佐佐賀駅ですが、朝早い時間この時間でも、人の気配があります。

 

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 駅舎は鉄筋コンクリート平屋建て。地域の特色だなんだを一切考えずとも何とかなった時代の代物とでも言うべき作りです。

 

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 電灯のカバーに「土佐佐賀駅」と記しただけの駅名標。とにかく鉄道を延伸していた時代、似たように取って付けただけのものが、全国各地のローカル線にできたのかも知れません。もっとも、そのうち残っているものが今どれだけあるかは分かりませんが。

 

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 駅前の観光案内。ここは黒潮町が誕生するまでは、佐賀町の玄関口でした。鉄道名こそ区別のために土佐を冠していますが、地名としてはあくまで佐賀です。

 

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 佐賀駅のバス停。あくまで土佐佐賀駅とは書いていません。ただ、だからと言って西鉄の天神バスターミナルや福岡空港に向かう高速バスがあるわけではなく、時刻表には中村へのバスが1日3本載っているのみです。

 

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 上下の線路に挟まれた1本だけのホーム。強くなった雨に打たれながら、次の列車が行き違うのを待っています。

 

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  ホームに出て窪川方面へは、内陸のルートが続きます。左手に寄って来た四万十川としばらく併走し、二手に分かれたところで、終点の窪川が近づいてきます。

 

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 中村方面に見えるのは、国道56号線の横浜トンネル。同じ山を鉄道もトンネルで抜けると、その先に太平洋が待っています。

 

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 駅の辺りは旧佐賀町中心街の西の端。この近くにはかつて佐賀町役場もあり、今も黒潮町の支所や商工会の支部などが残っています。

 

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 できてからかなり年月を経たであろう看板では、旧佐賀町・黒潮町であまりに有名なカツオだけではなく、山の恵みも掲げられています。

 そして、キャッチフレーズに「きのこの里」。「山」ではなく「里」です。私の脳裏には、かつて幾度となく目にしてきた、きのこ・たけのこ戦争の風景が蘇りました。

 幾度となく繰り返されてきた、「きのこの山」支持者と「たけのこの里」支持者の衝突。不寛容と独善が凄惨と残虐をもたらし、復讐がさらなる復讐を呼ぶ無限の連鎖。しかし、高知のさらに西南まで来てみると、そこには悲惨な戦争とは別の世界が広がっていました。

 

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 しばらくしてやって来た窪川行は、黒潮町のラッピング列車。普段なら1両だけのはずですが、後ろにダルマ夕日の車両がつながれています。しかも後ろの車両は締め切って回送扱い。

 

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 土佐佐賀は多くの列車が行き違いを行う駅。ほどなく中村方面への列車もやって来ました。果ての見えないきのこ・たけのこの争いにも、いつか弁証的な終結が来るという一縷の望みとともに、佐賀を後にしました。