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「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

シリーズ土佐の駅(147)土佐白浜駅(土佐くろしお鉄道中村線)

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 その名を見るからに、海岸の広い砂浜沿いにありそうな土佐白浜駅。ただ降り立ってみると、海こそ見えるものの、トンネルとトンネル、草木に囲まれた中の駅です。

 

 

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 窪川行の普通列車が吸い込まれていったトンネル。ここから海まで崖が迫る区間を、さらにトンネルをいくつもくぐりながら走っていきます。

 

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 中村・宿毛方面も、すぐに山が迫ります。こちらはしばらく海沿いを走ると、いったん海と別れて岬をショートカットしていきます。

 

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 「潮騒が聞える」という土佐白浜駅の駅名板。ただ、どうもホームの反対側、つまりは山側から水音が聴こえてきています。

 

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 その山側は、鬱蒼とした草木に覆われていて、ここからでは様子がまるで分りません。そして、そんなところにも関わらず、津波への警戒標識が立っていたりします。

 

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 ホームの向こうを見ると、白浜という地名のわりにごつごつした海岸線が、小さな平地と国道を隔てたところに見えています。あるいは、砂浜は少し離れたところにあるのかも知れません。

 そして、確かにこの距離なら、残念ながら大地震ともあれば津波が駅まで押し寄せても不思議はありません。

 

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 駅の標示を見ると、ホームは海抜20メートルを超すところにあるにもかかわらず、最大の津波がくればあっさり沈んでしまうと書かれています。

 土佐白浜駅があるのは黒潮町、最大津波予測高が34メートルなだけに、このぐらいでは意外感も驚きもないのが率直なところです。我ながら、妙なところで高知に慣らされてしまったものだと思うものです。

 

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 ホームからの階段を降りると、小さな待合所がありました。

 三方の壁はコンクリートブロック、屋根はトタン、およそデザインという言葉からは対極にある、簡易の極みとでも言うべき作りです。

 

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 その壁を見ると、駅から避難所への経路が書いてありました。3分歩いた先で海抜は40メートル弱、これなら何とか助かりそうです。これでも「何とか」と言わざるを得ない気がするのが正直なところですが。

 

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 待合所の右手を見ると、地図にも描いて避難経路が山に向かっています。コンクリートで舗装され、手すりにもなる柵ができていて、傍らには太陽光発電のライトも設けられています。

 

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 避難経路を上がっていくと、線路の真上に出ました。こうして見ると、トンネルとトンネルのわずかの間に駅が挟まっているのが分かります。

 

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 経路の途中には防災倉庫も設置されています。これだけ草が生えると、倉庫から物を出すのが大変そうですが。

 

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 さらに少し歩くと、広まった場所に出てきました。低木は何本かあるものの、一集落とローカル線の普通の乗客ぐらいなら何とか収まるかというぐらいの土地です。大地震が来てとにかく津波から逃げないといけない、避難所だとか何だとか言っていられない時に、駅の山にあるこの場所が、命を守る砦になります。

 

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 相変わらず水音が聞こえてくるので、その元を探し出しました。川というより小さな水路ですが、晴れた日にこれだけの水量があります。大雨でも降ったらどうなるのか、とふと思います。

 

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 来た道を引き返し、駅の近くまで戻ってきました。相変わらず視界は草木であらかた遮られていますが、駅があるのは辛うじて分かります。

 

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 海沿いの小さな土地にある、山と林と草に囲まれた、駅舎もない小さな無人駅。相変わらず水音だけが流れてきます。

 

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 微かなエンジン音が聴こえてきました。ほどなく、トンネルから列車が姿を現します。

 

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 宿毛市のキャラクター、はなちゃんが描かれた中村行の単行ワンマン列車。この時間には珍しいであろう乗客を乗せると、そそくさと駅を後にしていきました。