「絶景!土讃線秘境トロッコ」号は間もなく琴平駅を発車。坪尻まではトロッコ車両の後ろについた2号車に乗車します。
前にも書きましたが、車両は元特急用。同じ形式で現在も特急運用されているものもありますし、トロッコ列車自体は特急でも急行でもないので、車内設備としては十分です。
ただ大問題なのが、座席番号の振り方!1号車のトロッコ車両と2号車で大きく違うのです。
この列車は全席指定席で、指定券では1号車と2号車で同じ番号の座席が指定されます。例えば、琴平~大歩危間で1番A席の指定を受けると、2号車も1号車も1番A席に座ることになり、トロッコ車両に乗車可能な坪尻~大歩危間はどちらの車両に乗っても構いません。
ただ、1号車のトロッコ車両では、テーブル単位、つまり1つのテーブルを囲む形で、同じ番号のA席からD席が設定されているのに対し、2号車ではJRの一般的な指定席車両同様、車両の左手から右手にA席からD席が設定されています。これで何が起きるかというと、1号車のトロッコ車両ではA席とD席が同じテーブルで向かい合わせになるのですが、2号車に乗っている間は、B席とC席を挟んで車両両端の窓側席に座ることになり、離れ離れになるのです。この点は何とかならんのか、と思わずにはいられませんでした。
とにもかくにも着席すると、各席のシートポケットに沿線案内図が載っていました。表裏1枚になっていて、一方が琴平から阿波池田、もう一方が阿波池田から大歩危までの案内です。
いかにもなイラストと案の定の注記。まぁ、よくあることです。
ともあれ、トロッコ列車は琴平を発車。次第に山の中に入っていき、長いトンネルを抜けて徳島県に入ります。そして本線から逸れた引き込み線に入ったところで一旦停止。ここが坪尻駅のあるスイッチバックのポイントです。
進行方向が変わり、本線を渡って反対側にある坪尻駅へ。車窓から一瞬見えた渓谷の景色は、秋真っ盛りの彩色です。
列車は坪尻駅に到着しました。日本有数の秘境駅として有名になったこの駅に、進行方向転換もかねて、しばらく停車します。
坪尻駅は徳島県西北部の山の中にある駅です。周辺には集落も舗装道も何もない、まったくもって山の中で、日本有数の秘境駅の1つとされています。
この駅はもともと上下列車の行き違いのために設けられた信号所でした。ただし急な坂の途中にあるため、本線にそのまま駅を設けると、登り坂の途中で列車が発車できなくなる恐れがあります(今のディーゼルカーなら問題ないでしょうが、昔は坂に弱い蒸気機関車が列車や貨車を引っ張っていたのです)。そのため、行き止まり式の平坦な側線とホームを設けて、そこで列車が止まるようにしたのです。
こうすると、通過する列車はホームを気にせず、スピードを落とさないまま通過できます。反面、行き止まりのホームが1本しかないことから、一方に向かう列車が停車すると、もう一方に向かう列車が入れなくなるため、上下列車が同時に停車することはできません。
最近JR四国の駅で増えてきたらぶらぶベンチ。学校の近くなら生徒同士で座ったりするんでしょうが、このベンチが本来の目的を果たすには当然ながら人間が2人必要なわけで、イベントでもない限り、この駅ではそう簡単ではありません。
駅舎のホーム側に、こんな看板が掲げられていました。心が和みますが、この駅を出て外のどこかに向かうとなったら、むしろその方が疲れる気もします。
小さな駅舎の中。秘境駅の雰囲気に魅せられた人々による写真やメディア報道、付近の観光ポスター等が、壁一面に貼りつくされています。
通貨列車の方が多い時刻表。上りと下りとで、停車する列車の本数が違うのは、普通でも行き違いの都合などで、通過する列車があるためです。
古い木造の駅舎。こうも利用客がいないと、放っておかれて朽ちてはしまわないか心配になりますが、そういうこともなく維持できています。
四国の山の中はどこもマムシの危険があります。マムシ注意の看板は、お約束というかあるあるというか、定番のようなものです。
そんな山の中でも、植樹をしようという人はいます。こちらは駅開業60周年の植樹です。
駅の北側には、桜の木が植樹されています。
遠くアメリカはオレゴン州からこんなところまで……本当にご苦労様です。
はたして参加者がどのような感想を持ったのか、是非とも聞いてみたいものです。
向こうからエンジン音が聞こえてきました。特急が通過していきます。慌ててカメラを向けたのですが、失敗……
駅の南側に来ると、踏切がありました。踏切ということは、これを渡ってどこかにいく道があるか、昔あったということでしょう。
踏切の反対側。観光列車なので当たり前と言えば当たり前ですが、この踏切から山を分け入っていこうという人はおらず、写真撮影のために線路の反対側に行く人が利用するばかりでした。
踏切のそばから坪尻駅を撮ってみました。どうみても山の中です。
これが観光列車で賑わっているからいいようなものの、鈍行だったとしたら駅に人影などほぼ期待できないのです。
列車の出る時間が近づいたので、ホームに戻ります。とはいえ、2号車に戻る人はほとんどなく、いたとしても置いていた荷物を取って移動していきます。