モンゴル国民に二重国籍を認める法律を制定する考えをムンフオルギル外相が明らかにしたことが、モンゴルの報道機関で報じられています。モンゴルと日本では事情が異なる面はもちろんありますが、参考までに取り上げてみます。
この報道は複数の報道機関でなされていますが、ひとまずモンゴル大手紙の1つウドゥリーン・ソニン(英語で「デイリー・ニュース」)紙の報道を見てみます。リンク先は下記の通りです。
ここで、リンク先に示された報道内容の日本語訳を示します。
二重国籍を認める法律ができる
2000年から現在までで、外国で4,400人のモンゴル人の子どもが生まれているという研究がある。生まれた国の法律によって、子どもたちはその国の国籍を得ることができる一方、両親の所属に従ってモンゴル国民になる権利もある。しかし、我が国(訳注:モンゴル)は二重国籍を認めていなかった。このため、在外モンゴル人130名余りが、国籍の問題を解決する法的環境を整えるべきとの要請を、対外関係省にたびたび行っていた。
これに伴い、モンゴル国の国家安全保障を考慮しつつ、二重国籍を認める法律を設けて問題を解決するとの件に関して、ムンフオルギル外相が語った。
外相は「『祖国とは行き来があり、きょうだいともよく会っており、モンゴルと関わりを持つためにモンゴル国籍を残したい』という希望は、在外モンゴル人の多くが明らかにしています。モンゴル国籍に関する法律では、我が国は二重国籍を認めていません。しかし、望むと望まないにかかわらず、二重国籍は生じます。例えば、アメリカでモンゴル人の両親から誕生した場合、(訳注:アメリカ国籍が得られるのと同時に)生まれたのがどこであろうとモンゴル国籍になります。こうして、法を犯さないで二重国籍が生じるのです。このため、この問題を解決するために多くの方法が提示されています。この問題に関して、モンゴル大統領が上程した法案があります。間もなく「プロの内閣」(訳注:現内閣のキャッチコピー)が二重国籍を取り扱う法案を作成し、上程します。この問題に関する解決策を、このようにまとめたいと思います」と語った。
モンゴルの場合、外国(特に韓国)に出稼ぎに行ったり、それ以外にも留学等で長期にわたり国を離れる国民が少なからず存在しています。外相が語った法案の構想も、そのような在外モンゴル人の権利保護を主に目的とするものと言えるでしょう。
もっとも、ここではあくまで外相の発言が取り上げられただけです。見出しはあたかもモンゴルで二重国籍を認める法律がすぐできるような書き方ですが、実際に上程され、審議されるのは先の話ですし、本当にそのような法律ができるかどうかは、まだ分からないと考えるべきでしょう。
とはいえ、外相が国籍の問題について、「望むと望まないにかかわらず、二重国籍は生じます」として、二重国籍を持つ当の本人が責められるべきではないという内容の発言を行った点は、注目に値すると思った次第です。