立命館大学産業社会学部創設50周年記念学術叢書として『ポスト工業社会における東アジアの課題』がこのほど刊行、拙稿「東アジアにおける排外意識の比較分析」が掲載されました。
本書は私の古巣、立命館大学産業社会学部が創設50周年を記念して刊行した学術叢書(シリーズ)の1冊です。私は第2部「東アジアの比較分析」のうち最初の第3章を分担し、モンゴルを含む東アジア諸国・地域における排外意識について、国際調査データを用いた比較分析の結果について執筆しました。
本稿の趣旨を簡単にだけ説明しますと、人種・宗教・言語が異なる人々、近年ヨーロッパを中心に喫緊の課題となっている移民や外国人労働者という、異なる文化的背景を持つ人々に対する排除的な意識について、東アジアの各国・地域で暮らす「普通の」人々の意識を探ろうとする試みです。
同時に、本稿はモンゴルを東アジア社会の1つとして位置づける試みの1つです。遊牧のイメージが強いモンゴルはどうしても「特殊な」社会として捉えられがちですが、その特殊性があまりに自明のものとして受け入れられているがために、どう「特殊」なのか、さらに東アジアに普遍的な特徴を共有する部分が本当にないのか、という議論がなおざりにされてきてはいないでしょうか。だとすれば、そのような状態は、モンゴル社会を理解する上で決して有益とは思えません。
さらに、現在のモンゴルが政治・経済的にも東アジアの一員となっている(と私は理解している)以上、モンゴルを含めた東アジア、という設定の下で議論を行うことで、今度は東アジアで共通のもの、当たり前の共通点と思っていることを問い直すこともできるのではないか、とも思っています。大きく言えば、モンゴルを含めた東アジア研究は、モンゴルのみならず東アジアという、われわれが生きる空間の再検討につながる可能性を秘めたものであると、私は考えています。
もっとも、このような私の目論見がどの程度達成できたのか、さらにはそもそもこの目論見自体が正当なものなのかは、皆さんの判断を仰がなければなりません。決して安い本ではないので、簡単に買えとは言えないのですが、お近くの図書館にぜひ相談していただければありがたいです。
なお、本書はミネルヴァ書房より刊行。価格等、本書の詳細については、下記のリンクをご覧ください。