アメリカで書かれたサービス・ラーニングのテキストの邦訳『市民参画とサービス・ラーニング:学問領域や文化の壁を乗り越えて学びたい学生のために』が刊行されました。当方も一部の翻訳を担当しております。
今回刊行したのは、アメリカで刊行されたLearning through Serving: A Student Guidebook for Service-Learning and Civic Engagement across Academic Disciplines and Cultural Communitiesの第2版です。もともとはサービス・ラーニングやCBL(コミュニティ・ベースド・ラーニング、地域連携型教育)に参加する大学生向けのテキストですが、これらの教育プログラムに携わる教員・事務職員にも参考になるのではと思います。
本書は4部構成になっています。具体的には、サービス・ラーニングやCBLの基礎的な理解や準備(第1部)、学習過程で求められるチーム活動と、地域社会や異なる文化を持つ人々との関わり方(第2部)、地域社会での体験を個人・チームでどう理解するか、どのように省察する/振り返るか(第3部)、そのような体験がもたらした成果をどう評価するか(第4部)から成り、教育プログラムのサイクルを一通りカバーしています。
当方はこのうち、第4部に含まれる第13章を担当しました。当初の方針もあり、なるだけ意訳したくなるところを踏みとどまるつもりで翻訳作業に臨んだのですが、その結果、逆に文章が非常に硬くなってしまいました(汗)
また、冒頭にも書いた通り、本書はアメリカの大学生向けのテキストです。加えて、理論モデルに関する記述もままあります。これらの点は、読んでいて取っ付きにくさを感じられるかも知れません。
ですが、だからこそ日本における取り組みだけでは見つからない発見もあるのではないかと思います。
特に、本書で「市民参画」が掲げられている点は是非注目していただければと思います。(ごく短期間とはいえ)アメリカでサービス・ラーニングやCBLについて学んで思ったのは、これらの背景に、市民社会を作り上げるとともに、より良くするために考え、社会に働きかける主体作りという目的意識があることでした。この点、日本ではあまり伝わっていないのでは?という気もするので、ここであえて言及した次第です。
学生や生徒が学外に出て、住民の方々や企業・組織等、さまざまな主体とともに活動を行うことは、いまや全く珍しいものではなくなりました。そんな中で考えるべきは、この学びの在り方が、学生・生徒や地域社会の成長や変革にどうつながるかです。本書がその一助となれば幸いです。
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