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「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

ニコラス・ケイジ氏が購入した恐竜の化石がモンゴルからの不法輸出品だったことがモンゴルであまり報じられてなさげな件

 あのニコラス・ケイジ氏が購入した恐竜の化石がモンゴルから不法に輸出されたものだったという事件が昨日世界中で報じられています。モンゴル屋としては気にしないわけにはまいりません。

 

 まずはどういう状況なのか、CNNの日本語サイトで確認してみましょう。

 

www.cnn.co.jp

 

 他にも報道はありますが、ケイジ氏が不法な品とは知らずに購入したこと、化石をモンゴルに返還する意思がある点ではほぼ共通しているようです。

 一方で、モンゴルからすれば不法輸出の被害に遭ったわけで、さぞセンセーショナルに報じているはず……と思って、今朝から新聞社のサイトやニュースサイトをいろいろ当たってみました。

 が、どうも扱いが小さい。サイトによってはそもそも記事がないところもありますし、上がっていても短文のみのところもあります。

 そんな中で詳しく報じているのが、"Gogo medee"(ゴー・ゴー・ニュース)というサイトのこの記事です。

 

news.gogo.mn

 

 ただこれ、ガーディアンによる下記の報道の抄訳なようです。なんで、日本語訳をわざわざつける気にならないんです。オリジナルな報じ方ではないですし。

 

www.theguardian.com

 

 そういうわけで、報道から判断する限り、この件はモンゴルではあまり騒がれているようには思えません。

 だとすればなぜなのか?仮説として思いつくものはあります。まず、ケイジ氏自身が化石を盗んだわけではないことや、早々にモンゴルへの返還に同意したことで、世論の怒りに火がつくには至らなかったとも考えられます。また、嫌な言い方になりますが、アメリカの俳優だからかえって騒ぎにならないという言い方もできます。一般的にモンゴルではアメリカに対して好意的な観方がある反面、日本よりはるかに反中意識が強いので、化石を買ったのが中国人だったら、モンゴルのナショナリズムを大いに刺激した可能性は十分あるのです。

 以上はあくまで仮説ですから、本当にそうなのかどうかは検証が必要です。ただ、現時点でこの事件がモンゴルで騒ぎになる見込みは低い、というのが私の観方です。

 ただし、この化石は正確にはティラノサウルスと似てはいますが、タルボサウルス・バタールという恐竜のもので、これはモンゴル国でしか発掘されないという話です。化石がタルボサウルス・バタールのものと分かっていれば、モンゴルからの出土品というのも分かるわけです。

 となれば、モンゴルが化石の国外持ち出しを禁止ている以上、それが盗品である可能性は十分考慮できたはずだ、という意見もあるでしょう。その場合、ケイジ氏が100%落ち度無し、と言えない可能性も無くはありません。ただし、タルボサウルス・バタールの化石であることを知らずに、例えばティラノサウルスのつもりで購入したというのも考えられますので、この辺は今後事実が明らかになるのを待つしかありません。

 ともあれ、現時点ではモンゴルはこの件に関して意外に静かである、とは言えそうです。もっとも、そんなことを言っていると予想外のところから火がついたりするのがモンゴルなので、一応の注意は必要ですが。

 

(参考)FPDM: 恐竜図鑑 - タルボサウルス・バタール