例年なら3月末は休みを取って遠出するのですが、今年は県外にすら出られません。その憂さを晴らすべく、高知県内各地に出かけることにしました。まずは馬路村で鉄道体験、最初に訪れたのは魚梁瀬森林鉄道です。
早起きして高知市内を出て馬路村へ。村に入るまで快調に進めたのですが、中心部の手前が工事中で通行制限。通れるのが1時間の間に10分だけという大変なものです。この手の通行制限、県内では各地で行われています。
ただ着いたのが制限解除まで10分ほどで、そんなに待たなくて良かったのは幸いしました。1時間半は運転していましたし、軽い休憩になったぐらいです。
そして馬路の集落を抜けて、基本1車線の道をさらに北上。右手にダム湖が見えてから、大きな橋を渡って、最初の目的地の魚梁瀬集落に入ります。
魚梁瀬集落の丸山公園に着きました。高知県内で大雨情報が出る時には、たいていこの集落の降水量が出てくる気がします。全国のニュースでも聞いたことがある方がいらっしゃるかも知れませんね。
そしてこの日も雨でしたが、傘が要るか要らないかの小雨。こんなの降っていないも同然でしょう。
この公園では、かつて木材輸送で大活躍した魚梁瀬森林鉄道の保存運転が行われています。園内をぐるりと囲む線路が敷かれていて、往時の機関車が率いる列車に乗車できるほか、機関車の運転もできるのです。
園内の駐車場に入る所には踏切が設けられています。まだ鉄道が動く前なので、遮断機は上がったままです。
保存鉄道のやなせ駅。かつての駅がどうであったは知りませんが、当時のものに似せて作ったような感じは受けません。
公園の反対側にある車庫に行ってみると、エンジン音が聞こえてきました。もうすぐ出庫するようです。
機関車が出てきました。後ろには屋根のないトロッコが続いています。
往時を彷彿とさせる客車。かつてはこんな感じの客車が全国各地を走っていたのでしょう。
一般的な鉄道車両と比べると小さいはずの客車なのですが、ここではずいぶん大きく見えます。列車は公園をぐるりと半周し、駅へと向かっていきました。
駅に行って運転の申し込みをします。1人たったの1,000円、他の運転体験と比べるとかなり安いです。
今回運転する谷村式の機関車は、かつての車両を復元したガソリン式のものです。昔の機関車なので機械式、自動車で言うマニュアル変速なのでは、と不安もあったのですが(免許状はMT運転は可能ですが)、クラッチペダル操作なしで運転可能になっていました。
駅から向かうのは、春まだ浅い山里、これだけ見れば、晩秋の風景と言っても通用しそうです。まずは妻の運転で出発です。
雨が少し強まりましたが、せっかくの雰囲気を味わいたいので、すぐ後ろのトロッコに乗り込みました。ほどなくエンジンがうなりを上げて出発です。簡素な線路と車体なので、振動がそのまま伝わります。
後ろに続く車両。かつてはこのような客車に乗って、村の中心部や海沿いの安田、田野へと人々が行き来していたのでしょう。
列車は時に汽笛を聞かせながら、微妙に速度を上げ下げしつつ走ります。僅かな上り下りの勾配がリアルに伝わってくる感覚、今の鉄道ではなかなか味わえないものです。
車庫の近くに差し掛かりました。ここで少し上り坂になり、機関車にも力が入ります。間違っても高速鉄道ではありませんが、それでも結構なスピード感です。
線路を囲む桜の木は、少しずつ花を咲かせています。先程の風景とは打って変わって、春が訪れているのを実感します。
場内用の信号機。森林鉄道のイメージとはちょっと違いますが、戦後には使われていたのでしょうか。
そして周囲の桜の木々には提灯が連なっています。これが穏やかな世の中なら、花見を楽しめるんですけどね。
先程の踏切が稼働しています。第一種甲踏切、森林鉄道にしてはかなりの設備です。
列車は一周回ってやなせ駅へ。これで運転士交代と思いきや、列車はそのままの速度で通過。意外でしたが、もう一周運転できるということで、こちらとしては大歓迎です。
2周目は運転士が客車の様子を確認(客車側から写真を撮れば記念撮影にもなる)するなど、ちょっと趣向を変えつつ進んでいきます。
そして再びやなせ駅に到着し、体験運転終了です。
なお私の運転については、当然ながら自分で写真を撮っていないので省略(笑)
言うとすれば、思ったよりエンジンを吹かすんだなというところです。このぐらいでいいかな、と思ったら、ガイドの方にはもっと、もっとと促されました。
そして何より、楽しかった!鉄道の運転は子どもの頃からの夢でしたし、ついにホンモノを運転できたわけですからね。
もっとも、妻もかなり盛り上がっていたので、鉄道趣味のあるなしに関わらず、運転体験は試してみる価値がありますよ。
運転を楽しんだ後は、先程の車庫を見学します。車庫にやって来ました。機関車が2両留置されていて、このうち右側の方が、森林鉄道営業当時からの保存車両です。
どことなく愛嬌があり、味わい深い風貌の機関車。先程の谷村式よりもかなり大型で、数えきれないほどの材木を送り出してきました。
運転台。足元がマニュアル車に近いのが見て取れると思います。実際運転の原理は一緒ですが、ハンドルに見えるのがブレーキなのでしょう。鉄道なので方向操作はですし、こういう手ブレーキは昔の車両でままありますし。
機関車の後部。今の機関車なら前進も後進も可能ですが、この時代の車両だと、一般の自動車と同じく後進の変速はないはずで、終点に着いたらターンテーブルか何かで方向を変えていたのだと思います。
もっとも、この辺は資料を調べればすぐに分かる話なのですが、その時間が……
機関車の連結器。先程の列車もそうですが、車両間に棒状の連結器を渡して、車両側の差込口にピンを通すピンリンク式です。強度は劣りますが簡便なので、かつては軽便鉄道や森林鉄道で多用されていました。
機関車の後ろにあるのは超小型のトロッコ。工事用でしょうか。
こちらはピンリンク式の連結器の下に、緩衝器がついています。停車時に貨車どうしがぶつかるのを避けるためのものです。
もう一両の機関車は、なかなかに派手な色合い。魚梁瀬森林鉄道のものではありませんが、ここで動態保存されています。
実は、以前あった高知市内の藁工ミュージアムでの展示以来の再会になります。
運転台を再度撮影。こちらも機械式変速になっています。その他、この車両について詳しくは先のエントリで。
本来の現役時代よりも長い期間を、保存車両として過ごしている機関車たち。と書きましたが、これはこれで現役なわけで、今後も末永い活躍を期待したいものです。
車庫の傍らになぜかあった、カエルと犬のおもちゃ。車輪もついているので、小さな子どもが外で遊ぶには良さそうです。
車庫の先の線路。その両脇から春が少しずつその姿を現してきています。
かつての魚梁瀬森林鉄道、保存車両や体験運転については、こちらもご参考に。