まずは、ご卒業おめでとうございます。今年度は卒業式も祝賀会もなくなってしまい、皆さんと直接顔を合わせる機会がもうないので、こちらで。
時間の無い方は音楽だけで。ある方は、その後に文章が続きます。
「希望は失望に終ることはない」
私が中学を卒業する時、担任の先生が卒業文集に書かれた言葉です。良い言葉だなと思いつつ、元ネタが長らく分からないままだったのですが、調べてみたら60年以上前に刊行された『口語訳聖書』のうち、新約・ローマ人への手紙5:5の一節でした。
私はキリスト者ではないので、この言葉について、キリスト教の教義に照らしたお話はできません。
ただ、曲がりなりにも皆さんより長く生きてきて、この言葉が確かに真理なのだろう、と思うことはあります。が、その理由を書くと、長ったらしい自分語りになるので、それは控えます。
皆さんは、これからさまざまな希望を持って、新たなステージに出ていくことになります。
ただ、こんな時局です。いや、時局がどうあれ、希望はときに叶わないことがあります。あるいは、その時の自分にとって大事な希望ほど、叶わないものなのかも知れません。そこで失意を感じることもあるでしょうし、挫折したと思うこともあるでしょう。
ですが、そんな時、それでも新たな希望を持って再び立ち上がれるかどうかが問われます。時間がかかっても構いません。新しい道を見つけて、再び前に進み出せるかどうかが、その後の幸せに関わってきます。
そして、転んでも再び立ち上がって進み始めてを繰り返していば、皆さんはそれぞれ、どこかで、なにがしかの希望を叶えることでしょう。
そうして叶えた希望は、最初に抱いていたものとは似ても似つかないかも知れません。ですが、それは最初に抱いた希望があったからこそ、手に入れられたものです。挫折と思えた場面も、終わってみれば一つの過程、叶えられた希望への導きなのです。
だから、希望は、当初抱いたものが手に入らなかったとしても、失望に終ることはないのです。皆さんが挑戦することを止めない限り。
そして、皆さんには挑戦し続ける力が既に備わっているはずです。
なぜなら、学部課程で養ってきた能力こそが、その力、つまり、変化し続ける不確実な社会において、その時々の社会を理解し、より良い社会を実現するための方策を考え、実現しようと挑み続ける力だからです。
皆さんは、学部課程の中で、当初予定していた企画や研究テーマで壁にぶつかったことのない人はいないでしょう。描いていたプランを変更したり、断念したりという人もいることでしょう。その過程で、悩んだり苦しんだり、ときには涙を流した人もいるはずです(いないとは言わせません!)。
ただ、それでも最後にはなにがしかの企画をやり遂げたはずです。また、それぞれ、なにがしかのテーマについて探求を続けたはずです。
皆さんが(おそらく郵送で受け取る)卒業証書は、そんな経験から皆さんが得た力を、最低限身に付けた証しでもあります(と、一教員が勝手に言ってますが、そんなに異論はないはず)。
だからこそ、そんな経験をやりきった皆さんに。先ほどご紹介した担任の先生が、最後に書かれていた言葉です。
「楽に逃げるな。とことん苦しめ。必ず明日は拓かれる!」
皆さんの健康と幸福を祈ります。