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「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

【地域実習振り返りレポート】(17)「課題」と「問題」(大豊町・2016年7月6日)

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 7月に入り、1学期の現地実習も残り少なくなってきました。この日はゆとりすとベリー農園でブルーベリーの挿し木と収穫、午後からは道の駅大杉に移り、これからの商品・事業開発やイベント実施に向けての意見交換が行われました。

 

 

 例によって、学部ウェブサイトで今回の実習のレポートが既に上がっています。

 

www.kochi-rc.jp

 

 さて、本学部が各地域で行う実習には、実習地でのイベントや農作業、清掃等、実習地の維持発展のために行っている活動に参加するものが少なからずあり、それらはたいてい「サービス・ラーニング」として捉えられています。この定義はいろいろあるようですが、教育という対価を得るために学生の労働力を提供する学外での活動と言う点では、だいたい意見が一致するのではと思います。

 ただ、その点で言うと、今回の実習はサービス・ラーニングのようで、実はそうでもありません。確かに学生は労働力を使いましたが、それが実習地へのサービス(≒奉仕)が主眼とは言い難いところです。挿し木したブルーベリーの苗は一部分けて頂きましたし、収穫したブルーベリーも頂きました。つまり、教育以外の対価をもらっているわけで、厳密な「サービス・ラーニング」の定義からは外れてしまいます。

 もっとも、おすそ分け程度のことなら、どんな教育機関のサービス・ラーニングでもある話でしょう。ただ、今回に関しては、ブルーベリーをもらいました、良かったね、ではありません。これから学生は、頂いたブルーベリー、特に果実をどう活用するかを考えることになります。つまり、苗や果実というよりも、活用法を考えるという課題を頂いたわけです。さらに言えば、収穫体験自体も、この体験をどう「売り物」にしていけるかという課題につながります。同様に、午後からの意見交換会も、その時間だけ話し合って終わりではなく、情報や意見を頂いた上で、それらを今後の実習にどう生かしていくか、そして実習地をどう盛り上げていくかという課題を与えられる機会です。こういう機会を通じて、実習地の人々が学生の教育に直接関わることになります。今後の実習でも作業が入る面はあるでしょうが、サービス・ラーニングとして作業体験から専ら学ぶ段階は終わっているわけです。

 一方で、学生は学生で、自分なりに事業地の現状を体験的に知り、何が問題になっているのかを考えた上で、企画を立案しようとしています(そこが「自分なりに」で止まっていてはいけないのですが)。そして企画ができあがったら、2学期にはその企画を持ち寄り、本格的な事業計画をまとめなければなりません。つまり、現場の人が考える実習地の課題について考える一方で、自分の視点で実習地の課題を割り出し、その解決法をまとめあげるという両方が、学生に課せられているわけです。

 ここで実習地の人々から出てきた課題と、学生が考える問題とが一致すれば話が早いのですが、場合によってはズレが生じることもあるでしょう。ただ、上で書いた事業計画は、学生が実習地と言う場を借りて勝手にやるものではありません。実習地の人々とともに実施するのが大前提で、そうでなければわざわざ「協働」などと言わないのです。それだけに、実習地の人々と学生とで意見の違いがあれば、議論を通じて互いに説得したり、すり合わせたり、統合したりという作業も求められます。その上での事業の計画と実施なのです。

 これをお読みの皆さんがおそらく察しておられる通り、これは決して簡単なことではありません。特に私の実習地の場合は企業が相手ですから、学生の提案に対する目は他の実習地に増してシビアになっていくでしょう。不安がないとは言いませんが、動くのはあくまで学生。教員が不安になろうが心配しようが意味がないですし、ここは教育する側の一員(ここが大事だと思っています)として見守っていかないといけません。

 

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 実習中の風景から。挿し木用にポットに土を詰めているところ。今回はピートモスとの配合ではなく鹿沼土のみを入れています。

 

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 道の駅大杉で昼食に注文した大豊町名物の立川そば。ちなみにこの日は第1水曜日で、月に一度のワンコインランチの日でもありました。

 

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 分けていただいたブルーベリーの苗。立派に育ってくれるといいのですが。