瀬戸内の多度津から峠をいくつも越えて、太平洋側に出てなおも走る土讃線。その終点窪川の手前にある最後の駅が仁井田駅です。
ホームから離れ、地平に建つコンクリートの駅舎。今はスロープがあり、傍には葉牡丹が植えられています。
かつてはここに線路が通っていたように見えますが、現在は行き違いのできない棒線駅になっています。
カーテンが閉じられた切符売り場のすぐ下にはベンチ、職員出入口は清掃道具で封鎖。無人駅という事実の動かし難さを物語ります。
反対側には、壁一面の長椅子。個別に区分けされたベンチが各地で定着して久しい中、今も残っています。
完成当時はさぞ近代的に映ったであろう駅舎。今は年月をその身に刻み込んでいます。
駅前で大きく枝を広げる、冬枯れの大樹。この木も駅の歴史を見続けてきたのでしょう。
反対側にも幾多の枝を伸ばす木々が、かつての荷物・貨物を取り扱っていたであろうホームの跡を覆っています。
駅前の錆び付いたバス停、いやバス停跡。仁井田の停留所表示は読めますが、時刻表は剥がされて今はありません。
その横にある停留所の標柱も、バス停の位置が変わったという案内が取り付けられています。かつてここからバスでさらに各地に向かった人がいた、今ではそのことを語っています。
遠鳴りのエンジン音が聞こえました。特急あしずりが近づいてきます。高知に向けて、JR最初の通過駅を快調に飛ばしていきます。
今度は下りの特急南風、アンパンマン列車。
岡山から土讃線を端から端まで駆け抜ける長旅はあと少し、窪川からは土佐くろしお鉄道線へと入っていきます。