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「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

シリーズ土佐の駅(7)繁藤駅(JR土讃線)

 高知駅から東へ。土佐山田の駅を出ると、線路は次第に山の中を分け入っていきます。杉林の中、峠を目指して登りついたところに、繁藤駅があります。JR四国の中でも最も高い地点にある駅です。

 

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 かつて天坪(あまつぼ)と称されていた繁藤駅。唄われる通り、かつてはマンガンや木材の産出で栄えた村でした。

 ただ、ここは時に「天坪」ではなく「雨坪」と呼ばれるほどの豪雨地帯。国鉄時代には、大雨で発生した土砂崩れが列車を呑み込み、60名が亡くなる事故も起きています(読売新聞記事・webアーカイブ保存版)。

 

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 この日も強い雨が降る繁藤駅周辺。駅前にはほとんど余裕がありません。狭い谷間を分け合うように、鉄道と国道が並んでいます。

 

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 人影を見かけない駅前を、乗用車やトラックが次々と走り抜けていきます。

 

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 駅のすぐ近くで見つけたバス停。

 市内でもバスが一日数本しかないところもあるなか、ここを12本のバスが通り、高知市内へと走っていきます。しかしバスの時間はまだ先。停留所からは人の姿を見ることはできません。

 

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 駅へと戻ってきました。

 閉じられてもう久しいであろう窓口。まばらな時刻表。日本中にあるローカルな駅の風景です。

 そんな駅でも、ベンチにはおそらく地元の人によるものであろう座布団が敷かれています。汚れの見当たらないカバーに、人々の駅への思いが感じられます。

 

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 列車の時間が近づいたのでホームへ。繁藤では行き違いをする列車もあり、2面のホームと3つの線路が今も使われています。

 

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 跨線橋を登り、上り方面を眺めます。

 杉林の中に吸い込まれるだけのような線路が、さらに阿波、讃岐を経て瀬戸大橋、そこから全国の鉄路へとつながっているのです。

 

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 高知方面。谷あいの小さな集落から、下り坂が延びています。

 

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 都会ではすっかり見かけなくなった、木の長椅子。ここにも座布団が置かれています。

 山の中の無人駅を、人々の手が守っています。

 

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 下りのディーゼルカーがやってきました。徳島から大歩危峡を超え、さらに峠を越えてやってきた列車です。

 

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 繁藤からは私と3名が乗車。列車は雨で煙る土佐の山間を降りていきます。