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「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

2017・中九州冬の旅(5)延岡から高千穂、高森へ

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 全都道府県での宿泊を達成した翌朝です。これで今回の旅のミッションは果たしたと言えばそうなのですが、宮崎県に泊って帰るだけ旅というのはあまりに寂しい。というわけで、ここからは鉄道絡みの予定を組んでいるのです。

 

 

 延岡と言えば、かつてここから熊本県の立野までを結び、日豊本線豊肥本線を連絡する鉄道が計画されていたところです。鉄道の工事は延岡・立野それぞれから始まり、その一部は国鉄時代に完成、延岡側は高千穂線、立野側は高森線として開業していました。両者は結局つながることはなかったのですが、それぞれ国鉄末期に第三セクターに移管され、前者は高千穂鉄道、後者は南阿蘇鉄道として再出発しました。

 ところが、高千穂鉄道は2005年に台風で甚大な被害を受け、その後の関係者の努力も空しく、復旧されないまま廃線。現在は高千穂付近の線路が観光鉄道「高千穂あまてらす鉄道」に生まれ変わっています。一方の南阿蘇鉄道は2016年の熊本地震の直撃を受け、現在は高森から中松までの区間のみが、どこの鉄道ともつながらない孤立路線として営業している状況。完全復旧の計画はできましたが、それも数年はかかるようです。

 というわけで、延岡に行くからには、足を延ばしてこの2つの鉄道は見ないと(使命感)という勢いで、今回の旅の計画を立てたのでした。

 

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 延岡駅前にあるバスセンター。今回はここからまず高千穂まで路線バスに乗ります。早朝のバスセンターはまだ営業前、カウンターは閉まったままです。

 

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 高千穂行のバスがやって来ました。高千穂線廃線から12年、沿線に残った貴重な公共交通機関です。

 

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 バスの側面を見ると、こんな広告がありました。と言っても単なる広告ではなくて、「客貨混載」、バスに宅配便の荷物を載せて運行するという案内です。

 

■ 路線バスが宅急便を輸送する「客貨混載」の路線拡大 | ヤマトホールディングス

 

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 バスの中央部、入り口の反対側に、荷物用のスペースがあります。ここに荷物を載せて運ぶことで、路線バスの維持や宅配便ドライバーの負担軽減、集荷・配達サービスの改善からCO2排出量削減までが実現できる、という触れ込みです。近々高知県でもこの試みが導入されるとのことで、私も注目、期待しているところです。

 

www.nikkei.com

 

 というわけで、バスは宅配便と乗客を乗せ、高千穂へと発車しました。

 市街地を抜けると、バスは五ヶ瀬川沿いの国道を走ります。道路沿いには比較的新し気な住宅が目立ちます。その後バスの右手に、田畑を横切る築堤が見えてきました。さらに駅の跡まで見えてきたので、どうやら高千穂線の廃線跡で間違いありません。

 

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 ぼやけた画像で申し訳ないのですが、道路の向こう側、田圃の中を分けて伸びる盛り上がったところが、高千穂線の跡と思われます。この区間廃線跡がまだそれとしてのこっているのですが、廃線から12年を経て、橋梁のあったところは撤去されたり、線路跡の一部は道路に転用されたりしています。土地勘のない鉄ヲタの私が抱いていた高千穂線復活という淡い夢を打ち砕くには十分な光景です。

  

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 とはいえ、さらに進めば、こういう鉄橋が残っていたりします。残っているというより、撤去のしようがないというのが実情かも知れませんが、こういう構造物それ自体が、鉄ヲタに限らず興味を引く存在なはずです。九州の山奥に鉄道を敷こうとした人々の奮闘の結晶、こういうものは次代に遺せんろうかと思います。

 

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 バスはほぼ定刻通りに、高千穂バスセンターに到着しました。ここで高森に行くバスに乗り継ぎます。

 ……というのを見て「なんで延岡から直接高森に行かないの?」と思った方は鋭い。実は、延岡と熊本の間には1日2本特急バスが走っています。このバスは高森にも停まります、というか、これから乗り継ぐバスがまさにそれです。なので、常識的に考えれば、そのバスで直接高森に行くところですし、私も当初はそうするつもりでした。

 にもかかわらず、わざわざ乗り継ぎをしようと思った理由は簡単、「安く上げるため」です。この区間のバスを運行する宮崎交通は1日乗り放題乗車券を発売していて、県内の路線バスに乗るのに使えるのですが、県境を越える特急バス等では使えないという条件があります。そこで、特急バスの利用は最小限にとどめ、他は乗り放題乗車券を駆使することで、交通費を抑えることにしたのです。

 とりわけ今回は青春18きっぷの通用しない交通手段を利用する機会が多いので、追加の交通費もバカになりません。多少早起きしたりルートがヘンになろうが、安くあげられるところであげておかないといけないのです。

 そういう事情で、高千穂で乗り継ぎ待ちの時間ができたので、バスセンターの周囲を歩いてみることにします。

 

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 バスセンターの向かいにある観光案内所は、まだ朝早く営業時間前。見ると、入口の上に見覚えのあるイラストが見えます。去年の10月、高知城での「秋のお城まつり」 の舞台で神楽の幕間に出てきた「うずめちゃん」ではありませんか。

 

3710920269.hatenablog.jp

 

 以前来高した時には、朝4時台に起きてフェリー経由でやって来たとの話で、ホント大変だなぁと思っていたのですが、今度は私が逆に高千穂町まで来てしまいました。

 

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 バスセンターにはこんな自動販売機もあったのでした。見かけたことのあるキャラクターが、地元でこんな風に愛されているのを見るのは良いものです。

 

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 街を歩くと、各地に神楽を舞う人形が飾られています。観光名所というわけでもなく、開店前の商店が並ぶ静かな街中なのですが、ちょっとした見所があるだけでも、歩いていて楽しいものです。

 

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 空き地の奥で、いきなり楽譜を見つけました。何かの歌なのでしょうが、何なんでしょう?

 

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 楽譜の下にあった貼り紙を見ると、高千穂町の町歌のようです。とは言え、遠くから見れば楽譜しか分からないわけで、これが車だったら通りすがりに楽譜は見たものの、何なのか分からず謎のまま過ぎ去ってしまう人も少なくないことでしょう。

 

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 今度は上を見上げれば、交差点の案内標識に高千穂駅の名前が今も残っています。高千穂鉄道廃線になって10年以上経ちますが、駅は高千穂あまてらす鉄道の拠点として今も健在。案内標識に駅を示す理由は、今もちゃんとあるのです。

 

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 バスの時間が近づいたところで、バスセンターに戻ります。先程の自動販売機の場所がこちらです。

 

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 延岡から高千穂・高森経由、熊本行の特急バス「あそ号」が入ってきました。画像では見辛いのですが、全国の主な交通系ICカードが使えるようです。バスが来る前にカウンターで切符を買っておいたのですが、残額が残っているようなら、帰りはICカードを使うのが良さそうです。旅先で現金が切れるのは避けたいので、現金を使わずに済むのはありがたいものです。

 

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 バスに乗ると、運転席には子どもが作ったと思しきメダルがかかっていました。安全運転をお願いするメダルのようで、わざわざかけてあるのが微笑ましいです。

 さて、バスはほぼ定刻に高千穂バスセンターを発車。ここから熊本県へと走っていきます。

 

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 高千穂を出たバスは峠を越え、人里を抜け、さらに高度を上げていきます。熊本県に入るころには山上に出て、風景が開けてきました。

 

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 さらに進むうちに、眼下に盆地が広がるのが見えてきました。ここからその盆地へと一気に山を下りていけば、目指す高森はもうすぐです。

 

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 バスは坂を難なく下り、高森中央に到着しました。ここから南阿蘇鉄道高森駅までは歩いて数分ですが、ここでも乗り換え時間はあまりないので、写真を撮ったら速足で駅へと向かいます。