阿佐海岸鉄道唯一の中間駅、駅員のいる駅である宍喰駅に降り立ちました。今回の旅のミッションの1つが、ここである方に面会することなのです。
今回面会する相手とは、宍喰駅の2名の駅長さん。早速駅長室前を訪れました。
駅長室は非常に公開性の高い造りになっていて、駅を訪れさえすれば、誰でも駅長に面会することができます。
ただし、駅長室の中に入ることはできません。厳密には、物理的に不可能です。というのが、
ね、無理でしょ?
和歌山電鐵の猫駅長「たま」の大ブレイク以来、全国各地で動物駅長が就任していますが、宍喰駅の駅長は、動物は動物でも節足動物。2名体制で勤務しています。
駅長室があるのは改札口。執務室の間には仕切りがあり、個別のスペースが確保されています。下のポスターに書いてあるスーパーローカルというのが、「スーパーグローバル」という言葉に踊らされた某業界を諷刺しているようで、いろいろ通り越して痛快です。
駅長室の左側にいるのがあさちゃん(のはず)。
右側にいるのがてっちゃん(になるかと)。
駅長は2名ですが、制帽は1つのみです。
事例もちゃんと交付されています。「三代目」とありますが、別段某グループとは関係ないようです。特に初代「てっちゃん」は脱皮中に殉職、また初代「あさちゃん」と二代目の両名は退職して海に帰ったという、実に現実的な経緯があります。
駅長からのメッセージ。先にご紹介した記事にもありますが、伊勢えび駅長就任の背景として、「赤字からの脱皮(脱却)」というのがあるそうです。
さて、時間もあるので駅前に出てみました。宍喰駅は他の駅と異なりエレベーターが設置されていて、コンクリート剥き出しの簡素な駅にエレベーター塔が突出しているのが容易に見てとれます。
もっとも、駅前にあるのは学校、反対側は田んぼが広がっていて、商店等はまるでありません。ここも他の駅同様、後免から海部・牟岐までを直結することを優先した経路になっているがばかりに、地元での利便性が図られていないのが仇となった形です。
ふと見ると、宍喰駅から甲浦方面で、作りかけで放置された高架橋と橋脚がありました。ただ、阿佐線の計画には支線が含まれておらず、どういう経緯で建設されるようになったのかが謎です。
港の方に貨物線を敷く予定でもあったのか?この先に車両基地でも造るつもりだったのか?おそらく謎は謎のまま、真相は時の流れとともに消えていくのでしょう。
よく分からないと言えば、駅のそばに観光マップがあったのですが、一部景勝地と思しき地名が書かれているだけで、案内らしい案内がほとんどない。余程の達人ならこれでも使えるでしょうが、初めて訪れた私にとっては、この地図を使ってどうしろというのか、途方に暮れてしまいました。
もっとも、駅の中に戻ると、中心街の詳しい地図がちゃんとあります。宿泊施設やタクシー、レンタカーの連絡先も書いてあるので、こちらは非常に便利そうです。
……どう観光地なのか分からないのがあるのはさておき。
さて、開業以来赤字続きの阿佐海岸鉄道ですが、それでもテレビの取材が訪れることはままあります。改札の横にはサインがいくつも並べられていました。
駅の中には商工会の展示があって、地元のお祭りに加えて出身の有名人の写真パネルもあります。
中には、阪急・オリックス・日本ハムで監督を務めたパ・リーグを代表する名将、上田元監督のパネルもありました。
しかし、わざわざオリックス・ブレーブスというところに虚を突かれたのですが、阿佐海岸鉄道と宍喰駅が開業したのが1992年で、その2年前まで務めていたのがこのチームの監督だったからなのでしょう。
パネルと言えば、駅の中にはこういう顔出しパネルも。今日乗ってきた301号車の別塗装バージョンです。
こちらは木製のDMVの模型。DMV(デュアル・モード・ビークル)とは鉄道と道路の両方を乗客を乗せて走行できる車両で、JR北海道が長らく開発を進めながら断念したところ、阿佐海岸鉄道が採用を決めたものです。
鉄道ファンには夢がある話ですし、当然実現したら乗ってみたいです。少なくとも一時的な観光需要の喚起にもなるでしょう。ただ、DMVというからには鉄道と道路を相互に乗り入れられるポイントが必要になりますが、全線立体交差で踏切もない阿佐海岸鉄道の路線では、そういうポイントを新たに作らないといけなくなります。ただ、そんなところにカネをかけるなら、いっそ全線バスにすれば良いじゃないか、という声も出てきそうで、そこに不安を感じずにはいられません。大丈夫でしょうか……
ともあれ、今は1編成のディーゼルカーが行ったり来たりするのがこの鉄道。ASA301号車にみたび乗車し、甲浦を目指します。
ちなみに、宍喰駅長のあさちゃん、てっちゃんはブログも持ってます。
「ぇ」?「え」じゃなくて「ぇ」?