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IMFとモンゴル政府,EFF(拡大信用供与措置)による支援実施で基本合意(前)モンゴルに適用されるEFFとは?

 昨年後半以来交渉が続いていたIMF国際通貨基金)によるモンゴル支援策がまとまった旨、昨日(2017年2月19日)発表がありました。支援策は予想されていたスタンドバイ取極ではなく、EFF(拡大信用供与措置)となります。融資と引き換えに実施すべきプログラムは、より厳しいものになると見込まれます。

  

 IMFによるモンゴル支援について、私含め大方の予測は、2009年以来7年ぶりに、短期的な国際収支問題の解決に使われるスタンドバイ取極が適用されるというものでしたが、IMFから提案されたのは、より深刻で構造的な問題に対処するための拡大信用供与措置(以下EFF)の適用でした。

 それだけに、IMFによるモンゴル経済の見立ても、支援と引き換えに実施すべきプログラム内容も、予想より厳しくなりそうな印象を受けます。もっとも、モンゴル経済と言えば、外国投資が相次いで逃げ出し、経済成長が衰える中で放漫財政を続けていたツケが昨年後半から一気に火を噴いた状態で、かつ隣国中国の経済成長もアテにできない状況ですから、2009年より事態が深刻と捉えるのも、納得と言えば納得です。

 で、そのEFFですが、IMFの日本語サイトでの説明では、以下のようになっています。

 

EFFは、抜本的な経済改革を必要とするような大きな歪みに起因する、中・長期的な国際収支上の問題の解決に取り組む加盟国を支援します。EFFの利用は最近の危機の間に大幅に増加しました。これは、一部加盟国が抱えている国際収支上の問題の構造的な性質を反映しています。EFF取極の適用期間は通常SBAより長くなっていますが、承認の段階で3年を超えることはありません。しかし、3年を超える国際収支上のニーズが存在する場合、マクロ経済の安定性を回復するための調整に時間がかかる場合、そして当該国が徹底した持続的な構造改革を行う能力と意欲を持っていると十分に認められる場合には、最長4年の期間が認められます。返済期限は融資支払い日から4.5~10年となっています。

 

 なお、ここでSBAはスタンドバイ取極(Stand by agreement)のことです。SBAよりも中長期的な問題に対処するための制度であることが読み取れますが、その分、長期的かつ構造的な改革プログラムが実施の前提となることも予想されます。

 とはいえ、私自身国際金融の専門家ではないので、これだけでEFFについて分かったとは言えません。IMF自身によるもう少し詳しい説明があるので、そちらを読んでみたいと思います。

 

■ The IMF's Extended Fund Facility (EFF) (IMF, September 27, 2016)

 

 全訳を示す余裕はないので、以下で要点を示してみます。

 

  • 国が対処に時間を要する構造問題のために深刻な中期的国際収支問題に直面した際に、IMFEFFの下で調整プロセスを支援可能
  • 拡大的な措置の特徴は、SBAよりも中期的構造改革への支援期間が長く、融資の償還期間も長い

 EFF設計の目的は?

  • 対象となるのは、(i)構造的障害のために深刻な収支悪化に直面する国、もしくは(ii)低成長や慢性的な国際収支の弱さが特徴となっている国
  • EFFは、長めの期間で、構造的な収支不良への政策を含む包括的なプログラムを支援

成果を生む調整のための、より長い関与とより長い償還期間

  • 拡大措置の期間は通常3年以内だが、適切な場合は1年まで延長される
  • ただし、3年を超える国際収支上のニーズがある(マクロ経済の安定回復に必要な調整に時間がかかる)場合や、当該国が徹底した持続的な構造改革を行う能力と意欲を持っていると十分に認められる場合には、最長4年の期間が認められる
  • 償還期間は融資支払い日から4.5~10年で、半年に1回分割して行われる

構造改革の重視

  • IMFからEFF適用を受けた国は、制度的・経済的な脆弱性に取り組む構造改革と、マクロ経済の安定維持を重視した政策の実行を誓約する。この制約には特定のコンディショナリティも含まれる
  • IMF理事会は政策プログラムの実施を定期的に評価するとともに、経済開発のために、プログラムを改変することへの認可も行う
  • EFFでは当該国の政策の実効力や金融上のニーズの性質に応じて、審査の回数を柔軟に変更できる

EFFでどのぐらいの金額の融資を受けられるか、融資の料金はいくらか

  • EFFの規模は当該国の金融上のニーズや償還能力、過去のIMF資金の利用履歴によって決まる
  • ノーマル・アクセスでは年間融資額がIMF引出権の145%まで、プログラム全体では435%まで
  • 当該国が事前に設定された条件を満たした場合に限り、例外的アクセスとしてノーマル・アクセス以上の融資枠をケース・バイ・ケースで設定
  • EFFの手数料は期間開始から12ヶ月間に融資額に応じて徴収。ただし当該国がEFFの融資を受けた際に、その額に応じて返還し、融資を全額受けた時点で手数料はすべて返還
  • 金利は市場金利に応じてIMFが設定するベーシック・レート・オブ・チャージを適用(訳者注:Rate of chargeのうちBasic rateを指すと考えられる)。
  • ベーシック・レート・オブ・チャージは特別引出権(以下SDR)と連動しており、現在の金利水準はSDRプラス100ポイント(訳者注:1%)。信用規模が特別引出権の187.5%を超える場合はSDRプラス200ポイント。また融資開始から51ヶ月後の信用総額が187.5%以上残る場合、金利はSDRプラス300ポイント
  • サービス料は融資引出ごとに50ポイント

 

 ここでの説明で焦点となるのは、「制度的・経済的な脆弱性に取り組む構造改革と、マクロ経済の安定維持を重視した政策の実行を誓約する」でしょう。SBAでもコンディショナリティの達成が融資の条件となるのですが、それ以上に抜本的な改革政策の実施が求められることになるでしょうし、その実施状況についてはIMFの監査が入ります。EFFの適用を受けた他国の状況を見ないと断言はできませんが、モンゴルにとって今回のIMF支援が以前より厳しい条件の下で行われること、実施すべき改革プログラムも小手先のものでは許されず、かつプログラムでの目標も確実に達成しなければならないことは確かでしょう。

 では、モンゴルに適用されるEFFがどのようなものなのか、また具体的にどのような取り組みが求められるのか。既に長くなってしまったので、これらについては中篇以降に続きます。下記のリンクからどうぞ。

 

3710920269.hatenablog.jp

 

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