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モンゴル国文化大使に就任した歌手の八代亜紀さんが歌うモンゴルの「国民的愛唱歌」とは?

 今朝もモンゴルのニュースサイトをチェックしていたところ、こんな記事を見つけました。

 

■ Гадаад харилцааны сайд Ц.Мөнх-Оргил соёлын элч нарт гэрчилгээ гардуулав (「ムンフオルギル外相、文化大使らに証書授与」モンツァメ、2016年8月2日)

 

 

 上記はモンゴルの通信社モンツァメによる配信ですが、他のサイトにも同様の記事がアップされています。

 で、記事を読んで「あれっ!?」と思い、半信半疑で写真を確認して驚いたのですが、文化大使に歌手の八代亜紀さんがいるではありませんか!

 ただ、正直なところ八代さんとモンゴルのつながりというのが分かりません。そこで調べたところ、なんと「モンゴルの国民的愛唱歌を日本語カバー」という記事を見つけてまた驚いたのです。

 

www.nikkansports.com


 さらにレコード会社からの案内も。

 

columbia.jp

 

 日本を代表する歌手がモンゴルの歌のカバーですよ。 作詞者がモンゴルの国民的俳優にして今年日経アジア賞も授与されたソソルバラム氏だから歌自体モンゴルでは相当なものですが、にしても意外やら感慨深いやらです。しかし、洋楽の日本語カバー、一時期よくあったのに、最近はなんであんまり出てこないんだろう……って最近の歌をよく知らんだけなのですが。

 ですが、ここで問題に気づきます。

 

 「国民的愛唱歌"JAMAAS"」

 ……なに、それ?

 

 日本のみならずモンゴルの音楽シーンにもすっかり疎くなってしまった私。愛唱歌といわれても、最近のヒット曲は分からないのです。

 そんなことを考えながらさらに読み進めると、

 

 「……JAMAASとはモンゴル語で「真理」の意味で」

 ……えっ、そうなの!?

 

 モンゴル研究をやっといてそれか?とツッコまれるかも知れませんが、正直私の知識の中にある単語ではなかったのです。

 とはいえ、私が知らないだけの可能性もあるので、確認したところ、謎は解けました。

 まず、"Jamaas"を1つの単語と見るのは間違いではないのですが、実はこれ、日本語で言えば名詞+助詞に相当する構造になっているのです。まず、"jam"は「法則」「摂理」という意味を表すモンゴル語。これに、「~から」「~より」「~を出て」という意味の後置詞-aasがついたものです。

 なので、「真理」と言ってしまうから引っかかったわけです。もちろん音楽作品のタイトルを直訳しないといけないという法はないので、それはそれでありなんでしょうが。

 で、問題はどういう曲なのかですが、YouTubeを探すとあっさり見つかりました。

 

www.youtube.com

 

 男性4人組、本人たちいわくポップオペラグループの「ウヴェラテューラ」(英語のoverture「序曲」と同じ)が歌うナンバーです。モンゴル語なので聞いても何を言っているか分からない方がほとんどだと思いますが、私もあんま分かりません分かったところで「じゃあその演出は何なんですか」という別の謎が出てきますとりあえず秋になれば、そのままの訳ではないにせよ日本語版が出るので、とりあえずそれまでは雰囲気だけ味わってもらえればと思います。

 それにしても、モンゴルもこういう大人向けポピュラー・ミュージックが出てくるようになったんですね。以前は若い子向けの音楽と中高年層向けの演歌チックな歌謡曲に二分されていた印象があったのですが、民主化から25年を経て、当時の若者が年を重ねるごとに、新たな音楽の需要が出てきたのでしょうか。それはそれで楽しいことだと思います。

 なお、最後に少し余談。作詞者のソソルバラム氏は政府から「国家勲功俳優」の称号を得た名優ですが、(最近は知りませんが)実はコメディアンとしても活躍されています。

 

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 昔モンゴルにいたときに観たコメディの舞台のポスター。真ん中でチンギス・ハーンの格好をしているのが氏です。モンゴルでチンギス・ハーン役と言えば彼だ、という話は耳にすることがあるのですが、お笑いでも同様なようです。

 ちなみに内容は、両脇に見えるナポレオンとヒトラーチンギス・ハーンとともに現代モンゴルに蘇って騒動を巻き起こすというもの。ソソルバラム氏は途中ナポレオンの娘役で女装すらして登場します。時に社会風刺を交えたドタバタものは外国人の私にも分かりやすく、それはもう笑わせてもらったのを思い出します。

 というのはさておき、ただもとの話に戻って残念なのは、ネットでいろいろ調べても、八代亜紀さんとともに文化大使に就任された方の情報が手に入らないんですよね。私の調べ方にも問題はあるんでしょうが、どうしたものかと。