列車の出発時間まで間があるので、夕張駅近くのセイコーマートでドリンクを調達。店を出て見ると、JR夕張駅は巨大なリゾートホテルの脇、ほとんど見過ごしてしまいそうな小ささです。この街にとっての鉄道も、このぐらいの存在なのでしょうか。
ズームをかけて見ると、表に出ているのは併設のカフェで、駅という標示すらありません。ホームと線路はこの奥にあるのですが、まったく見てとることができません。鉄道が廃止になっても何も変わらないよ、とでも言いそうな感じすら受けます。
駅舎に入りましたが、平日のためか窓口は閉鎖中。シャッターの下りた横に、かつて夕張を走った列車の写真が飾られてはいますが、廃線まで最後の夏休みというのに、商売っ気がないものです。
ホームへの通路の屋根には、小さな小さな黄色いハンカチがいくつも掲げられています。「幸せの黄色いハンカチ」、私も再放送で辛うじて見たことがあります。
夕張駅の駅舎は線路の終端の先にあり、車止めの横の通路を通ってホームに行きます。かつては夕張駅がもっと先、市内の中心部まで延びていたのですが、のちに現在地に移転、単線にホームが一本だけという、採炭業の栄華のかけらもない簡素な駅になっています。
通路の途中に、北海道おなじみの標示板が取り付けられています。JR各社とも、駅名票は新しいものになっているはずなのですが、サッポロビールの広告のついたこの金属板だけは変わりません。
ホームに列車が入線してきました。そのまま折り返す列車には、道内外から別れを惜しむ人々が乗り込んでいます。
駅の柵の向こう、屋台村の壁に架かった看板。列車を降りた乗客を出迎えてきた看板も、お役御免の日が少しずつ近づいています。
ホームから、すっかり早くなった夕暮れ時の日差しを受ける駅舎を振り返ります。こちら向きには全く窓がなく、一面が壁。駅舎の裏手に回ってきたかのようです。
夕張駅の駅名標。逆光になるのは避けたかったのですが、次の列車にどうしても乗る必要があるので、諦めるしかありません。
単行のワンマンカーの座席はすでに埋まっています。ただ夕張発のきっぷはそもそも売っておらず、記念グッズもどこにあるものか。休みの日は話が別かも知れませんが(そうであってほしいのですが)、ここまで来た人は、駅で何も買わずに引き返すよりなさそうです。
ホームの壁にある時刻表には、一日5本だけの列車が掲載されるのみです。もっとも、これが1本だけというところもあるわけですが。
その横には、夕張線の最終日を控え、松本零士の手によるポスターが飾られています。
思えば、銀河鉄道999の時代は、国鉄無煙化の最終段階。日本全国の炭鉱を、自らも石炭で走るSLは、既に命運尽きた存在でした。生き残りを懸けていた石炭産業も、1981年に起きた北炭夕張新炭鉱ガス突出事故によって、あまりにも凄惨な形で最後の希望を絶たれてしまいました。その後の夕張市の挑戦と挫折は、今さら述べるまでもないでしょう。
そしてその果てに、夕張から鉄道が完全に姿を消そうとしています。
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