トンボ公園を離れて高知市に戻るのですが、ここで最終の予定が控えています。トップ画像に見える旧中村市(四万十市)の国道439号線終点から、旧東津野村(津野町)までの酷道ヨサクの未踏区間走破です。
「国道439号線って?」「酷道って言い方の方が酷くね?」って方、まずは過去のエントリをお読みください。
ねっ、酷いでしょ?
そんなヨサクの中でも、かつての中村市(現四万十市)と大正町(現四万十町)の間に控える杓子峠は、観光協会が「改良から残されている『聖域』」と言ってしまうぐらいの難所です。
■四万十町観光協会(2012)「峠物語MAP」『四万十町観光ブログ』
上記のエントリは6年近く前のものですが、基本的な条件はまーったく変わってない模様。戦慄を覚えつつ、かといって未踏で残すのも格好が悪い。この機会に思いきってアタックしてみる次第です。
終点から中村の市街地を北西に進むのは、国道441号線との共有区間。中村駅から宿毛線の高架をくぐってほどなく、国道439号線は左に折れます。この辺、確かに国道にしては細いのですが、とてもヨサクの雰囲気はありません。
市役所の手前で右に曲がり、さらに中心街を北上していきます。この奥には四万十川支流の後川があり、川を渡る手前で国道441号線と分かれると、しばらくは快適な片側1車線の広い道が続きます。蕨岡、大用、住次郎と順調に集落近くを走り抜けていきますが、時折現れる大型車通行注意、通行規制区間の標識が、この先に待ち構える難関を不気味に予言しています。
そして遂に現れた車線減少の道路標示。いよいよヨサクが牙を剥きはじめました。
はい来ましたー!!
離合不可能な狭隘道路、路肩にはガードレールなど当然ありません。といっても、ヨサク的にはまだ序の口。ここから道幅はさらに細く、路肩はさらに切り立っていきます。
さらに進むと、分かれ道になっています。どう見ても公的機関のものとは思えない、いや思いたくない案内標識は、直進する本線と左斜めへの枝線に分かれていますが、今目の前にあるのは、正面と右斜めへの分岐。少し迷ってから、右側に進むことにしました。見るからに道が細いので、たぶんこっちが国道だろうという判断です。
ええ、自分でもおかしくなってるのは分かってます。
そして案の定、道はさらに細くなり、曲がりくねり、森は一層深くなり、足元を誤ると崖を真っ逆さまです。ところどころ「落石注意」の看板がありますが、落ちてくる石よりも、辛うじて岩と呼ばずに済むレベルの石が路上に転がってたりするので怖いです。そんな中を、怪しい車体感覚と道端の反射鏡を頼りに進んでいきます。
ついに杓子の標識が現れました。向こうに分かれ道が現れましたが、どこに行くのか、そもそもどこかに行けるのかは分かりません。
この後、さらなる悪路が待ち構えているところを撮ろうとしたのですが、
カメラが拒絶反応を起こしました。
とはいえ、今更引き返せません。気持ちの問題ではありません。物理的にUターンができる場所が見当たりません。ここまで来たら峠を越えるしか選択肢はないのです。
手に汗を握ることすらハンドル操作を誤りそうで怖ろしい状況下、ひたすら右に左に曲がりくねり続けります。精神的にも追い詰められるギリギリのところ、ついに、ついに、杓子峠が現れました。
四万十町の案内標識。杓子峠にやっと来たのです。達成感と言うより安堵感が全身に伝わります。
振り返れば四万十市。私がこれまで見た中でも屈指の説得力の無い「市」の標示です。
ここから後は下るだけ。相変わらずの道路ですが、チェックポイントの大正まであと5キロ、希望が湧いてきます。うねうねと峠を下ること10分程だったでしょうか、ようやく人里に戻り、道幅も再び片側1車線となりました。峠を越えたというより、帰還したという気分です。
そして久々に四万十川を渡り、国道381号線との交点に到着しました。ここからヨサクは左に折れて重複区間に入るのですが、ここで休憩しておかないと危ないったらない。右側すぐそばの道の駅に入ります。
来し方を振り返る。あの杓子峠は遠く過ぎ去り、目の前にあるのは嘘のように整備された道路です。
道の駅四万十大正。県内でも最も古い道の駅の1つです。
道の駅は情報館と、食堂・売店を兼ねた2つの建物に大別されます。決して大きくはありませんが、杓子峠のふもとという絶妙な場所にあり、ヨサク修行者が態勢を整える上で、いったんは立ち寄っておきたい場所です。
傍らにあった顔出しパネル。栗とシイタケというキャラクターと言い、色と言い、渋くて渋くてたまりません。
情報館内にはどういうわけか、絵を描いた石が多く集まっています。近くが河原なので、石には事欠きません。
中村で見た大河から、中流域の流れに変わった四万十川。このあと少しだけ併走しますが、すぐに分かれて、ヨサクは東北方向へと進んでいきます。
あ、そうそう、この間対向車と結構すれ違いました。
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