ちょうどお昼どきに、訪問先の遊牧民世帯に到着したわれわれ。ここでお昼ご飯とのことですが、何が出るかは聞いていません。はたして初めての人にはどういう感想が浮かぶか、期待と不安を胸にお邪魔します。
入ってみると、ちょうどホーショールができたてでした。ひょっと、先程電話連絡した辺りで揚げ始めたのかも知れません。ほかには右側にウルム(乳脂の膜が重なったもの)、中央のガラス製の食器にはアーロール(発酵後の乳を乾燥、凝固させたもの)が入っています。ただし、遊牧世帯で一般的に出会うアーロールは長い棒状のもので、とにかく酸味がきつく口が乾き、何より固いのですが(その分長期保存がかなり効く)、こちらはホルホイ・アーロール、一口でバリボリ食べられるサイズで砂糖も入っている加工版です。ただ、家でアーロールを食べるのにわざわざ加工する遊牧民がどれだけいるかは分かりませんし、観光客が来るのを前提に作っていたか仕入れたかどちらかでしょう。
それにしても、ウランバートル近郊とは言え、モンゴル高原の観光客向けサービスも発達したものです。
鍋には馬乳酒が入っています。こちらは発酵が少なからず進み過ぎてもおらず、マイルド。消化酵素の問題がなければ、お椀に一杯丸呑みできるレベルです。
ホーショールと乳製品で満腹になったところで、外に出てみます。南側を見ると、手前には低木地帯、その先には小さな砂丘も見えています。ひとくちに「草原」と言いますが(私も言ってますが)、その自然は単調とは程遠い、実に多様なものなのです。
隣のゲルとの間で馬が草を食んでいます。そろそろ搾乳の時間なので、母馬にはいったん戻ってきてもらわないといけません。するとガイドさんがやおら馬に乗り、群れのところまで行って馬を追い立てはじめました。流石はモンゴル人、乗馬姿も颯爽としたものなんですが、考えてみれば自分の馬ではないはずです。もともとこの家の人たちと知り合いか何かなのでしょうか。
近くの川の中で涼んでいた馬も含め、ゲルの近くに徐々に戻ってきました。仔馬のご飯の時間でもあり、搾乳の時間でもあります。まず仔馬が母親の乳を吸うと、その後人間が取って代わって乳搾りを始めます。
分かりやすい馬の母子。搾乳が終わり、しばし並んで散歩に出ています。
一方で、自分の子どものところに行くわけでもなく、母馬どうし(それ以外も混ざっているかも知れませんが)で寄り合いを始める馬も多数います。
顔を寄せ合う馬たち。特に理由は分かりません。ただ最近思うのは、動物は動物でもふもふが結構好きなんじゃないかと。意味もなく、場合によっては異種どうしが寄り添っている画像もまま見かけますし。
まぁでも、こうしてお互いにすり寄っている分には良いんですが、中には他の馬をいいように使うのもいて、
あご乗せ。
首が疲れたのか凝ってるのか、他の馬の背中で休めてます。顔も脱力気味。
ただ、乗せられている方の馬は特に文句を言うでもなくじーっとしていて、ずっとこの体勢のまま。どういうわけか、じわじわくるのでした。
ちなみに、ゲルの中や搾乳中の様子も写真には撮らせてもらったのですが、いわゆる「観光用」とは言い難い感じがして、普通に生活しているところを勝手にアップするのは気が引けるので、われわれ用の昼食を除き、こちらでは扱いません。判断が難しいのですが、いわゆる「観光牧場」のノリというよりは、ガイドさんの知り合いの遊牧民が、日本からの観光客にも対応している、という印象を受けたもので。
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