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「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

2017年モンゴル初秋探訪記(3)国際シンポジウム1日目

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 一夜明けて、いよいよ国際シンポジウムの初日です。研究発表があるのですが、今回はまるで準備ができていません。とは言えここはモンゴル、何とかなるという意味不明な楽観を持って臨むことにします。

 

 

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 ホテルの朝食。ウランバートルでトマトの輪切りと特大ソーセージは外さないのが私の中の決め事です。パンも各種あったのですが、食パンを選んでいろいろ乗せて食べられるようにしました。

 合わせてもらったのがチャツァルガナのジュース、英語のシーバックソーン、中国語の沙棘(サジー)と言えば分かる方もおられることでしょう。モンゴルではジュースの他にワインも作られていて、最近はモンゴルに来るたびに買って帰るようにしています。

 

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 さて、腹ごしらえも済んだところで、参加者がロビーに集合。ここからは用意されたバスで会場に向かいます。もっとも、会場は大通りを渡って3ブロックまっすぐ進むだけ、歩いて数分なのですが、せっかくの交通手段を無下に断るのも野暮な気がするので、乗せていただくことにします。車内は色鮮やかなカーテンや内装が施され、いかにもアジアの都市間バスと言いたくなるようなものです。

 

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 さて、今回の会場となるモンゴル国立大学に着きました。

 モンゴル国立大学は1942年に設立されたモンゴル最古の大学で、現在もモンゴルの高等教育を代表する存在です。校舎はウランバートルの中心部に複数建てられており、キャンパスと呼べるような区切られた敷地があるわけではありません。これは第1校舎に置かれていた模型ですが、白い「建物」はアパートや商業施設。つまり、普通の街並みの中に後者が混ざって建てられているのです。

 

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 こちらは第4校舎。かつては経済校(経済学部と大学院経済研究科を足したようなもの)が入っていて、私も数え切れないほど通ったところですが、最近学内組織の大改編が行われたそうで、その後どうなったかは分かりません。

 

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 今回の会場となる第1校舎の円型講堂です。ここでの研究発表は3年ぶり2回目になります。

 

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 モンゴル初の大学の大講堂だけあって、造りには気合が入っています。天井は高く、壁には硯学たちのレリーフが飾られています。写真にすると分かりにくくなってしまいましたが、左からアリストテレスアルキメデス、レオナルド・ダ=ヴィンチ、コペルニクス

 

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 ブルーノ、ガリレオ・ガリレイニュートン、ミハイル・V・ロモノソフ、ダーウィン、ちなみにロモノソフは日本ではあまり知られていないと思いますが(私もモンゴルに来るまで知りませんでした)、18世紀ロシアの科学者・詩人だそうです。

 

(参考) Mikhailo Vasilevich Lomonosov

 

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 さらにダーウィンに続いて、メンデレーエフ、パヴロフ(あの「パブロフの犬」のパヴロフです)、アインシュタインの肖像が掲げられています。

 

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 天井の上には電飾のシャンデリア。照明としての役割はもうないような気もしますが、今も特別感を演出しています。こういうモンゴル随一の大学の大講堂なだけに、前回発表を行ったときは、ついに自分もこういうところで話せるようになったのかと、妙な達成感と感慨を感じずにはいられませんでした。

 

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 さて、いよいよ会議が始まります。会議は2日間開催されて、当日に貰ったプログラムによれば私の発表は明日になるそうなので、この日は気楽に他の発表を聞かせていただくことにします。この日は現代の日本・南北*1モンゴル関係の歴史的回顧や証言、北東アジア情勢との関連といった研究が目立ちました。

 

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 お昼ご飯にはお弁当が出ました。ちゃんと温めてあるのがポイントです。

 

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 中はこんな感じで、モンゴルっぽいものはないのですが、いかにも弁当ではあります。

 

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 初日の会議は盛り上がったうちに終わり、レセプションの時間になりました。会議の中身を大幅にすっ飛ばしていますが、研究発表では現在進行中の研究を扱っていると思しきものが多いので(私のものもそうですが)、私が勝手に内容を明かしてしまうのもどうかと思うのです。研究成果は発表者が各自の権利と責任において公表、公刊していくはずですので、この点ご理解ください。

 という固い話はこのぐらいで、ここからはモンゴルのビールやアルヒ(ウォッカ)を交え、研究者どうしの交流が始まります。こういう場で売り込みをかけておくと、後で研究プロジェクトや研究発表の機会等のお誘いがあったりするので、レセプションは積極的に顔を出すに限ります。

 日本の学会の懇親会も本来こういう機能を果たす場所なのですが、どうしても会費が高くなると院生や若手研究者にとっての敷居も高くなり、かといって安くすれば貧相な場になってしまうという悩ましい問題もあり、難しいところです。ただ、国際会議のレセプション費用は会議自体の会費に含まれていることが結構あるので、研究者のネットワークやコネクションを作りたい人は、海外渡航助成金を活用して、国外でどんどん研究発表を行うことをお勧めします。

 

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 世界に出れば、院生や若手でもこういう料理や美味しいお酒にありつけたりするのです。ぜひ積極的に機会をつかむようにしてください。

 

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 レセプションでは伝統芸能の披露もあります。こちらは馬頭琴とオルティン・ドー(日本の長唄のようなもの)です。

 

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 続いて披露されたのは伝統舞踊のようです。伝統芸能は専門外なのでよく分からないのですが、ともあれとても躍動的な踊りです。

 

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 踊りもそうですが、終わった後に息のあがる素振りもないのにも感心したりします、という月並な感想。

 

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 宴会に歌はつきもの。会によっては自分が歌ったり踊ったりする側にも回ることになるのですが、今回はそういうことはなく、無事お開きとなりました。終了後に宿で明日の準備をと思ったのですが、部屋に戻るとどっと疲れが出てそのまま寝落ち。翌日は非常に寒い準備状況で発表を迎えることになりました。大丈夫なんでしょうか。

 

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【次回のエントリ】

 

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*1:今のモンゴル国にほぼ相当する地域が「北」、いわゆる内モンゴルが「南」となります。現代の日本・モンゴル関係を考える上で、「南」と日本との関係を無視することはできません。