大海原に朝日が昇ります。雲に覆われてダルマ朝日こそ拝めませんでしたが、室戸岬が壮大な朝を迎えました。
昇る太陽が遮るもののない大地と海を照らします。地球が朝日に照らされる、ぐらいの形容をしても大げさとは思えないような光景に、何か強烈なパワーを浴びせられる感じすら湧いてきます。その勢いで朝ごはんをしこたま食べて(笑)宿を出立しました。
室戸岬までの遊歩道は、しばらく木々の生い茂る中をくぐっていきます。
足元に案内図が描かれています。見えにくいですが、室戸岬付近は東から大地の誕生ゾーン(黄色)、亜熱帯植物ゾーン(緑)、深海ゾーン(赤)と区分されていて、今いるのが亜熱帯植物ゾーンです。
アコウの木。根を岩に張り巡らせて成長する亜熱帯植物です。こうして岩ががんじがらめにされているのを見ると、何かグロテスクや恐怖を感じてしまいます。
(参考) アコウ | 室戸ユネスコ世界ジオパーク
この辺りには植物が生えているだけではありません。恰幅の良い猫が2匹、日なたで和んでいます。
人間が来ても恐れる様子はありません。あくまでマイペースで、冬の日差しを浴びています。
猫たちと別れて歩くと、植生は少なくなり、岩場へと進んでいきます。こちらは龍宮巌と立札にありますが、龍宮岩とも言うようで、奥に分け入ると神社があるそうです。
さらに歩いた先にあるのが目洗池。海の間際に真水の池があり、弘法大師が目を洗ったという言い伝えがあるとのことです。
もっとも、とても目を洗えるような池には思えません。水質もそうですし、目を洗おうとしてそのまま落ちてしまうとかありそうです。
そしてついに岬まで来たようです。ここは月の名所、そのまま月見ヶ浜と呼ばれる辺りです。
高知県で月の名所というと、どうしても桂浜が真っ先に挙がりますが、この浜も海から月が昇るとなれば、さぞ美しいことでしょう。
そう言えば、室戸の海から昇る月は、「土佐日記」にも出てきたような。
この一帯まで来ると岩も多いのですが、だいぶ視界が開けてきます。植物や岩に遮られてきた風景から、ようやく一面の海が見渡せます。
粗削りに作られた風景。ただ、不思議と荒涼さは感じません。同じ時期の日本海と比べれば、気候も温暖なら波も穏やかで、生存を試される感じがないからかも知れません。
室戸岬の突端、灌頂ヶ浜まで来ました。ついに地の果ての果てまで来たか、という感慨が高まります。
■ 灌頂ヶ浜(かんじょうがはま) | 室戸ユネスコ世界ジオパーク
波打ち際近くの岩場を越えれば、その先は太平洋。おそらく赤道直下辺りまで、島影を見ることはないでしょう。
振り返ると、すぐ近くまで迫る山の上に、岬の灯台が建っています。気にはなりますが、車でも無ければそこまで上がるのは、いくらなんでも今は無理です。
それにしても、山が急に落ち込んで、わずかな浜辺の先に大洋が広がるというこの風景。ただただ圧倒されるばかりです。
そして、岬の灯台から灌頂ヶ浜のちょうど間に立っているのが、中岡慎太郎像。
桂浜の坂本龍馬像と並ぶ、高知を代表する像が、灌頂ヶ浜からその先の世界を真っすぐ見通しています。