夏の晴れた日の真昼、突き刺すような高知の日差しの中、春野陸上競技場で行われるのが、サッカー高知県選手権大会決勝。この試合はサッカー天皇杯高知県代表を決める戦いでもあります。長崎での本戦1回戦への権利を手にするのは、絶対王者高知大学か、Jを目指す新星高知ユナイテッドSCか!?
太陽を遮るものの何もないバックスタンドに集まった両チームの関係者やサポーター。左手の高知大学の方が人数も多い一方、ユナイテッドは横断幕や旗の多さが目につきます。
そして、ユナイテッド側の応援席にはやいろちゃんの姿も。
いよいよ試合開始。決勝だけあって入場も本格的です。
フェアプレーを訴える旗も、子どもたちを連れた両チームの選手も、入場曲 "FIFA Anthem"の高知大応援スタンドからの口ラッパの中で入場します。
先日の四国サッカーリーグでは消灯状態だった電光掲示板も使われています。こういっては失礼ですが、意外にきれいに表示されています。
試合前の挨拶。高知の名を背負う者同士、好試合を期待したいところです。
試合前の円陣。トラックには珍しく、というか高知に来て初めて見るのですが、ボールパーソンが控えています。そして円陣が解かれ、ユナイテッドのキックオフで試合が始まりました。
序盤は高知大学ペース。再三ゴール前に迫り、ユナイテッドは防戦を強いられます。
その流れの中で、9分に高知大学の山崎が左から決めて先制!大会14連覇に向けてまずは前進します。なおも勢いに乗る高知大学は相手のクリアミスに付け込み、キーパーと1対1の場面を作りますが、ここでシュートが左に外れてしまいます。
絶対的な得点シーンを逃してしまった高知大学、ここで主導権を手放してしまいました。逆にユナイテッドは体勢を立て直し、一気に攻め立てます。
そして前半18分、右からのコーナーキックを小林が受けてゴールに押し込みます!高知ユナイテッドSC、早い段階で同点に追いつきました。
この後ユナイテッドも1対1の場面を逃してしまうと、試合は一進一退。ボールを奪ってはシュートやコーナーキックに持ち込み、奪われてはゴールエリア付近でしのぐを繰り返し、流れはどちらに傾くか分かりません。
しかし前半33分、膠着状態が破られます。ユナイテッドが左からのコーナーキックのチャンスを得ると、今度は主将横竹が逆サイドから決め、ついに勝ち越しに成功します!
この後も攻め合いが続き、アディッショナルタイムは5分もありましたが、スコアは変わらず前半が終了しました。
ユナイテッドが1点リードはしているものの、私の見立てではこれでやっと五分五分の展開でした。なにせ高知大学は13連覇中、一方のユナイテッドはチーム再編の成果らしい成果がまだ出ていません。しかもこの日は風が結構あり、後半でサイドチェンジするとユナイテッドが風下に立つことになります。1点リードはあってないようなものかも知れないと思われたのです。
そんな状況の中で後半が始まると、キックオフから高知大学がユナイテッドのゴールを再三脅かします。8分にはまたも1対1の場面でシュートが決まった!……かと思いきや、ボールは左のバーを叩き、はねかえった先がキーパーの真正面。これをキーパーが押さえ、絶好のチャンスがふいになってしまいました。
試合が進むにつれ、真夏のグラウンドで走り続けた選手を疲労が襲います。
足がつる選手も出る中、それでも高知大学は攻め続けます。
再三のシュートにセットプレーも続き、中にはゴール前であわやユナイテッドのオウンゴールという場面も作りますが、これは左に流れてしまい、ゴールネットを揺らすことができません。
そんな中で試合終了時間が迫り、突入したアディッショナルタイムはなんと7分。ここでユナイテッドが選んだのは、時間稼ぎではなく反撃でした。あくまでボールを支配し、相手に攻めさせようとしません。それでも何とかボールを奪い返した高知大学が最後の攻撃を試みますが、ユナイテッドの守備にかわされると、逆に自陣に攻め込まれてしまいます。
そして後半52分、ユナイテッド最後のシュートがキーパーの正面をついたところで試合終了!高知ユナイテッドSCが新チーム初年度での天皇杯本戦出場権を獲得しました。
最終スコア。率直なところ後半はお互い疲れた中での打ち合いになるかと思っていたのですが、ユナイテッドの守備が光る内容となりました。
試合が終わるとすぐさま閉会式。まずは優勝したユナイテッドの表彰です。
賞状、優勝旗、トロフィーと記念の盾。県サッカーの新たな歴史が刻まれました。
あと一歩のところで準優勝となった高知大学。ライバルらしいライバルの誕生を受け、また新たな挑戦が始まります。
閉会式が終わり、記念撮影に臨むユナイテッドのメンバー。
先週行われた社会人選手権四国予選に続き、全国への扉をこじ開けた選手たちが、喜びを爆発させます。
最後は記念の水かけ。ついに新チーム誕生の成果が1つ手に入りました。
さて、天皇杯本戦1回戦はJ2のV・ファーレン長崎が相手。2部リーグ中位につけているチームは、地方リーグのチームにとっては強敵以外の何者でもありません。
ただ、ジャイアントキリングこそが天皇杯の醍醐味。ぜひともサッカーファンを戸惑わせ、賑わせる試合を期待せずにはいられません。