モンゴルの国土面積は156万4100平方キロ。ここに2014年末現在で300万人弱の人々が暮らしています。日本の約4倍の国土に茨城県ぐらいの人口がいる、と考えるとイメージしやすいでしょうか(以下、日本の人口統計は総務省資料、モンゴルの統計はモンゴル政府統計局の資料による)。
ただし、当然ながらこの人口が国土に均等に散らばっているわけではありません。特にモンゴルでは過去20年余りの間に首都ウランバートルへの人口集中が進み、2013年末時点で人口は137万人に達しています。
そのウランバートルの面積は4700平方キロ、だいたい和歌山県と同じぐらいです(国土地理院資料)。ここに長崎県程度の人口が集まっているわけですが、こう書くと「集まっている」というイメージが湧きにくいかも知れませんね。しかも和歌山県は長崎県よりも若干広いです。
では、「ウランバートルへの人口集中」というのをもう少しイメージしやすくする方法はないか?
というわけで、今回は"MAPfrappe"というサービスを使って、日本の大都市圏と首都ウランバートルの中心部との規模を比較してみました。首都ウランバートルのうち、飛び地となっているバガハンガイ地区とバガノール地区を除く7地区の領域を、日本の大都市圏に重ねてみるのです。
ちなみに、ウランバートルは行政区分上「首都」となっており(東京都の「都」みたいなものです)、これが9つの地区(これも日本でいう「区」です)に分かれています。
このうちウランバートルの中心部をカバーしているのは6つの地区なのですが、今回使った地図では隣接するナライフ(ナライハ)地区も合わせてひとまとまりになっていて、区別がつかないので、これら7地区を対象にすることにしました。
まずは、都庁を中心に、首都圏に合わせてみました。
東南は千葉県の東京湾岸、西北は秩父山地手前、意外と広い印象です。一方で南北方向が意外と狭く、川崎は入るけれども横浜は入らない結果になりました。
こちらも東西に長く南北が狭い分、奈良や兵庫の田園部がかなり入ってます。一方で、大阪府内の南端はおろか、関空がぎりぎりで入らないのは意外でした。京阪神の都市圏の広がり方とウランバートルの領域はあまり重ならない感じです。
今度は、名古屋中心に中京圏で。南が狭いのを除けば、意外と名古屋近郊のイメージに合う気がしました。名古屋近郊、あまり詳しくないのですが。
次は福岡中心。ですが、かなり海になってしまいました。地形的にはウランバートル圏から最もほど遠いかも知れません。あと関係ないですが、壱岐って意外と九州本島に近いんですね。
最後は札幌。こちらもちょっと海、結構山ですね。そのうえ岩見沢も入りませんが、小樽と千歳がカバーできている辺りに関しては、札幌圏のイメージに近い観もあります。
というので、いろいろ見てきたわけですが……ウランバートル、やっぱり広いですね。しかも人口が人口なだけに、人口集中のイメージはかえって薄まったかも知れませんorz
ただ、今までの地図をよーく見てほしいんですね。
そうすると、1つの特徴に気づかされます。日本の大都市圏に当たり前にあるものが、ウランバートルにはほとんどないのです。お分かりでしょうか?
答えは、鉄道路線です。
ウランバートル市内には鉄道がないわけではないのですが、地図上ではかなり拡大しないと見えてきません。
しかも、実際に存在する路線はというと、東西に貫く幹線がありますが、これは長距離輸送と貨物が中心。市内の路線も貨物線で、いわゆる「通勤電車」がないんですね。っていうか、全線非電化なんで、電車自体ありませんし(日本であれば「鉄道」扱いとなるトロリーバスはあるんですが、走るのはあくまで公道上)。
なので、通勤・通学等はバスや自家用車に頼らざるを得ず、これで毎日幹線道路は大渋滞。これに対して地下鉄建設という計画が最近浮上していますが、これから路線計画をまとめて建設して、開通するには年数がかかります。
さらに、地図に現れない要素を加えることになりますが、上下水道の未整備、冬場の暖房等による大気汚染(モンゴルの都市部では暖房に石炭ストーブを用いる家が多い)と、都市問題はウランバートルの方が日本よりかえって深刻かも知れません。
広大な国土、少ない人口。これだけ取り上げると、モンゴルにもウランバートルにも、いかにも長閑な印象を持たれる方もいらっしゃることでしょう。ただ、都市化に対する備えが不十分な中で、ウランバートルの人口はどんどん増えていく。
現状を放置すれば、問題はより深刻になります。他の途上国のように、巨大なスラムがモンゴルでも出現するかも知れません(「スラム」の定義次第では、すでに出現しているという見方もあるかも知れませんが……)。かといって、都市インフラの整備が進んだとしたら、ウランバートルはますます魅力的になり、人口集中が加速する恐れもあります。そうなればやぶへびです。
はたして、モンゴルの人々はどのように対処していくのでしょうか。