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「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

10月のウランバートル(1)初雪狂騒曲

 

 国際会議へのお誘いを頂いたので、先月(2024年10月)もウランバートルに行ってきました。本当に久々に訪れた10月のウランバートルの様子をシリーズでお伝えします。

 

 

 日本とモンゴルの文化交流協定締結50周年を記念した国際会議へのお誘いを頂き、今年(2024年)再びウランバートルに行くことになりました。

 近年モンゴルに行くのは8月か9月がほとんどで、春に訪れたのも10年前。10月に至っては留学していた時以来です。

 

 

 今回も例によって、高知→羽田→成田まで地上移動でウランバートルへ。高知初の飛行機が大きく遅れ、久々にひやひやしましたが、成田発にはどうにか間に合い、チンギス・ハーン国際空港にやって来ました。

 到着ロビーのボード。国内外の行先に交じって、イルクーツク発着便の案内も出ています。日本との直行便もなければ中ソ対立で中国経由も非現実的だった時代、モンゴルに行くとなればイルクーツクまで行って、さらに時代によってはナホトカまで船で渡って、そこからハバロフスクまでシベリア鉄道に乗ってそこから飛行機を使うか、あるいはイルクーツクまで全線鉄道移動だったのですが、今やウランバートルイルクーツク便は「乗ろうにも乗れない」路線になってしまいました。

 空港からはスイスイ走れる高速道路と大渋滞の一般道を経て市内へ、というお決まりのパターンでしたが、今回は渋滞が何時にも増して酷かった。本格的な冬が始まる前の駆け込み道路工事で(厳寒のモンゴルでは冬に工事のやりようがないんですね)あちこちに車線規制が敷かれ、中心街に入る手前で数キロ渋滞。「飛ぶ」手前で動けません。ただ、そこは運転手さんが機転を利かせ、迂回路を探しに探しまくったおかげで、何とかホテルに着くことができました。

 

 

 今回は中心街東部の丘の上にある「フラワーホテル」に泊まってみました。実はここに泊まるのは初めてです、というと、ウランバートルに詳しい方なら驚かれるかも知れません。

 フラワーホテルは1990年代からある老舗のホテルで、大浴場があるなど日本人を明らかに意識した作りになっています。なので日本人の「リピーター」なら、一度は泊ったことがありそうなものです。ありそうではないかも知れませんが。

 ただ、私に関してはどういうわけか縁がないまま来てしまいました。特に若い頃はこのクラスのホテルで長期滞在できるような余裕などなく、知人のお宅を借りたり安宿に泊まりながら、フラワーホテルに滞在するビジネスパーソンや大御所の大学教員を見ては凄いなぁと彼我の差を感じていたわけですが、その自分が今回投宿することになりました。といっても別に偉くなったわけでもなければ金持ちになったわけでもなく、たまたま値段が意外と安かったので選んだだけなのですが、留学以来24年ぶりの10月のウランバートルということもあり、名状し難い感慨も湧いてくるのでした。

 

 

 部屋にあったテレビのチャンネル案内。前にも書いたような気がするのですが、モンゴルは民主化してほどなくケーブルテレビが発達しています。日本と違うのは外国放送の多さで、私も留学生時代に毎日洋楽チャンネルを見たものです。

 このリストで言うと、左側の緑色がモンゴルのテレビ放送となっていて、あとはあらかた外国放送。そして左側の青色のチャンネルはロシアのテレビです。中にはロシア国内向けのものもあります。

 会社によって多少の差はあるでしょうが、ケーブルテレビと契約していれば、それだけロシア発の情報に接する機会が多くなる、ということです。そしてモンゴルでは社会主義時代に教育を受けた世代なら必ずロシア語を学んでいますし、今でもロシア語は英語と並んで義務教育で教えられています。つまり、ロシア発の情報を十分理解できる、事によっては日常的に接している層がモンゴルには存在しているわけです。これあくまで一例ですが、モンゴルの対ロシア関係、対ロシア世論を考える上では、ロシアが発する情報へのアクセスの容易さを見落とすわけにはいきません。

 

 

 話は変わって、10月になったので、モンゴルの集合住宅ではセントラルヒーティングの暖房が既に入っています。これが「パール」と呼ばれるその暖房で、モンゴルの集合住宅では必須です。この効きが良いか悪いか良過ぎるかで、冬を安全快適に越せるかどうかが変わってきます。

 暖房が入るぐらいですから、この時期からウランバートルは冷え込むのですが、今回は想像以上でした。

 

 

 翌朝になって外を見ると、雪が舞っています。っていうか、積もっています。

 部屋の外は坂道になっているのですが、既に路面は凍結しているようです。流石のウランバートル市民もここまでの天気は予想していなかったのか、夏用タイヤからの切り換えが間に合っていない車がそこかしこに見られます。何とか動かそうとエンジンを思い切り吹かす音が聞こえるかと思えば、坂道を滑る車も相次いでいます。衝突する音が聞こえないのがまだ幸いですが、大丈夫でしょうか。

 

 

 と、人の心配をしている場合ではありません。この日は研究の打ち合わせがあるので私も出かけないといけないのです。ホテルを出てみると、相変わらずの雪空です。

 

 

 出てすぐのところで、ロシア語で「記念公園」と書かれています。ここで大祖国戦争独ソ戦)の記念植樹が行われたそうです。というのがなぜ分かるかというと、下にモンゴル語でそう書いてあるからです。

 掲示自体はそう古いものでもないので、植樹自体も割と最近行われたと思うのですが、いつなのかは記されていません。過去のニュースをひっくり返せば出てくるような気もしますが。

 

 

 坂道は凍っています。車が滑るということは、人間も滑る危険が危ないということです。恐る恐る歩くのですが、どれだけ足元に気をつけていても、どうしようもないことは起きるものです。

 

 靴底がはがれたのです。

 

 急な寒さで接着面が脆くなったのか、そもそも10年選手なのでガタが来る頃なのか、それは分かりませんが、とにかくはがれたものははがれたのです。滑るか滑らないか以前の問題です。

 ですが、靴の修理のできるところがどこか分かりませんし、あったとしても昨夜着いたのが遅いので、モンゴルの通貨トゥグルグの持ち合わせもありません。っていうか休日に両替商が空いているものかも分かりません。ウランバートルでもスマホ決済はできますが(というか日本に負けず劣らず普及していますが)、そもそもアプリを持っていません。

 ではどうするか?答えは簡単、打ち合わせがある以上、打ち合わせ先に行くのです。そして着いたら、相手に事情を素直に話して、どうすればいいか相談するのです。そうすれば、知らない相手でもなければ、いや、時には知らない相手だったとしても、何がしかの提案や手助けは得られるはずです。自分の落ち度でもないなら、気後れしたり恥ずかしがることは何もありません。なんたって、ここはモンゴルなのですから。

 

 

 というわけで、何とか頑張って到着。事情を伝えると、紳士物の靴を貸してもらえることになりました。サイズもほぼ合っていたのが偶然にしては良くできていますが、それも含めてモンゴルです。

 ちなみに打ち合わせは上手くいったと思います。研究頑張ります。

 

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