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「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

高知大学学術研究報告第71巻所収の論文がweb公開されました

 

 『高知大学学術研究報告』第71巻に論文が掲載され、弊学リポジトリから無料公開されました。日本語タイトルが目立ちますが、一応英語論文です。

 

 

 当方が執筆した論文"People's Nationalism in (Post-)Post-Socialist Mongolia -A Discussion from Trend Analyses of the Asian Barometer Survey Data-"が『高知大学学術研究報告』第71巻に論文が掲載されました。そして、このほど弊学リポジトリから無料公開されました。

 本稿は私が継続に行っている、モンゴルの人々が自らの国家に対して有する意識について、国際調査「アジアン・バロメータ」(Asian Barometer Survey)のデータ分析から探索したものです。同様の分析は過去にも行っていますが、新たな調査データが公開されたため、直近の状況をあらためて分析してみました。

 これは現代モンゴルに長く関わっている方なら賛同されると思いますが、モンゴル社会は自国愛がきわめて強固に規範化された社会です。いわゆる「民族」よりも国家に対する愛情が「持って当然」のとなっており、それを疑う余地がない(発想すらない?)社会、と言っても過言ではないでしょう。

 とはいえ、きわめて強固に規範化された自国愛と言っても、程度問題はあり得るわけです。では、その程度を左右する要因とは何なのか?

 また、ナショナリズムやナショナル・アイデンティティに関して蓄積されてきた多くの実証研究が示す通り、「自国愛」と言っても複数の側面が存在します。具体的にどのような側面があるかは意見が分かれますが、単一的なものでないことだけは確かです。

 あるあるな例を出せば、国内の政治や行事での国旗・国歌に違和感を感じる人でも、スポーツの代表戦になれば思いっきり日本を応援する人なんてザラにいますよね(逆もまた真なり、かも知れませんが)。

 ただ、それが良いか悪いかなんてどーでもよくて、国への意識は単一の物差しで測れるものではなく、ゆえに測ろうとしてもいけない、ということです。

 本稿の場合は、利用可能なデータに即して、自国に対する「自身の」自己犠牲(ココ大事。他人がじゃなくて自分が犠牲になれるかってことです)、自国に対する無条件の忠誠心、ナショナル・プライド(国への誇り)、そしてそれらの裏返しとしての外国移住への関心、という項目を、自国愛の側面を測る項目として採用しています。

 そして、それらについてモンゴルと他の東アジア・東南アジア諸国・地域とを比較した上で、どのような要因がそれらを左右するのかを分析、過去の分析結果と比較しています。

 この論文はもともとモンゴルでの国際会議で報告すべく執筆したものです。ただ、発表を申し込んだところ、会議でカバーするトピックではないとあえなく却下。社会学の研究も募集しているって案内に書いてるのに……と思いましたが、こちらでどうするべくもありません。そのせいで、せっかくかいた原稿が宙ぶらりんになってしまいました。

 ちょうどそんな時期に、弊学の研究雑誌『高知大学学術研究報告』(学研報)が論文投稿を募集していました。学研報には以前学部教員で新入生アンケートの報告論文を執筆して掲載されたことがあったのですが*1、今回は私の「もともとの」研究領域についてはじめて投稿、そして無事掲載された次第です。 いわうる「査読なし」論文ではありますが、私が何者なのかということ、また弊学部の教員でも研究はしているのだぞということを弊学の教員・研究者に知っていただく上では、学研報への投稿掲載には意義があったと思っています。

 ただし、研究そのものの価値につきましては、さらに広範な読者の皆様の判断に開かれています。ですので、よろしければ下記リンク先からお読みいただければ幸いです。

 

hdl.handle.net

 

 あ、言い忘れていましたが、一応英語論文です。

 

*1:当時掲載された共著論文については下記エントリをご覧ください。

www.3710920.com