丘を降りて再び中心街へ。お土産を買うために、雲の上のホテル別館、マルシェユスハラに向かいました。
マルシェユスハラも言うまでもなく、隈研吾による木造建築群のひとつ。本館とは違って、町のまん真ん中にあります。
正面の外壁は茅葺になっています。メンテナンスは相当手間暇がかかりそうですが、ユニークでありつつ山里の街に馴染む外観とは間違いなく言えそうです。
中に入ると、1階の売店部分は天井までの吹き抜けになっています。その周囲、2階から上はホテルの客室。開放感と明るさで言えば、一般的なホテルとは比べ物になりません。
こちらは建て替えの話は聞かないので、いずれまた泊まる機会もあることでしょう。
買い物を終えて、町立歴史民俗資料館の前に戻ってきました。昨日のガイドツアーの出発点でしたが、肝心の中の展示はまだ見ていなかったのです。
平安時代から現在に至るまでの歴史物語を展示した館内。ここからは有料ゾーンですが、龍馬パスポートのおかげで無料で入れます。
中は梼原の歴史を描いた映像やドラマに加え、明治以降の民具も数多く残されています。さらには出征した兵士らの携行具も展示されています。
お隣の観光交流施設、まろうど館。ふらりと立ち寄って休憩できるスペースです。2階には町で長年刊行が続いてきた歴史雑誌や文芸誌が読めるようになっていて、その辺の素養のない私でも興味を惹かれました。
お昼は町の名物のひとつであるキジ料理。夕方以降に空くお店が多いので、ランチで食べられるところ探すのに一苦労したのですが、キジ肉のスパゲティというのを見つけることができました。普通の鶏肉よりしまっていて、食べ応えは十分です。
ゆすはら座全景。この後は梼原を出て、県西部を大きく移動します。今回は中心部ばかりだったので、次は時間をとって遠出もしてみたいもの。問題はその時間なのですが……
町を離れる前に、東部にある千枚田に立ち寄ることにしました。司馬遼太郎も称賛したという風景、後輩が見ないわけにはいきません。
脱藩の道の途中に車を停めます。案内板は平成の大合併前の自治体名を残していて、梼原町以外は全て今は消滅済の町村でした。
ようやく春らしい陽光が訪れた土佐の山里。桜はそこまで待ちきれずに、さっさと咲いています。
斜面を下から上まで切り拓いて作られた棚田。枚数は時期によって変わっています。
こちらではありませんが、棚田を耕している方のお話だと、農耕機械を入れようとすると、同じ平面で分かれている田圃をまとめた方が良いとのこと。とはいえ、休耕や耕作放棄で減ったのも否定しがたいところです。
それでも、もう少しすれば多くの棚田に水が張られます。田植えは大型連休かその後ぐらいでしょうか。
耕して、植えて、刈り取って。さまざまな野望や志を抱いて駆け抜けていった人々を見送りながら、毎年毎年、世代や時代を越えて繰り返され、受け継がれてきた営み。
それもまた、この町の現在まで続く、そして願わくばこの後も続いてほしい歴史のあゆみであろう、と思います。