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「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

モンゴル・フブスグル県でM6.5-6.8の地震、建造物に被害

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 モンゴル国北部フブスグル県で2021年1月12日にマグニチュード6.5~6.8の地震が発生、震源地周辺で建造物への亀裂や地割れ等が生じました。また現地報道からは、今後より大規模な地震が発生した際の懸念も露わになっています。

 

 

 モンゴル国(以下「モンゴル」)に地震のイメージがある方はほとんどいないのではないでしょうか。私も留学時代含め、滞在期間中に地震に遭った記憶はありません。

 ただ、地震がない、などということは決してありません。統計が見つからないので感覚的な話になりますが、3-4クラスの地震発生であれば報道を見るのは珍しいとも思いません。

 そして今月12日、北部のフブスグル県ハンフ郡、モンゴル随一の湖であるフブスグル湖内を震源とする地震が発生しました。マグニチュードは報告により差がありますが、6.5から6.8と言われています。

 

www.montsame.mn

www3.nhk.or.jp

reliefweb.int

 

 震源のハンフ郡をはじめ周辺の定住地域では、政府庁舎や学校、生徒・児童寮*1の壁や窓に亀裂が入ったとの報道が出てきています。

 

news.mn

 

 加えて地割れの発生も確認されています。場所によっては建物の地盤にも地割れが起きていて、影響が懸念されます。現在も確認作業中で、さらに被害が明らかになることも予想されます。

 

news.mn

 

 さらに、震源となったモンゴル最大の湖フブスグル湖では、この地震で凍り付いた湖面が各所で裂けています。さまざまなニュースサイトで、現地からの写真が報じられています。

 

ikon.mn

 

news.mn

 

 さて、今回の地震の揺れはフブスグル県内のみならず、周辺各県、さらには600km以上離れた首都ウランバートルでも感知できるものでした。

 

news.mn

 

 一方で、周辺が人口希薄な土地だったこともあり、本エントリ執筆時点で人命に関わる被害は報告されていません。

 とはいうものの、これが集住地域だったらどうなるのか、という疑問は生じます。そして報道を見る限り、正直なところ心許ない部分があります。

 今回の地震を受けて政府及びフブスグル県関係機関が開いた合同記者会見では、全国の建造物のうち耐震証明のないものがウランバートルで8.7%、地方で17.6%、地震のリスクが高く、耐震基準に達していないものがウランバートルで2.1%、地方で16.6%あることが示されました。

 

dnn.mn

 

 しかも、モンゴルの中枢の中枢である政府宮殿も倒壊の恐れありとの判定が下されたとの報道まであります。

 

time.mn

 

 さらに気になったのが、地震に対する警報システムの未整備です。モンゴルでも大規模地震に対する警報システムがあるのですが(もっとも、この地震が起きるまで存在を知らなかかったのですが……)、今回の地震では作動しませんでした。

 これについて、先の記者会見では「正常に動作しており、作動するレベルではなかった」との説明がありました。

 

ikon.mn

 

 ですが、マグニチュード6台後半です。遠い外国で起きた地震でもなし、まして建物に被害が出るレベルです。不審に思っていたら、専門家のインタビューによると、そもそも警報システムがウランバートルにしかなかったということでした。

 しかし、モンゴルでは繰り返しになりますが、ウランバートル以外でも大規模な地震は事実として起きています。フブスグル県ではM6クラスの地震が30年前にも発生しているとは前述の記事の伝えるところですし、1957年にはM8.1の地震も起きています*2。他にも、遡れば発生例は出てきます。

 にもかかわらずこの状況。報道側にも驚きがあったのか、このインタビューを報じる記事の見出しは「モンゴル国地震への備えがない」とストレートに断じています。

 

news.mn

 

 また、ウランバートルでは建造物を建てる際に想定する地震の規模が日本のものよりも小さいとの話もあります。これにより、やや古い研究ですが、耐震性能が日本の約4分の1という比較結果も出されています*3

 そう考えると、ウランバートルでいざ地震が起きたとしたら……そういう懸念は、どうしても頭をよぎります。

 南海トラフ地震が想定される高知県です。他人のことを心配している場合ではないかも知れません。また、ウランバートルマグニチュード7を超えるような地震の発生確率も寡聞にして知りません。杞憂であれば、それに越したことはありません。

 とはいえ、私からすれば他人の話ではありません。かつて暮らした街(もう20年前になるのか!)、私が知り合った、関わった人々が住む街です。そしていつかは必ず、再び訪れる街です。

 起こり得る地震への備えが十分とはとても言い難い。日本からも地震防災に向けた支援は既になされているようです*4。当然実施面で問題はいくらもあるでしょうが、それらの解決を含めて、これからさらにモンゴルにおいて何が行われるべきなのか、そこにどう関わるべきなのか。22回目の1月17日、ふと考えるところです。

 

(参考)過去の1月17日に書いてきたエントリです。ご一読いただければ幸いです。

 

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*1:地方では遊牧民世帯をはじめ学校から遠く離れて生活する子どもたちのために、義務教育から学校に寮が併設されています。

*2:アメリカ地質調査所による報告

*3:菅野正・舘野公一(2007)「日本とモンゴルの耐震既定の比較」日本建築センターウェブサイト。

*4:

www.jica.go.jp