「自分で学んで生きていく」ための2冊目は、人呼んで「バッタ博士」前野ウルド浩太郎氏の痛快研究青春記、『バッタを倒しにアフリカへ』です。このブログでは以前にもご紹介した一冊ですが、あらためて。
さまざまなところで言われているところですが、若手研究者の生きる道は苦難の連続です。私も多分に漏れず任期限付きだったり非常勤だったりの仕事を渡り歩いたり、時には渡り切れなかったりしたわけですが、バッタ研究のために単身西アフリカ・モーリタニアに飛び込み、時には収入ゼロという事態にすら見舞われた本書の著者にはかないません。
本書は、そんな茨や修羅の道を歩みながらも、バッタ研究への志を貫く著者による、死闘とサバイバルの記録です。
……って、どこかで書いた気がしたのですが、それもそのはずです。ってかどこかではありません。以前にこのブログで読後感を書き連ねていたのでした(汗
なので、二度も書くことはないだろうと言われそうですが、それでもあえて再度取り上げるには理由があります。面談で学生に進めた手前もあるのですが、それだけではありません。
大きな理由としては、今回のテーマを考えた時に、本書がまさにふさわしいと考えたからです。先程は苦難について触れたのですが、前野氏は収入ゼロの事態でも諦めず、周囲の理解と支援を得て研究を続けていき、その成果を広く発信することで、自らのキャリアを見出したのです。
絶望したくなるような状況で、それでもすぐにおカネにならない「学ぶ」ことにこだわって生きる道を拓いた著者の記録は、まぎれもなく「自分で学んで生きていく」者のしぶとさと強さを示したものと言えるでしょう。
また、今年に入って同じ本の子ども向け版が刊行されたのも理由のひとつです。規格上、こちらの版の値段は上がるのですが、解説が充実しているだけに、あるいは子どもでなくても面白いと思いますよ。
そして、本書でも描かれたバッタの大量発生が、今まさに多くの国々で脅威となっていることも、決して見逃してはなりません。日本ではCOVID-19パンデミックに押しやられた感がありますが、農業に破滅的な被害をもたらす蝗害は、食糧生産不振という形で、めぐりめぐってわれわれにも影響しかねない問題なのです。
どんな状況でも自分で学び、苦しくとも痛快に生きていく著者の姿は、下手な研究者よりも若い皆さんに、より強い共感を与えるかも知れません。そして、われわれもこれを機に、遠くの国のことでは済まされない問題について、目を向けたいものです。